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色と光と空と ロシアワールドカップ旅日記3

旅の1日目は、モスクワの街をひたすら歩いた。クレムリン、赤の広場、グム百貨店、ボリショイ劇場……。

そのモスクワで僕が驚いたのは、3つのことだった。

驚いた1つめは、「色」だった。

モスクワの街は、びっくりするくらいカラフルな街だったのだ。たとえば赤の広場へ行くと、ディズニーランドから飛び出してきたみたいな、可愛らしい聖堂を目にすることになる。たまねぎ型のドームは色鮮やかで、聖堂の中へ入れば、美しいイコンが飾られている。

僕はモスクワの街を、どこかモノクロな街だとイメージしていた。でも実際のモスクワは、色彩に富んだカラフルな街だったのだ。

カラフルといえば、グム百貨店で売られている、色とりどりのアイスクリームも美味しかった。小さなワゴンにロシアの人々が列をなし、みんな幸せそうにアイスを食べていた。

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驚いた2つめは、「光」だった。

これもまったくの偏見だったのだけど、僕はモスクワの街に陰鬱なイメージを抱いていた。どんよりとした曇り空の下、険しい顔をした人々が静かに行き交っている、というような。

けれど、初夏のモスクワには美しい緑が溢れ、行き交う人々はみんな楽しそうだった。道路が広く、ひとつひとつの建物が大きいのも気持ちいい。街を歩いてるだけで、爽快な気分になってくる。

それには気候も大きかったかもしれない。6月のモスクワは暑すぎず寒すぎず、過ごしやすい気候だった。太陽の光は眩しく、吹き渡る風は柔らかい。

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驚いた3つめは、「空」だった。

モスクワの空は、とても美しかった。水色の絵の具を流したような青空と、もくもくと湧き出てくる白い雲。晴れていたかと思えば突然夕立が降り始め、でもまた太陽が顔を出す。

空の美しさの淵源は、高層ビルが少ないところにあったかもしれない。高い建物が少ないので、大都市であるにもかかわらず、空が広く感じられるのだ。

空が美しかったのは、たまたまだったのかもしれない。けれど、そのモスクワの空には、物語の始まりを予感させる独特の美しさがあった。

色と、光と、空。それらに共通するのは、「明るさ」だったと思う。

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夕方になり、今夜のホテルへ向かうため、地下鉄の駅へ向かったときのことだった。

駅前のストリートで、若い女の子が歌を歌っていた。ギター片手にバラード風の歌を歌い、それなりに聴衆を集めていた。

興味深かったのは、曲を歌い終わった女の子が、ちょっと休憩という感じでタバコをぷかぷかと吸い始めたことだった。一服すると、ああ満足という感じで、再び女の子は歌い始めた。

喫煙率の高いロシアでは、ごく当たり前の光景なのかもしれない。でもそれは、どこか退廃的で、だからこそ美しい光景のように思えた。

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そういえば、モスクワでもうひとつ、びっくりしたことがある。それは、「地下鉄の深さ」だった。

モスクワの地下鉄は、とんでもない地下深くを走っている。異様に速いエスカレーターで下っても、一向にホームに辿り着かないくらいなのだ。

どうやら、元々は核シェルターとしての利用も想定して作られたらしい。地下ホームへ下るエスカレーターは、地底へと続くトンネルみたいだった。

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今夜泊まるのは、市街地の外れにある、「カチューシャ」という名のホテル。赤と緑の絨毯が敷かれた、どこかソ連的な香りの漂うホテルだ。

部屋に入り、テレビを点けると、ソチで行われているドイツvsスウェーデン戦の中継をしていた。初戦でメキシコに負けたドイツだが、スウェーデン相手にも1-1と苦しんでいる。

ところで、ワールドカップを現地観戦に来ると、ワールドカップの試合を観られなくなる。逆説的に聞こえるけれど、これは決して間違ってない。日々の移動に忙しくなり、生観戦する試合以外は、テレビで観る余裕がなくなってしまうのだ。

だから、こうしてテレビでワールドカップを観られるのは、貴重な時間だった。

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……と、アディショナルタイム、クロースのフリーキックが決まり、ドイツが逆転した! その瞬間、隣の部屋から、大きな歓声が聞こえてきた。どうやらこのホテルには、ワールドカップの観戦客がたくさん泊まっているらしい。

そのとき僕は初めて、次の日にさっそくエカテリンブルクへ向かい、日本とセネガルの試合を観戦することを思い出したのだった。

旅の素晴らしさを、これからも伝えていきたいと思っています。記事のシェアや、フォローもお待ちしております。スキを頂けるだけでも嬉しいです!