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一目惚れから ロシアワールドカップ旅日記2

6月23日(土)モスクワ

サッカーボールを追いかけるロシアの旅は、軽快で賑やかな拍手とともに始まった。

それは、飛行機がロシアの大平原を越え、首都モスクワにあるドモジェドヴォ空港に降り立ったときのことだった。

飛行機が着陸すると、パチパチパチパチ……、と乗客たちが申し合わせたように拍手をしたのだ。

僕は初めて知ったのだけど、ロシアでは、飛行機が無事に着陸するとみんなで拍手をする、という習慣があるらしい。それは少し不思議な光景だったけれど、旅の始まりをお祝いしてくれるかのような、縁起の良さを感じさせる光景でもあった。

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あっさりと入国審査が終わり、ドモジェドヴォ空港のターミナルに出ると、僕はまず、スマホのSIMカードを購入することにした。僕はいつも、旅をしている間中、Twitterで旅のあれこれを呟いている。そのためには、いつでもスマホがネットに繋がるSIMカードが必須なのだ。

大容量で比較的安いSIMカードを売っている店を見つけ、僕が購入していると、やはりSIMカードを買っていたどこかの国のサポーターに声を掛けられた。

「やあ。どこから来たんだい?」

「日本から」

「おお!この前のコロンビア戦、日本勝ったじゃないか!おめでとう!」

彼の言葉を聞きながら、そういえば4年前のブラジルでも、行く先々でたくさんの人々に声を掛けられたことを思い出した。きっと、ワールドカップというものは、人と人との距離を近くするのだ。

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「アエロエクスプレス」という鉄道に乗って、まずはモスクワの街へと出ることにした。

僕が驚いたのは、車窓を流れる風景の美しさだった。

澄みきった青い空、美しい緑の木々、その葉を揺らす穏やかな風……。そこに広がっていたのは、まるで初夏の北海道のような、爽やかな風景だった。

モスクワって、こんなに優しい風景が広がっている街だったのか……。もしかしたら、僕がイメージしてきたロシアと、実際のロシアは、だいぶ違うのかもしれない。

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僕が乗った「アエロエクスプレス」は、45分ほどで、終点のパヴェレツ駅に到着した。

その駅を降りると、僕はまたも驚かされることになった。

目の前にあったのは、紛れもないヨーロッパの街並みだったからだ。それも、これまで旅してきた南ヨーロッパとは異なる、東ヨーロッパ特有の、落ち着いた美しい街並みだった。

宮殿のように巨大な駅舎、華美さを排したアパートメント、スターリン様式のビルディング……。その街並みの中を、色鮮やかなトラムが行き交い、美しい顔立ちをしたロシアの人々が歩いている。

モスクワという街は、なんて美しい街なのだろう……。

たぶん、僕はそのとき、モスクワという街に、いやロシアという国に、「一目惚れ」をしたのだと思う。

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モスクワの街で僕が最初に向かったのは、ワールドカップのチケットオフィスだった。まだ発券していないチケットがあったため、それを入手しに行く必要があったのだ。

パヴェレツ駅から、絵画の世界のような街並みを30分ほど歩くと、目的のチケットオフィスに到着した。

そこではたくさんのサポーターが列を並んでいた。ドイツやスペイン、フランスといったヨーロッパの国のサポーターはもちろん、アルゼンチンやコロンビアといった南米、チュニジアやモロッコといったアフリカ、もちろん日本のサポーターの姿もあった。

僕はその列に並び、いろんな国の言語が飛び交う中に囲まれながら、胸がわくわくするのを感じていた。これだ、これがワールドカップなんだ、と。

4年前、ブラジルの地で実感したのは、ワールドカップというのは世界最高のお祭りなんだ、ということだった。

お祭りは世界中にたくさんあるし、オリンピックをはじめとするスポーツイベントもたくさんある。けれど、ワールドカップというものは、そこに集まってくる人々の「豊かさ」において、他を圧倒すると思っている。

「豊かさ」というのは、必ずしも国籍のことばかりではない。人種や身分、年齢を越え、実に個性豊かな人々が、4年に1度のワールドカップには集まってくるのだ。

こんなにも楽しいお祭りは、世界中探しても他にないんじゃないか。僕はそんな気がしている。

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賑やかなサポーターの声を聞きながら、無事にワールドカップのチケットを手に入れた僕は、「さて」と小さく呟いた。

さて、これからどこへ行こう?

このロシアの旅では、ワールドカップの5試合を観戦するほかは、とくに予定は決めていなかった。つまり、サッカーの試合を観戦するほかは、まったくの自由なのだ。

僕はとりあえず、モスクワの中心地たる「赤の広場」へ向かうことにした。ようやく、ワールドカップをめぐるロシアの旅は、本格的に幕を開けたのもしれなかった。

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旅の素晴らしさを、これからも伝えていきたいと思っています。記事のシェアや、フォローもお待ちしております。スキを頂けるだけでも嬉しいです!