人情の厚い病院2
当院の方針はシンプルイズベスト。
最近では医療機関にかかることを嫌がる人が増えています。
私はコメディカルの資格を持っていることから、医療機関や福祉施設での経験が主たるものですが、私はアラサーの頃から「治療となれば即薬物療法」「診察すると恐怖心を煽られる」という医療のスタンスに違和感を持っていました。
当院では確かに薬物療法を施していましたが、お金儲けよりも患者様からの信頼を重要視していました。
「この病院の先生なら安心して診療を受けられる」
それなので、当時は外来も病棟も混んでいて、病院の売り上げも良かったのです。
シンプルだから大らか
この病院に入職した当初、人の揚げ足取りをするスタッフがいなくて、とても安心しました。
…というか、前の職場がどれだけ異常だったのかを思い知らされた位でした。
その前の職場には、一番の権力を握っているお局がいて、人が作成した献立表を細かくチェックしては「月曜日と火曜日と水曜日と金曜日と土曜日の献立に青菜類が使われていて同じような献立ばかり。酷い献立!」というように理不尽ないちゃもんを付けられていました。
…というと「お局に言い返せばいいじゃないか?」と意見があるでしょう。
このような人の対処方法について話をすると長くなるので割愛しますが、このような理不尽ないちゃもんを付けるスタッフは、当院には誰一人いませんでした。
病棟に行けば、患者様の食事がキザミ食で見た目がいまいちであろうと、「今日の食事、美味しそうだね」と看護師が患者様に声をかけて食事を配膳します。
「ほら、このポテトサラダ見てごらん。緑と黄色と赤で色が綺麗だね」
食事がキザミ食であっても、このように食事摂取を促すように声掛けします。
(前の職場だったら糞みそのボロカスなんだけどなー)
前の職場では、厨房にとって無理な業務でさえも弾圧をかけて強制させていたのに、当院では無理なオーダーはしません。
一度栄養課に伺い、可能であればオーダーし、無理なのであれば強要しません。
…というか、それが普通なんですけどね。。。
献立についても貶す人はいませんでした。
「今週〇曜日に麺類が出るんだって?楽しみだな~」
みたいな感じで声をかけてくれます。
栄養ケアマネジメントに関する書類についてもそうです。
日付の間違いの指摘はあったとしても、そのプランの内容にいちゃもんを付けるスタッフは誰一人いませんでした。
本当に気楽そのものです。
診療報酬が関わる業務は、何かと監査時のチェックが厳しいものですが、これをいちいち真面目にやっていたら、仕事のモチベーションが下がる一方です。
細かくて面倒で監査が関わる部分については、書面だけはきっちり残しておくという、そのスタンスはシンプルイズベスト。
無理な背伸びをすると事故やトラブルに繋がるので、敢えて必要以上に業務を細かくしない。
その代わり、患者様へのケアに重点を置いていました。
微笑ましいナースステーション
特に栄養課のスタッフは、ナースステーションに足を運ぶのが怖いという人が少なくありません。
委託会社の栄養士に食事箋の対応を依頼すると、おどおどした態度でナースステーションに来るのですが、恐らく「看護師=恐い」というイメージがあるからでしょう。
委託会社のスタッフ間では「ここの看護師恐い」との会話があったのですが、「そんなことないし、優しいけどなぁ」と思いました。
病棟に訪問すれば気さくに話しかけてくれるし、看護師同士の会話も微笑ましいのです。
笑いながら業務を行っているのですが、それは誰かの悪口や悪ふざけによって笑っているのではなく、その場の雰囲気が大らかなんです。
笑いは多いけど、チャラチャラしたスタッフは誰一人いませんでした。
患者様の嗜好調査や院内感染のラウンドで病棟を伺った時は、快く対応してくれていました。
部署間の対立がない
病院や施設で働くと、よくあるのが部署間の対立です。
これまでの職場は部署間の対立が酷い職場でした。
お互いがお互いの粗探しをやっているようなもの。
そんな職場で「飲み会をやって親睦を図りましょう」と言っても、職員間の溝は深まるだけです。
でも、この病院には部署間の対立がなかったんですよ。
何故、このように対立が起こっていないのかというと、院長や事務長といったトップに立つ人間が私情で好き嫌いを判断しないところにあったのです。
ある部署はえこひいきして、ある部署は叩き潰すということは一切しませんでしたね。
この病院は当時、年末に忘年会を行っていました。
会社の飲み会というとブラック企業の飲み会のように、大勢の前で恥をかかされることが多いのですが、お酒の場でありながら、そんな物騒な場ではありませんでした。
私は一人部署の立場でしたが、他の部署のスタッフと和気藹々と話していましたし、温和な雰囲気でした。
勿論、従業員に恥をかかせるような催しものなんか行っていません。
食べて、ちょっとしたゲームの後に、事務長から各部署へのエールを送ります。
事務長の覇気のある声で各部署に「〇〇課、バンザーイ!」と。
どの部署に対しても平等です。
なので、ある部署がある部署にマウントすることなどありませんでした。
部署間の対立があれば、それだけでもストレスになるし、会議の場でいくら建設的な意見を述べても反映されません。
一部の権力者が自分勝手な振る舞いをし、自分の意見を押し通すだけの世界は、滅びの道に進むだけ…と、最近の医療の動向を見て感じることです。
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