[シナリオ]

電車が長く揺れている
今日の疲れ達も揺らいでる
誰かの打ち込んだレールが鳴り響いて
僕の鼓動も止まらずにいる

はじめて泣いたあの日のこと
夢の中 時折思い出す
「覚えてないでしょう？」友人は笑う
いいえ違う 誰だって覚えてるよ

ねえ 世界の宝物
君は今どこにいるの
這って来いとは言わない
ただ一つ お願いだから
そのシナリオを貸してください

もしも次の駅で降りたら
僕は英雄になる？
乗っていても降りても
馬鹿だな 鼓動は止まらない

ねえ 天才バレリーナ
どこかで今も踊っているの
ピルエットが何回回れても
君は長くはなかったよね
そのシナリオを掴んでいたかった

電車の窓に夜が降りて
フレームではないみたい
急行は時速100キロ
ちょっとだけ時計がズレる 不思議！

終着駅で降ろされて
特殊を失う一般人
友人がいないか探すんだけど
彼は気づかないまんま

ねえ 急行電車
車庫には車庫の時間があるの
僕には無いと思えるんだな
寝過ごしたら連れて行ってよ
このシナリオをあげる

日々暮らしはどんな夜をも
越えてツグミの声を響かせる
「覚えてないなあ」友人は訝しげ
調べてご覧 誰だって覚えてるよ

ねえ 誰でもいいけど
誰でもいいから君がいい
日の出をどうか教えてよ
ツグミよりも大好きな声で
朝をシナリオが彩るよ