マガジンのカバー画像

心に残るnote作品集

69
エッセイや日記、写真、漫画など、出会えてよかった、素敵なnoteを集めてみました。さまざまなジャンルのクリエイターの皆さんに感謝をこめて。マガジンをつくる前に読んだ素敵な作品もた…
運営しているクリエイター

#日記

大切な人との永別を実感させてくれたのは距離だった

今年の夏、おばあちゃんが亡くなった。 血の繋がらない父方の祖母。昨年のちょうど今頃書いた「ハイカラおばあちゃんと紅茶」というエッセイに出てくる。 本当にハイカラさんだった。損得考えず思ったことをズバズバ言う性格には時々困らされたけど。 夫と娘に先立たれ、少しずつ弱っていったおばあちゃんは、父母が同居する自宅と病院と介護老人保健施設を行ったり来たりしていた。一人で歩けなくなってからは施設で過ごすことも多かった。 * 「お知らせしときます。おばあちゃん、いま病院です。今

情熱の炎は弱火でじっくり

やる気全開でがんばるぞ! とか、フルスロットルでやるぞ! とか。そういう言葉は、主に自分を奮い立たせるためなんだな、とようやく気がついた。 SNSなどで「ものすごくやる気に満ち溢れています」というような言葉を目にすると、なんだか「わたしはそうでもないなあ」と思案していた時期がある。 「自分はそこまで出来ていない」と比較して、勝手に落ち込んでいただけかもしれない。けれどもそういった発言をしている人は、周囲に向けて言っているというよりは自分自身に向けて「怠けるなよ、自分」とい

晴れて卒業。

ついに、リハビリを卒業することに決めた。 次回、12月17日が最後。 2018年11月に入院し、手術をして、後遺症で左腕が上がらなくなって、曲げることができなくなって、リハビリが始まった。2019年1月末までは、入院しながらリハビリに専念。2月からは仕事復帰して、通院しながらリハビリを続けた。 だらりと垂れ下がった左腕を、右手でパソコン前に連れてきて仕事をしていた。一週間に1、2回は病院でリハビリを受けた。病院も非を認め、これまでの医療費は今のところ請求されていない。と

夢は叶うより実るほうがいい。

イラストレーターになりたいと思っていた。イラストに言葉を添えて、本を出したいと思っていた。 高校の頃の私の夢だ。 高校を卒業する頃、私はイラストの専門学校に行きたいと両親に言ったけれど、猛烈に反対されて大学受験することになった。でも第一志望の大学には受からず、すべり止めの大学に何とか受かり、その大学に入学したけど、結局のところ中退した。 私の夢は何一つ叶うことはなかった。 今思えば、その道はいくらでもあったはずなのに、私は何の努力もせずに、無気力なまま職安に通う日々が

最適解を求め急がない

「あなたの弱点はね、まず自分に都合のいいような答えを先に見つけて、それに引っ張られるところかな」 ほんの少しだけ躊躇いの色を見せながらも、先生は私の目をまっすぐ見てそう言った。自宅から車で20分程度の閑静な街。その一画にあるおうちで私は英会話の個人レッスンを受けている。 終わりのない英語学習。これまで現地の語学学校に通ったり、アメリカ人のチューターに英語を教わったりしてきた。今さら日本人の先生に指導を受けようと思ったのは、英語を習得した先に「翻訳」というスキルを身につけた

セーターを着たくって、冬のお出かけが待ちどおしい

そのセーターに袖を通すとき、いつだって身体だけじゃなく気持ちまで暖かくなる。 特別で、お気に入りのそのセーターを編んでくれた人は「よしこさん」。本当に偶然だけれど、わたしの母の名前もよしこという。セーターに腕を通すとき、いつだって二人のよしこさんに想いを馳せる。 「気仙沼ニッティング」という編み物の会社について知ったのは、ほぼ日刊イトイ新聞の、ひとつのコンテンツでした。 「ほんとうにほしいと思う一流のセーター」、これをしっかりとつくりあげること! つくる側も買う側も、両

"不具合な空"の下で

故郷は、ここより半日早く、1月17日を迎えている。 二十数年前、そこで私は、大きな地震を経験した。 早朝、何によるかわからないもので、目が覚める。 家全体が軋む大きな音、何やら鋭い音が、耳をつんざいてくる。 スローモーションで、部屋中の物が崩れていくのが見える。 そして、天井に届いていきそうな、猛烈な揺さぶり。 どうやら、自分は地震に見舞われているようだと気づく。 ピンチに遭遇しているらしいのに、体は全然動かない。 ゆるゆる、頭は動きだした。 地震だったら、テーブルの下と

全力でバットを振ろうと決めた日

LINE MUSIC×noteの #いまから推しのアーティスト語らせて 投稿コンテストで「等身大を越えてゆけ」という作品が準グランプリをいただきました。温かいお言葉をくださった皆様、ありがとうございました。 今日、これから書くのは裏話です。 無粋だなぁとは思いつつも、自分にとっても大きな出来事であり、また「読みたい」と言ってくれる人もいたので書くことにしました。 締め切り2週間前までスルー予定だった同コンテスト。応募のきっかけとなったのは昨年の秋に開催された「教養のエチ