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[シラス町]

白の染みついた横断歩道に
気まぐれな仔鹿が ちらり
呑気な顔で渡るよ
白が積もって覆う街
シラス町

街の裏手の山際の斜面に
せり出した崖は石灰に 染まり
男みんなの仕事場さ
白に集って生きる街
シラス町

白濁る川を遡れば
薄紫の花にアゲハが 集う
一番カラフルな瞬間さ
白を比べて匂う街
シラス町

東のレールが剥がされたのは
四年前 彼が街を出た春
シラスの調べはもやに静かに
溶けて運ばれてゆくけど
街がついえども時は流れて
山脈の色を追う旅人が
知らずに描く古里ふるさとの景色も
白で塗られるのだろうか

白いドレスがシラスの終着駅へ
おさがりに身を包まれて あの娘
彼を迎えにゆくんだよ
白を重ねて愛でる街
シラス町

白の線路跡を歩く
あの鹿の
白い模様はいつか見た
報せだね
白を持ち寄り祝う街
シラス町

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