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行政・農家視点で語る!地域活性化に繋げる農業イベントの運営の裏側~2つの工夫が成功のカギ~
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成田空港からバスで15分ほどの場所に、
”世界から1番近い田舎”、千葉県香取郡多古町(たこまち)がある。
今、多古町の農業イベントが盛り上がりをみせているのだ。町周辺の参加者もいるが、むしろ横浜や東京など、都市近郊からわざわざ人が訪れている。
その秘訣は、運営を「一般社団法人多古町観光まちづくり機構」と「農家」で役割分担し、効率的かつ広報に強い農業イベントを開催しているのだ。
どうやってイベントを開催したらいいの?
農業が、まちづくりに貢献できることって?
その疑問、この記事で解決します!
事務・広報担当の一般社団法人多古町観光まちづくり機構・谷平さんと、農業体験を指導するたちばなふぁーむ・青木さん、2者の立場からお話をうかがいました。
TABETAIメンバーが実際に参加した田植えイベントを題材に、多古町の農業イベントの成功の秘訣に迫ります!
書き手:河村青依(TABETAI編集部/早稲田大学)
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【登場人物紹介】
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まちづくり機構:谷平智久(たにひら・ともひさ)さん
町役場からの出向で一般社団法人多古町観光まちづくり機構の事務局に所属。出身は隣の成田市ですが、祖父母が多古町で、幼少期から慣れ親しんだ多古町。まちづくりという観点から多古町を見た時に改めて町の良さに気づけたという。
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たちばなふぁーむ:青木清子(あおき・きよこ)さん
江戸時代から続く多古町の米農家・たちばなふぁーむの長女として生まれる。
現在は横浜市在住で、月に一度たちばなふぁーむのお米を使ったランチを提供するカフェを経営したり、イベント運営のお手伝いをするなど広く活動している。
農業イベントなら引き出せる
多古町の魅力
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そもそも多古町では、なぜ農業イベントが積極的に開催されているのだろうか。
まちづくり機構谷平さん:
「観光コンテンツを作らねば、と思ってました。
多古町には、強い観光コンテンツがないんです。ディズニーがあるから舞浜に行く、みたいな。あるのは見渡す限り広がる田んぼと、美味しいお米だけ。あと、人もあたたかい。
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多古町は一度来たらまた来たくなる場所になるんじゃないかなって、訪れた人たちを見ていて感じていたんです。だから、田植えをして、多古の人や農業に触れたら、「あのお米食べたいから、あの人に会いたいから多古町にまた行きたい」って会話が生まれるかもしれないって思って。それで自然と人に触れ合える農業のイベントができたらなと考えました」
わたしが参加した多古町の田植えイベントでも、町のお米問屋さんの渡辺与四郎商店・渡辺摂(おさむ)さんがお手伝いとして参加。多古町のお米にまつわるお話を子どもたちに沢山していた。
聞けば立花さんの中学の同級生だという。”多古の仲間だから助け合う”、多古の人の温かさを感じられた瞬間だった。
農業イベントを開催したくても、
立ちはだかる事務仕事の壁
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農家の本業は、もちろん毎日の農作業。
イベントを開催するとなると、広報やら、予約対応やら事務作業が多い。多古町では農業イベントに関する事務作業をまちづくり機構が、イベントのメインコンテンツである農作業を農家さんが実施することで、効率的に運営しているのだ。
農家さん視点で見ると、このような分業体制のイベント運営は、助かる点も多いのか?
青木さんにうかがうと
たちばなふぁーむ青木さん:
「新型コロナウイルスが始まる年まで、イベントを自分たちだけでやってたことがありました。でも、広報と予約対応が本当に大変でしたね。
うちはある程度パソコン技術が必要になる事務仕事を私が担当することができたけど、親世代はそういう機器を使うのが本当に難しいからね。特に農業は高齢化が進んでいるから、まちづくり機構さんみたいな存在があると本当に助かると思うな。一般社団法人だから、年間費用は少しあるけど、イベントで得た利益は全て農家側に入るからとてもお得です。
いい仕組みがあることがまだ伝わっていないので、私たちが多古町の農業イベントの前例になることで、周りの農家さんでイベントを開催したいと思っている人の背中を押していきたい。そして、開催する他の農家さんのお手伝いも積極的に行っていくことで、こういう取り組みが広まって欲しいと思いますね」
事務仕事がなくなるだけで、農家はイベント開催に参加しやすくなるのだ。
事務仕事だけでなく、農業イベントの開催にあたっては、食品を扱うための保健所への申請や、参加者の保険加入手続きなど、経験がないと難しいこともたくさんあるそうだ。
青木さんは、自分の経験を伝えることで、多古町で初めてイベントをする農家さんの背中を押せるような存在になりたいと語ってくれた。
まちづくり機構側が運営を担うことの意図は何か。
まちづくり機構谷平さん:
「農業イベントを町としてやっていこうとなった時に、電話が取れない・申込フォームが作れない農家さんが多いことが分かっていて、そういうことができる僕たちが、プラットフォームとして機能した方が効率がいいんじゃないかと思って。
農家さんも気軽に農業イベントが開催できて、町の外の人も、気軽に参加ができる。そんな仲介役ができたら多古町の農家さんのファンが増えるんじゃないかと考えました」
まちづくり機構と、農家の分業体制は、農家さんのイベント運営参加へのハードルを下げることを可能にする。
これによって多古町で開催される農業イベントが増え、食と農を盛り上げることに積極的な町になっているのだ。
また、多古町の「都心から近い田舎」という立地もポイントで、普段自然や農業と触れることのない大人や子どもに、農業への関心を持つきっかけを提供することができるのだ。
農と食がまちにできること、
町全体をWin-Winにするイベント運営とは?
農業イベントを通して、町や農家は何を伝えたいのか。
農業イベントが、生み出す影響は?
たちばなふぁーむ青木さん:
「若い人が来てくれて、少しでも農家っていい仕事だな、って思ってくれたら嬉しいな。
わたしは横浜で月一、たちばなふぁーむのお米を使ったカフェをやっているんだけど、それを始めたのも少しでも農業や多古町の良さに気づいてくれる人が増えたら嬉しいなという気持ちで。多古町を盛り上げたいというよりは、多古の良さ、自然の綺麗さ、お米の美味しさを感じて、その場限りではない繋がりができたら嬉しい。横浜のカフェ経由でイベントに来てくださる方も多いので、こうやって繋がりが生まれていくのは本当に嬉しいことだな」
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さつまいもは、たちばなふぁーむさんと同じく機構の会員である
さつまいも農家・行橋(ゆくはし)さんからの提供
イベント参加者のほとんどが親子連れだった。
『農業の原体験がその後の人生で自然を想う気持ちになってくれたらいいな』と、子連れの参加者たちは語ってくれた。
農業と触れる機会の少なくなっている今、たしかに、農業イベントは青木さんも言うように、自然や食べる命に触れる原体験を持つ教育の場として貴重なのかもしれない。
また、まちづくり機構の谷平さんは、
農業イベントを行うことで開催する側にも気づきが生まれると話す。
まちづくり機構谷平さん:
「農業イベントを開催して驚いたことは、普段から見慣れている多古町の自然に思った以上に感動してくださるイベント参加者が多いことですね。農家さんにとって当たり前の田植えや、落ち葉を集めてする焼き芋などに対して、珍しがって感動してくれるイベント参加者の方がいると『えっこんなので嬉しいの?!』って新たな気づきになって。それで自分たちの多古の良さに気付かされるというか。イベントの主催側も発見があるのが面白いと思います」
身近にあると気づけない町の魅力を、外から来た人の視点に触れることで気づく。そんな発見が農業イベント開催にはあるのだ。
多古町の農業イベントでは、町にお金を循環させる工夫もしているという。
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「せっかく来てくれたイベント参加者が街を、巡って楽しんで、お金を回してくれるといいなと思っています。
そのために、イベント参加者に地元の和菓子屋さん、お肉屋さん、温泉施設などのクーポンをわたしています。
イベント後に、多古町の美味しいものや魅力に触れて、ものを買ってくれたりして。そうしたら多古町の人も参加者も、みんながwin-winになる。そんな循環のあるイベントを目指していますね」
参加者の子どもが、『クーポンに温泉あったよね、田植えで汗かいちゃっから温泉行きたい!』と話している声が聞こえた。
また、イベント帰りにクーポンにあった町の和菓子屋さんに行くとこんな立て看板が。
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多古町全体で、町に来る人たちを歓迎する姿ができつつあるのだ。
「運営の分業」と、「利益を町に循環させるクーポン」
この2つの工夫を取り入れた、多古町の農業イベントは今後も町を盛り上げていくだろう。
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— TABETAI|若者がつくる、一次産業アイディアBOOK @11/16TABETAI食堂開催🇯🇵 (@taberutimes) July 15, 2022
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