【米農家とファンづくりの話をしよう】オンリーワンの米作り~奥さんの笑顔がうむ魔法とは~
今回お邪魔するのは富山県黒部市の専業米農家「濱田ファーム」。
濱田ファームは代表の濱田智和さんと、奥様の濱田律子さんが、米づくりから直売までを自らの手で行っています。
実はTABETAIが濱田さんにインタビューするのは2回目。
前回は智和さんに直売へのこだわりをうかがいました。
今回は全ての実権を握っていると噂の(笑)奥様の律子さんにスポットを当ててみたいと思います。
前回の記事でも分かる通り、明るくて気さくで優しさに溢れた律子さん。どうやら、カナダの永住権を取得したにもかかわらず、智和さんに騙され(?)、見ず知らずの黒部にガイドブックを持って嫁入りをしたとか……!
律子さんは言います。
「人生無駄にしたくないじゃん!」
そんな何でも楽しもうとする姿勢は、濱田ファームのお米作りにどんな形で表れているのでしょうか。
聞き手:奥野香子
「農家の嫁になるのに、全く覚悟もイメージもなく(笑)」
カナダで10年間、旅行会社で働いていて、日本から来たお客さんを観光にご案内するガイド業と、諸々の手配とかレストランの予約とか、オフィス業もやってたなー。
そうそう!彼はワーキングホリデーで来ていて、スキー場で働いてて。
騙されたって言うのは大袈裟で(笑)、先に帰って農業してるのも知ってたし、結婚したら農家に嫁ぐのも分かってた。
全く覚悟もイメージもなく(笑)。最初は農業やろうと思ってなかったかも。
一般的な負のイメージの「農家の嫁」って、義理の親と同居して、朝から晩まで一緒に農業して、って感じじゃない?
だけど、両親と一緒に住んでないのも知ってたし、この人(智和さん)が農家を始めて、一人で仕事としてやってたから、サラリーマンと変わらない感じ。私は家にいて、サラリーマンが会社に行く代わりに、田んぼに仕事に行くっていう。
お米の直売に関する全般的なこと。濱田ファームのいろんな情報をSNSで発信して、お米の注文が入ったら対応、お米を用意して発送して……これが7割くらい。あとは経理と、農作業は春の1ヶ月間育苗を手伝うくらいかな。
常に対象者はお客様だということ。農家向けに「コンバインのERなんとかの電気系統がどうのこうの……」みたいな情報交換のために発信している人もいるけど、私はお客様に向けて発信してるから、農業を知らない人にもわかってもらえるような簡単な言葉と説明を心がけるようにしてる。
例えば、畦にふりがなをふったり、育苗に説明をつけたり。これはガイド業で培った技で、業界の難しい言葉を噛み砕いてわかってもらえるように書く癖があるかな。
農業とは全く縁がなかった律子さん。しかし、ガイド業での経験は、知らず知らずのうちに「お客さんを第一に考えた」情報発信に活きています。
純粋に「お客さんとの繋がり」を楽しんでいるようです。
その秘訣は一体何なのでしょうか。
「旅行先の宿とか、出会った人にお米売って来るよね」
サラリーマンみたいに決まった休みはないけど、頑張って休む(笑)農繁期はどうしても休めないけど、農閑期に全力で休んで全力で遊ぶ!行きたいところも読みたい本も見たい映画もリストアップして、できたら上から消して、人生無駄にしたくない!みたいな。
律子さん:年間スケジュールを見て、どんどん農閑期の予定を先取りしてく!
智和さん:半年以上前から決まってるよね、芸能人かって(笑)
律子さん:もう、とったもん勝ち(笑)。最近は全国行って遊んだり、誰かと会って飲んだりすることが仕事に繋がることが増えてきていて、そういう意味では遊びも仕事も垣根はないかもしれない。
智和さん:私たちは米を作るだけじゃなくて、売るのも仕事だからね。売るためには人との接点がないと難しい。
律子さん:旅行先の宿とか、出会った人にお米売って来るよね。
智和さん:しょっちゅうあるね(笑)。
律子さん:お米が関係を繋いでくれることもある。農家っていう肩書きに興味持ってくれたり、お米はみんな毎日食べるものだから、へえ〜お米作ってるんですか!それって買えるんですか!とかね。お米を買ってくれて、その後もずっと関係が続くっていう。
律子さん:そう思うでしょ?私の周りはすごく行ってる!
智和さん:みんなが考える農家のイメージは一昔前っぽい気がする。
律子さん:もちろん、俗にいう「農家の嫁」みたいな、朝から晩まで働いて子育てしてご飯作って親戚が来て…みたいな人もいっぱいいる。特に保守的な富山では尚更昔っぽい典型的な農家スタイルが多いかも…?
智和さん:いろんな農家のスタイルがあるってことだね。「農家」っていうと、勤勉なイメージを持つ人が多いじゃない。
律子さん:私たちは、仕事は真面目にコツコツちゃんとやるけど、それが終わったら旅行もしたいし、子供との時間も大切にしたいから、お米以外のものは作らない。お米の直売だけで暮らしていけるように努力する。
律子さん:そうだね!もちろん、コツコツ一年を通して田舎で季節を感じながら農業をやりたい人もいっぱいいるし、それも素晴らしいことだと思う。
すごくフレキシブル!私たちの「農家」像が大きく変わりました。
でも、現実的に、この「全力で休んで全力で遊ぶ」スタイルはなかなか難しいんじゃないかな、とも思ったのです。
だって、米農家は儲からないって聞くし、先日里芋農家さんにも「お米だけじゃ絶対やってけない!儲かる野菜を作ることと現金収入が大事!」って言われたし……。
専業米農家の濱田ファームさん、実際のところ、どうなんでしょうか。
「機械が壊れても、ブログのネタができたと言ってくれる」
律子さん:それ、全員言う!
智和さん:俺が始めた時も言われた。みんなしてダメとか大変だって言うから、どれくらい大変なんかなって思って始めてみた(笑)。
律子さん:お米だけで暮らしていけないっていうけど、ちゃんと検証したのかなあ。私たちが15年くらいやってみて思ったのは、多くの人が機械投資しすぎ。あとは、農家自身がちゃんとお金の流れを見ること。「儲かりそう」とか「流行りだから」で闇雲に始めない。
みんな一言で片付けちゃうけど、一つ一つ切り詰めていけばやっていけないこともないんじゃないかな。
智和さん:何も現実を知らなかったからできたかな。もし機械、設備、土地、人も必要、お米は安いってネガティブ要素を知ってたら始められなかった。でもやってみたら、一個一個潰すことができて、13年経ってやっと自立して農家としてやっていけるかな、というところまできた。実際、大変は大変なんだけど、俺でもできたんだから誰でもできるんじゃないかなあっ。
律子さん:彼は楽観的で、大変なことをあんまり大変とか、ハードル高いとか思う力が著しく欠けてるよね(笑)。
智和さん:欠けてるねえ(笑)。
あと、やっぱり一人ではここまで来れなかった。この人(律子さん)のおかげで楽観的に拍車がかかって、トラブルを楽しく乗り越えてこられた。例えば、機械が壊れても「壊れたんやあ!いいブログのネタになるわあ!ありがとう!」って。これは楽しいぞって。壊れるのも怖くないって思えるようになったね。
お客さんとの繋がりも、農作業も、遊びも、全部無駄にしたくない!
そんな律子さんの前向きで、伸び伸びとした人柄が、濱田ファームのお米作りを支えています。
だから、「農家の嫁」というより律子さんは「律子さん」だな、と。律子さんの人柄そのものが生き方、働き方に現れている。誰も取って代わることはできない、オンリーワンのもの。これこそが、濱田ファームのこだわりです。
そして、ここまでこれたのは、直売へのこだわり(前回記事より)はもちろんのこと、大変なことを楽しみながら夫婦二人三脚で乗り越えてきたから。
皆さんといると、ほっこり心が温まる。
笑顔と愛に溢れる濱田ファームの魅力は、その生き方=働き方にあるのかもしれません。
【濱田ファームの情報はこちら】
公式HP:https://www.hamadafarm.com
Facebook:https://www.facebook.com/tanbomaster/
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