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「4毛作だってできる」島時間に流されない“攻め”な農業(喜界島のサトウキビ農家・勝本純子さん)

奄美群島の島のひとつ、喜界島。
約700戸の農家のほとんどが、この島の経済を支える基幹作物であるサトウキビを栽培しています。サトウキビは、国の補助金に大きく支えられている作物です。

補助金に頼ることなく農業を自立させるためにはどうすればいいか?喜界島含め、サトウキビ生産地が抱える切実な問いです。
 
これに、サトウキビ+和牛畜産法人というアンサーを出した農政振興のヒーローがいました。別記事で取り上げた、畜産農家の栄常光(さかえ つねてる)さんです。

島にしっかり根をはりながら、新しい風も積極的に取り入れ周りの人々に影響を与えてきた栄さん。
実は、栄さんの精神を受け継ぎながら、サトウキビ+園芸3毛作、すなわち『4毛作』という衝撃のアンサーを見出した直弟子がいるのです。

「島のヒーロー」農業一筋な直弟子

その直弟子というのが、勝本純子さん。
進学で一度島を出、博多で都市生活を送っていましたが、お父さんが亡くなり家業の農家を継ぐため、島にUターン。現在は、母の徳江さんと2人、時々親戚や知り合いの手を借りながらもバリバリ農業をしています。

そんな女性パワーで頑張る勝本家。育てている作物はとっさに思い出せないほど多数!
「メインはサトウキビだけど、他にも色々育てているよ。ブロッコリーに、カボチャ、バレイショにキャベツとか……。あと何があったかなあ(笑)」
 
ブロッコリーやかぼちゃなどは、いわゆる「園芸作物」に分類されます。サトウキビだけの単品作物が当たり前だった喜界島でも、農協の働きがきっかけで近年広く育てられるようになりました。冬でもあたたかい喜界島では、これらの作物が良く育つので、サトウキビにあまり手がかからない時期にも園芸作物を育てることができるのです。
「最近は、メインのサトウキビよりも、もっぱらブロッコリーがおもしろい(笑)」
と、サブの作物で楽しみを感じているスタンスが印象的でした。

4毛作だってできる

並行して育てられている作物たち。それらは、必ずしも異なる畑を与えられているわけではありません。レタスの隣に、小松菜が植えられていたりもします。
また、勝本家は島のあちこちにたくさんの畑を手がけているため、場所によって土の質がまったく異なるのだそう。

「だから、土質とそれぞれの作物にどう影響するかは徹底的に勉強してる

両手で数えても足りないほど多くの種類を島のあちこちで育てられているのは、その畑に、いつ、何を植えるかを見極める純子さんの技量があるから。
 
そして一番印象的だったのはこの言葉。
「サトウキビ(の周期)をベースにすれば、4毛作だってできる」
つまり、サトウキビ→園芸三毛作→サトウキビ……と、サトウキビと園芸作物を交互に育てることによって、効率的に作物を収穫できるのです。しかも、ゴマ、ブロッコリー、カボチャなどの3種の園芸作物で。

※サトウキビの周期(1年半〜2年)をベースとしており、通常の1年以内に全ての収穫を終える二毛作・三毛作等とは異なります。

土質のバラバラな沢山の畑で、同じく多種類の作物を自由自在に手がける勝本家だからこそとも思える印象的な言葉です。
その土地にどんな作物が適し、またどんな組み合わせができるかは誰にもわかりません。それは、その土地にあった品目を自分で探さなければいけないということ。それを度重なる試作の上で、見つけつつある純子さんはオンリーワンでありパイオニアといえるかもしれません。

「あえて忙しい」が「楽しい」

そんな多動的な農業スタイルの純子さんの1日は決してのんびりはしていません。
猛スピードでサトウキビの収穫を終わらせると、すぐさま車でブロッコリー畑に移動。定めたタイムリミットに間に合わせるように収穫を終えると、次は出荷市場に移動。その移動中にも、別の場所にある、カボチャやキャベツといった畑を確認するという効率ぶり。

「正直(今の仕事量は)忙しいと思う。それでも、やってみたいと思った作物があればまずはやってみる。だって全部自分次第、できないことなんてないから。」
「何度も試作したうえでやっとうまく育ったり、そういうところが農業は楽しい。それも全部含めると、忙しい方が楽しいじゃん」
軽トラックを運転しながらそう語る純子さんの横顔は、とても生き生きと楽しそうでした。

喜界島。うららかな空に見守られ、どこまでも広がる海に抱かれた、豊かな緑の島。穏やかで、ゆっくりと流れる島時間のなかで忙しく働く純子さんの放つ雰囲気はどこか異彩です。
効率的で、キビキビと一見有意義なワーク・スタイルは、都会のオフィスだけにあるような気がします。しかし、生み出される価値は、職種や場所によって異なるものなのでしょうか?
穏やかな島時間のなか、無駄のない働きぶりの良い純子さんを前にすると、そんな奇妙な先入観はなくなってしまうかもしれません。すべては、自分の納得のいく仕事を遂行するため。島の未来のホープは、さらなるおもしろさと高みを目指し、進みつづけます。

書き手:楠真奈美(食べタイ編集部、早稲田大学3年)

<ご感想・ご連絡はこちらまで>

喜界島ファームステイ推進協議会 事務局
地域おこし協力隊 木下 敦博(きのした あつひろ)
✉ kikaijima.fsp@gmail.com

※この記事は2018年4月に作成されたものです


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