こだわりを持って生きる: S さんから学んだこと

S さんはちょっと変わり者の日本人女性で、アメリカの大学を出てアメリカで日系企業に就職していたけれど、半分日本人社会の職場では、かなり浮いていた。

英会話が上手で、物怖じせず誰とでも話し、私にも最初からとても親しげに接してくれた。一緒にランチに行ったり、休みの日にも一緒に買い物に行ったりするようになって、自分では行かない都会のレストランやショッピングモールに連れて行ってもらった。独身の彼女と出かけると、自由になった気分で楽しかった。

環境問題や健康に人一倍気をつけていて、ハイブリッド車の良さも、オーガニック食品の大切さも、添加物の怖さも、ベジタリアンのオプションも、すべて彼女から学んだ。色々なことにこだわりを持ち、かなりエキセントリックな私生活を送っていた割に、料理が上手で家庭的な面もあり、話題には事欠かなかった。

その内、私は子ども達の日本語学校やスポーツで毎週末が大忙しになり、彼女とプライベートで会うことはなくなった。そして、彼女は浮いていた職場からとうとう解雇され、日本に帰って行った。

どういう経緯か忘れてしまったけれど、日本に帰る前に彼女から引き取った包丁は、今でも大事に使っている。質の良いものへのこだわりがあった彼女が選んだ包丁だけあって、とても良い包丁でかなり気に入っている。

今、彼女は日本で英語を使ってバリバリと働いているようだ。もう連絡は取っていないけれど、元気そうで何より。環境問題や健康に真摯に向き合って、こだわりを持って暮らす彼女に、私は知らない間にたくさん影響を受けていたと思う。私達の人生は離れてしまったけれど、学んだことは忘れずに大切にしたいと思う。もらった包丁のように。

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