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降り注ぐ「黄金の雨」 ゴールデンシャワー 【南国花信風 2】

ゴールデンシャワーという英語名は、「黄金の雨」という意味。満開のときには、それこそ雨が降り注ぐように、黄色い花が一斉に咲く。小さな花が房になっているから、遠目にはぼんぼりのようにも見える。

和名を、ナンバンサイカチという。「皀莢(サイカチ)」はマメ科の落葉高木のこと。外国から伝わったから「南蛮(ナンバン)」ということか。原産地はインドらしい。

花に見守られて歩いたプノンペン

タイの国花なのだけれど、この花で思い出すのはカンボジアのプノンペンだ。フランス統治時代に整備されたというプノンペンの街は、中心部はだいたい碁盤の目で、大きな道路を除けば、車やバイクに追い立てられることなく歩くことができる。

二度目に滞在したのは、ちょうどこの花が満開の季節で、露地の散策を楽しんだ。振り返ればそこここに、ゴールデンシャワーの樹があった。

ゴールデンシャワーが咲き誇る、5 月のプノンペン(カンボジア)

暑さともに思い出す、黄色い花の記憶

タイではどこでも目にする花だが、あるとき少し意外な場所で出くわした。バンコクの中心街から北に位置する、チェーンワタナの入国管理局のある建物の敷地に、ゴールデンシャワーがたくさん咲いていた。

役所の手続きというのはそういうものだけれど、決めごとに沿わないと受け付けてもらえず、そしてそれがこちらの事情に沿わないこともある。その日はちょうどそんな一日で、ため息をひとつ、つきながら建物の外に出た。

表通りの方に歩いていくと、ゴールデンシャワーが、まるで微笑むように明るく咲いていた。満開の花が今にもこぼれ落ちそうになっている、重そうに垂れ下がる房の下に入って、空に向けてシャッターを切った。

ゴールデンシャワーは 4 月ごろ、一年で一番暑い時期に咲く(タイ)

しばらくそうしていたら、胸に抱えていた屈託が消え、不思議なほど気持ちが軽くなってきた。
―なるように、なるさ。

一般に受け入れられているのはラーチャプルクないしチャイヤプルクという名。パーリ語でラーチャは王で、ルカは樹だから、ラーチャプルックは「王の樹」という意味。チャイヤは勝利であるから、チャイヤプルックは「勝利の樹」の意になる。 
    レヌカー・ムシカシントーン『タイの花鳥風月』めこん、1988年。

花になぐさめられるのは、こんなときだ。


ゴールデンシャワー 
別名 ナンバンサイカチ
英語名 Golden Shower
学名 Cassia fistula
インド原産

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