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病院食はダイエット食か?低栄養食か?

このタイトルの感じ方は人それぞれかと思いますが、「病院食は低栄養食」って聞くとショックかもしれません。

でも、これには諸事情があります。

元々、食料構成表に基づき、食品群ごとに決められた使用量に基づいて献立作成し、栄養計算もなされています。

今では、管理栄養士による栄養管理が行われ、栄養管理計画書に基づく栄養補給法にて管理がなされているという点で見ると、栄養管理がしっかりなされていると言えます。


病院で受ける医療は本当に高度か?

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患者様への医療的ケアのレベルは病院によってまちまちであり、NST(栄養サポートチーム)による栄養管理を徹底している医療機関もあれば、栄養管理は二の次というところもあります。

病院を選ぶ基準は何も食事のことばかりではありませんが、お客様となる患者様は自分が信頼できる病院を選びたいものです。

大規模な病院であれば様々な医療サポートチームがあらゆる角度から徹底した医療管理を行っているというイメージが強いでしょう。

NSTの他にも褥瘡管理やリハ栄養、癌サポートチーム、終末期ケア等、これらと併せ感染症対策、身体拘束抑制、リスクマネジメント、個人情報の保護、クレーム対応といったこともこなさなければならないので、とにかく業務が煩雑です。

しかし、今は情報社会の時代。

ネットを通じて病院について疑念を持つような情報が流れることもあります。


病院のお世話になることは、本当に身体のためなのか?

この答えは「NO」と答える人は、今現在決して少ないとは言えません。

特に医療設備が充実した大規模の病院に見られる傾向は機械的であること。

これは「正確」だから機械的ではありません。


診療報酬の関係からも、入院退院の回転を速めれば、それだけ病院の収入アップにも繋がります。

しかし、現実は、ベルトコンベア上でラインのように工業的に患者様のケアにあたっているという声も何等かの形で入手します。

また、学会論文のための資料収集のために、手術に積極的な患者様を優先的に受け入れ、病院の権威性の保持に努めるケースもあります。

実際、私が過去に働いたことのある病院でも、診療報酬に依存することが病院運営の軸となっていました。

病院の経営を守るには利益なくして成り立たないですが、金銭第一を貫いていては、やがて患者様からの信頼を失せるのではないかと危惧するところです。


病院食の変化

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病院や施設の栄養部門は、30年前と比べると大きく進化を遂げています。

栄養士というと、まだまだ「給食のおばちゃん」のイメージが拭いきれていませんが、以前に比べれば、食や栄養の重要性がかなり認められるようになってきました。

でも、昭和時代は「給食のおばちゃん」はアイドルのような存在でしたよ!


かつて、この業界は至ってアナログ世界でした。

今ではスチームコンベクションオーブンを使用することが当たり前ですが、以前は調理となれば必ず回転釜が必要である時代でした。

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「脱回転釜」を唱える人もいますが、私は個人的に回転釜は重宝すると考えています。

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焼き料理も「サラマンダー式」を使っていた時代であり、機種によっては火加減が難しいものもありました。

網に魚がこびりついて、トングでひっくり返すと崩れてしまうこともしばしばあります。

このアナログ世界は、厨房ばかりではなく、栄養にかかる書類作成においても同様でした。

書類作成も手書きで行っていたので、全ての栄養素を手計算で算出してたら、何度夜が明けるか分からないほどです。

でも、今は給食管理に係る書類は栄養計算を用いることが当たり前となっています。

栄養部門の業務もかなり細かくなり、無駄に時間がかかるだけの給食管理業務をシステム化及び電算化しないと、業務が間に合わなくなることから、今ではこれだけの便利を求められています。


給食部門はいつから業務委託化されたのか?

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1986年3月に厚生省より「病院における給食業務一部委託について」の通達が出され、1993年2月の医療法施行規則の改正により病院給食の外部委託が認可されたことによって、病院や特別養護老人施設、老人保健施設などの給食部門が次々と業務委託化されました。

今現在では給食部門が委託化されている事業所が殆どを占めています。

委託化するには事業所側の事情があるからでしょう。

介護保険導入前までは、給食部門は今と違って、お金も手間もかけながら食事を提供していました。

当然、患者様に貧相な食事を提供することは失礼にあたります。

しかし、2005年度の介護保険制度の改定、2006年度の診療報酬制度の改定、適温適時加算が廃止されることによって、栄養部門の収入も激減してしまいました。

この当時も、かなりの病院や施設では業務委託化が進んでいましたが、これを機に更に業務委託化が加速しました。

栄養ケアマネジメントがハードであるところと、給食部門を直営にすると事業所の予算のやり繰りが大変というのもあるのでしょうが…

この、栄養部門の収入の激減は、のちに経済学者によって「減らし過ぎ」との指摘があったそうです。

これまで、数々の食中毒事件をはじめとする食にまつわる事件が頻発していました。

食材費も高騰が続き、給食部門における金銭管理は確かに厳しいものとなりました。


給食委託会社のとんでもない裏事情

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給食委託会社はあくまでも企業。

当然、利益なくして会社を運営することが出来ません。

給食委託会社の利益の大元は、病院や施設等の事業所から支払われる管理費となります。

委託会社に支払う管理費や給食費は、事業所と給食委託会社のなかで取り交わしをして決定されます。

管理費は固定費、給食費は変動費に配当されますが、売り上げを左右するのは変動費である給食費がこれに該当します。

しかし、今は食材費が高騰している時代です。

また、病院や施設側としてみては、出来るだけコストを抑えたいという本音があります。が、これは、栄養部門を重要視しているかどうかで、この判断は大きく変わると考えられます。

ここで委託会社の利益を増やすには、食材料費をどのように黒字に運ぶのかがポイントとなります。

当然食材費の管理は給食委託会社が行っています。

そこで私が見た光景は、委託会社の栄養士が休憩時間を返上して、冷凍庫や倉庫にある食材を計りで測っては袋にまとめるという作業をしていたところでした。

「休憩、ちゃんと取ったら?」と言ったら、せせら笑われたんですね…

しかも、献立表には栄養士が手書きで書いた献立ごとの食材の指示量が記されています。

これを見て「おや?」と思ったことが幾度かありました。

例えば、副菜(小鉢)に使う材料の総使用量が80gと献立に書かれているのに、その使用量が50g程度(酷い場合は25gの時もありました)に訂正されています。

冷奴(または湯豆腐)の使用量は、こちらで献立を確認した時点では一人当たり100gなのに、実際提供している量は一人当たり50g。

これでは患者様が栄養失調になるでしょ?

栄養士に注意したことがありました。

その返答は…

「そうですね、分かってます」

とのこと。。。

「分かっているならやるんじゃない!」

と言ったのですが、この時、委託会社の栄養士は黙っていました。


しかし、委託会社のSV(スーパーバイザー)から後々言い訳をされたのです。

「うちの栄養士は会社に貢献している」と。

この貧相な食事の件を何とかならないのか説得したことがありましたが、委託会社は、何かと金銭管理に頭をかかえているとのこと。


管理栄養士が配属されている事業所の給食は、当然栄養計算がなされているし、食料構成表に基づいて、食品分類と栄養素量を考慮したものとなっています。

元の献立が本来提供されるべき量で作られる筈なのに、委託会社側で勝手に量を減らして食事を提供するという不正が起こっています。

給食委託会社が入っている事業所では、委託会社の食事が貧相で頭を悩ませている管理栄養士は少なくありません。

こちらが委託会社にいくら注意しても、聞く耳持たずなのです。

病院の規模によって売店の有無がありますが、売店のある病院では動ける患者様は売店から購入した食品で空腹を埋め合わせたり、売店がなければ家族に持ち込んでもらうという患者様もいます。(本来芳しくありませんが)


このような委託会社の不正行為のしわ寄せを受けるのは患者様です。

入院生活をされている患者様は、身体を動かす機会がありません。

身体を動かすことが出来ない患者様もいますが、比較的自立できる人にとっては、入院生活は退屈なものです。

「動かない」「食事量が少ない」

これが日々積もれば、筋蛋白が減ってしまいますし、食事量が少ないということは、ただでさえ患者様の多くに低栄養が見られる上に、それに輪をかけて低栄養状態を進行させてしまいます。

それは栄養補助食品を活用していてもです。

栄養補助食品を活用していても、給食から提供される食事が減らされていれば、もちろん栄養も減ってしまいます。

この委託会社の栄養士の行動は委託会社にとってはメリット、且つ、栄養士にとってもメリットではあるものの、患者様に対してこれだけのしわ寄せを与えているのです。


食事の良しあしは管理者に左右される

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食事が貧相…だから管理栄養士の管理能力がない…

この問題は管理栄養士一人の力で解決出来るものではありません。

病院や施設の管理栄養士、給食委託会社のスタッフは別の会社の人間同士であり、それぞれ違ったルールのもとで業務を遂行しています。

なので、病院や施設の管理栄養士、給食委託会社はあくまでも対等なのです。(中にはマウントする管理栄養士もいますが。。。)

それなので、管理栄養士は委託会社のスタッフの上司ではないのです。

当然、厨房現場で働いているスタッフは、給食委託会社の運営方針のもとで動いています。

管理栄養士から言われたことが会社の方針にそぐわないのであれば、スルーされます。

つまり、管理栄養士は事業所と給食委託会社の関係を調整するパイプ役を務めるのです。

お互いの不利がないように、医療スタッフの一員として動くため、思うようにならないことが沢山あります。

しかも、実際食事を作っているのは委託会社のスタッフであり、食事が不味いという問題は、管理栄養士を責めても何のメリットもないのです。

食事の質の良しあしは管理栄養士によって左右されるという人もいますが、管理栄養士は経営者ではないのです。


その食事の良しあしは、管理者の度量に左右されるといっても過言ではないでしょう。

そもそも、管理栄養士は雇われの身であり、事業所の運営方針を決定する権利はありません。

給食委託会社と金銭面での商談をするのも管理栄養士ではないのです。

事業所の管理者も色々なタイプがいるので一概ではありませんが、自分の我儘で運営して事業所を食い物にしているような運営をしている管理者には、委託会社のこのような不正行為を放置している傾向が見られます。

「患者様はどうでもいいから、自分の懐が潤えばそれで良い」

このような運営方針が粗末な食事の提供とともに、機械的なケアにも繋がり、患者様からの信頼を徐々に失っているのではないのでしょうか?


結局病院は信じた方が良いのか?

これは個人の判断となります。

「これは明らかに金儲けの匂いがする」と思ったら、フェードアウトを考えてみても良いかもしれません。

出来ることなら、病院のお世話にならない身体作りをすることが、最終的に自分の身を守ることにも繋がります。

人の身体は薬やアルコールによって作られるものではありません。

食事によって作られますし、食品の選び方によって健康状態が左右されます。

普段から身体に良いものを摂り入れることが、病院のお世話にならない身体作りにも繋がるし、それは人が本来持っている自然治癒力を導き出すことになるのです。

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