見出し画像

[オミナエシ]

二人潜った川の深さ
冷たさが今、身に沁みる
同じ震えに戸惑う
唇塞いで慰めて

二人過ごした夜をこんなに
辛く思ったことはない
遅い夜明けの仄暗い光
正直の世界との隔たり

見慣れた幼い瞳に
娼婦の花が咲いたとき
あなたとの日々、記憶の意味を
塗り替える音色が響く
甘美は鼓膜をそっとくすぐり
後戻りの蜘蛛の糸解いてく
そんな残酷なリアリティ

二人こんなにも求め合って
許されていた「もしも話」は
言葉にしたら求めてしまうから
唇塞いで慰めて

二人、体を寄せて埋めて
凍える世界から身を隠す
タオルケットに染み付いた
まぐわい、後悔、この香り

互いの男と女の深さ
くすぶって今目に沁みる
友と香ったショコラミルクの
あの無邪気さは何処へ

見慣れた幼い瞳に
娼婦の花が咲いた景色
あなたとの日々、記憶のストーリー
背徳を語るオミナエシ
甘美が心を侵しつくして
届かない独占欲すきをただ押し込んだ
なんて純粋な愛だろう

眠るあなたの横顔は
昨日までと変わらない
何かが悪かったわけじゃない
ただ僕らの過ち

二人明くる朝を繕って
大したものじゃないように
装ってみても僕ら
もうあなたには会えない

見知らぬ蕩けた瞳の
娼婦の花が散ったとしても
あなたとの日々、記憶の意味を
取り返せるはずもなく
甘美で素直な一晩の
代償は喪失
そんな残酷なリアリティ

見慣れた幼い瞳に
娼婦の花が咲いたとき
あなたとの日々、記憶の意味を
塗り替える音色が響く

二人分かち合った切なさは
癒えることはないだろう
あるべき場所で、どうか幸せに
お幸せに

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?