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「地球に優しく」

地球に優しく、とは何かの標語ではありません。

ワークショップや稽古の時に、歩く動作をお伝えする時によく出す例えです。

感覚を繊細にしていくと、足裏の接地時のぶつかる感覚に違和感が生じます。これは地面と衝突し喧嘩してしまっているとも言えます。地面と喧嘩していると足裏から体全体に伝わる衝撃もすごいですし、怪我の原因にもなりかねません。体を使っていく上で、部分的な負担を減らし、全身に負荷を散らす事は怪我の予防にも役立ちますし、必要な筋肉が自ずと発達してきます。


私の場合、よく「地球に優しく」歩いて下さいと表現します。この事は以前の記事にも書いたかと思いますが、この感覚はとても大事な感覚だと思うので何度も書きます。


私達は普段、自分の体重を垂れ流して歩いています。映画『千と千尋の神隠し』に登場するオクサレ様(川の神)のように何かを垂れ流して歩いている感覚です。私達は自分たちが思っている以上に何かを漏らしながら生きています。息や汗、体重は雰囲気、空間などなどです。

体重に関して言えば、足裏から地面への漏れを極力少なくする事で結果として身体にまとまりが生まれます。オクサレ様から等身大の自分(川の神)に変化する感じでしょうか。垂れ流していた重さを体内でまとめ上げる。これは武術的身体では大事な点です。


重さを考えた時に、同じ重さでも、羽毛布団と鉄の塊では持った時に感じる重さは全く違います。鉄の塊の方が重く感じますね。羽毛布団だと重さのまとまりがなくフワッとしている。鉄の塊だと重さが凝縮されていてズシっと感じます。

歩く時でも体重垂れ流しで歩くとダラっとして疲れやすく、地球に優しくしていく結果として身体が纏まり地面へ体重が逃げないと疲れにくくなります。

これは、地面との関係性を捉え直して見えてくるものです。

私が活動している中で大事にしている事の一つが、この捉え直しです。

今回は接地を通しての地面との関係性でしたが、相手との関係性や自分の中にいる他者との関係性なども捉え直して見えてくることもあります。

地球に優しく歩く事は、実はなかなか難しいです。ついついガツガツ歩いてしまいます。それは今歩いている道の多くがアスファルトなどのしっかり安定した地面だからです。山道や滑りやすい道といった不安定要素がある道であれば、自ずと地球に優しく歩くしかなくなります。

アスファルトでも、不安定要素がある道を歩いている感じを出すだけでも結果的に地球に優しく歩く事ができます。歩き方も工夫してみると身体を練る稽古になります。

『地球に優しく』を身体との対話の1つの材料として頂ければ幸いです。

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