泳がせ釣りは偶然ではなく必然の釣り -釣果に繋がる大切なポイントとは?-
効率的に魚を得る事を優先に考えるとルアーと餌釣り両方の技術を身に付けるのが一番だ。ただみんなそれぞれのスタイルというものがあって私の場合は餌釣りに傾倒しており、その中でも泳がせ釣りという釣法にこだわりを持つ。
釣りを始めたのが2018年夏で小魚ばかりの日々が続いていたが、2020年2月に糸島(福岡県)に遠征した際、漁港内でアジを泳がせて72cm/3.3kgのヒラメを釣った事で釣りが変わる。それは座布団と言われるサイズのヒラメでベテランの釣り人でもそうそう釣れる大きさではない。
もう十分に遠征釣果には満足していたが翌日も同じ釣り場で同じ様にアジを泳がせてみると今度は88cm/7.0kgのヒラメが釣れてしまった!二日連続で座布団ヒラメが釣れた上に今度は一人の釣り人が一生かかっても釣れないレベルのヒラメだ!堤防が騒然としていた。
友人に泳がせ釣りを教わって最初に釣れたのが72cm/3.3kgのヒラメ、二匹目が88cm/7.0kgのヒラメとなれば泳がせ釣りにはまってしまうのも当然だ。「私は釣りに関して何か持っている!」と思ったし持っているかはさて置きそう勘違いさせるには十分過ぎる釣果だった。
ただその後は苦難の時期が続いた。東京に生活拠点があるので神奈川に釣りに行く事が多いが、どれだけ小魚を泳がせても神奈川の海で釣れるのはアカエイとダイナンウミヘビだけだった。
天秤で沈めボトムで泳がせる仕掛けしか知らなかったし、経験も浅かったので餌(活魚)の生死判断もつかなかった。そうなればアカエイやダイナンウミヘビに食われるのは当然だ。
しかし由比(静岡県)でサバの泳がせで55cmのヒラスズキを釣り上げた経験から餌の魚を元気に泳がせる事がどれだけ重要かを学びエイやダイナンウミヘビにやられる機会は減っていった。
2020年秋、実家から程近い敦賀新港(福井県)で別のスタイルの泳がせ釣りに挑戦してみた。それはエレベーターと言われる仕掛けでまず最初にオモリだけを投げる。竿先と海底に一本の線(ライン)を作りそのラインにサルカンを付けて魚を自由に泳がせるのだ。理屈上は表層、中層、低層と自由に餌のアジは泳ぐ事ができ様々なフィッシュイーター(大型の魚)に食われる可能性がある。
敦賀新港では最初にダツが釣れたが明らかに表層で食われているので中層や低層に沈める努力をしてみると次に55cmのサワラ(このサイズはサゴシと言う)が釣れた。普通のナイロンラインでよく歯が鋭いサワラが釣れたものだが、その日はもっと奇跡的な事が起こり、アジに一本針を鼻掛けしているだけなのにアオリイカが釣れてしまった。糸島以来「私は釣りに関して何か持っている!」と思ったものだ。
その後も餌釣りに関しては様々な釣法を覚え、同じ年の冬、私は再び糸島(福岡県)遠征を決行した。前回座布団ヒラメを2匹釣っているが本当の狙いはヒラメではなくマトウダイだった。関東の陸っぱりで釣れる話を聞いた事がない深海魚だし九州まで遠征しているならこれをターゲットにするのが相応しい。
この時もアジの泳がせ釣りで小型のヒラメを釣り上げたが2匹目は明らかに当たりが違い興奮して釣り上げると念願のマトウダイだった!ラインが左右に大きく振られるのはヒラメらしくないのでこの2匹の違いは誰だって一目瞭然。
しかし関東を中心に釣りをしているとなかなかお好みの魚に出会える事は少なく、その後10ヶ月近く新しい魚種を釣り上げる事ができなかった。しかし2021年秋から冬に泳がせ釣り釣果が大爆発する。
10月に由比(静岡県)で釣ったクエとワニゴチを皮切りに、11月には敦賀新港(福井県)で巨大なマエソ、糸島(福岡県)では再びヒラメ、柳井(山口県)では78cmのワラサ、88cmのブリを釣り上げ、米神(神奈川県)でアオリイカを何十杯と釣り、ついには関東(東扇島西公園/神奈川県)でもワラサやブリを複数匹釣り上げた。
しかし関東近郊の陸っぱりではこれ以上の釣果もそう見込めないので2022年以降は離島遠征を始めるようになる。ターゲットはキハダマグロだ。それまではDAIWAリバティクラブ(3-35)、レブロス5000番、ナイロン6号のタックルかそれ以下のタックルで全てを釣り上げていたが、キハダマグロ向けにDAIWAのガーラモンスター(12-49)、セルテート18000番、オッズポートPE8号、オーシャンレコード150LBを基本タックルにし始めた。
2022年7月には初めての八丈島遠征を行った。地元の方の親切もあり餌のムロアジが釣れる場所を教えてもらいそれを神湊の堤防で泳がせてみたら、なんと一流し目で63cmの本カンパチが釣れてしまった!ただその後は続かずキハダマグロはお預けとなった。そしてこの10月に再び八丈島遠征を行う。
座布団ヒラメを釣ったあの糸島(福岡県)遠征から2年7ヶ月、最も泳がせ釣りという釣法にこだわってきたがこの釣りは偶然ばかりではない。勿論自然界の食物連鎖に任せるので偶然的な事も起こり得るが、何が釣れるか分からない福袋の様な釣りだと断定する人は偶然だけで泳がせ釣りをしており“狙った釣り”とは言い難い。
例えば青物を狙っているのにシーバスやサメに食われる事が多い人は餌の魚を自由に泳がし切れていないか活きの良し悪しを見誤っている。サメやシーバスは瞬発力という意味では決して捕食能力が高くないからだ。餌の魚が元気で自由に泳げる状態であれば自然と捕食能力が高い魚に食われる。
例えば東扇島西公園(神奈川県)では皆さん周囲に流されてエレベーターを選択しているが絶対に効果的ではない。青物を釣る上で大切なのは前当たりや餌の魚が危機を感じた時の異変を感じとる事でエレベーターはそれができない。
その上、混雑した釣り場には不向きでエレベーターの釣り人同士がお祭りしている光景はよく見掛ける。当然だ。魚が走り切ってからでないと反応が取れないのだから。
そして最もエレベーターがよくない理由として棚の管理が難しい事(※エレベーターで結果を出す人はこれが上手い)、餌の魚の自由が利かない事があげられる。
餌のアジもそれを食うフィッシュイーターも豊富な時はいいが、たった2,3匹しかアジが釣れないなんて事も師走になれば起こり得る訳で、なけなしのアジを一瞬でサメやシーバスに食われてしまうのは残念極まりない。勿論サメやシーバスを狙っているのであればその様な釣り方をすればいいのだが。
私は東扇島西公園ではぶっ込み仕掛けしか使用しないし75%以上の確率で青物を釣っている。仕掛けと餌の魚の管理次第で青物は狙って釣る事ができるという事で、泳がせ釣りは釣れた魚によって海中で何が起こっているのかを想像する事ができる。やはり偶然の釣りではなくむしろ必然性が高い釣りと言えよう。
ただ色々語っても八丈島のキハダマグロに関してはただの素人であって今までの経験が通用するばかりではない。八丈島ではムロアジに針を背掛けて自由に泳がせており、浮きで棚の管理はしているがそれ以外はフカセに近い。これが八丈島の人々の泳がせのスタイルで郷に入れば郷に従えという訳だ。
泳がせ釣りにゴールはない。八丈島では泳がせ釣りで47kgのキハダマグロを釣り上げている人がいるし、宮古島ではカジキマグロを陸っぱりから釣り上げたという伝説(?)も残っている。自然界の食物連鎖にいかにさり気なく針を忍ばせるかが重要で、フィッシュイーターが釣れると海中での事件が証明された事になるのが楽しくて仕方がない。
冒頭にお話しした通り効率的に魚を得る事を優先に考えるとルアーと餌釣り両方の技術を身に付けるのが一番だ。泳がせ釣りは餌の魚が釣れる事が大前提になるのでサビキなど回遊魚釣りの技術が問われるが、どんなに上手な人でもいない魚は釣れない訳で、そんな難しい状況でも通りすがりのフィッシュイーターが釣れる可能性があるとすればルアーという事になる。
よく餌釣り師とルアーマンが価値観の違いで喧嘩をしているのをSNSなどで見掛けるが、釣法に優劣など全くなくあるのはその人のこだわりだけだ。私の場合、ルアーをやらないなんて信条も持ち合わせていないし、様々な釣法をどんどん覚えていきたいと思っているが一番こだわるのはやはり泳がせ釣りなのだ。
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