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ダ・ヴィンチ的思考をMVPプロセス/リードユーザーマーケティングに活かす

前回前々回と2回に渡ってマッキンゼーレポートから機械・FA業界の市場トレンドを読み解きました。

①Shifting growth patterns(成長パターンのシフト)
・ソフトウェア、アプリプロバイダーの著しい成長
・アジア圏の台頭(アジア内サプライチェーンの可能性)  
②Increased pace of degitization(デジタイゼーションのペースの向上)
・特筆すべき「オープンオートメーション」という概念

この様に市場自体が大きく変わっていっています。
その中で大切なのは顧客との共創co-creationの考え方です。顧客に自分たちの進むべき道を理解してもらい、一緒に進むパートナーとして共に、価値を生み出していく。その方向性のために何をやっていくべきか。2つ考えました。
「MVPの導入」と「リードユーザーの活用」です。


①MVP(Minimum Viable Product)という概念を導入する

MVPとは、顧客に価値を提供できる最小限の製品やそれを用いたアプローチのことです。
現在のトレンドであるデジタイゼーションは、顧客と共に製品やソリューションを考えていくのが当たり前で、つまりこのMVPプロセスに従った販売を行わなければなりません。今までの完璧な機能を持つ製品=正解だった価値観とは大きく異なります。そのため、現に前線の営業の方々はどうセールスしていくべきかを日々悩んでいます。具体的な物がないので、お客様(特に重要顧客であればあるほど)に提案するのを躊躇ってしまいます。
この際に重要なのは、企業として目指すコンセプトやアイディアを明確にし、それを現場レベルでそれぞれが自分の言葉に落とし込むことです。
僕は商品の企画や販売施策を考えていく立場として、このコンセプトとアイディアを営業の方々がどういったストーリーで伝えていくべきかを考えていきたいと思います。やはり営業の方にもこれまでに培われてきた考えを持って行動し、結果を残してきたという1つの「線・ライン」があります。そのラインを決して無視してはいけません。それまでのそれぞれの文脈を新たなMVPプロセスの売り方としてきちんと引き継ぐことができるようなサポートにつながるマーケティングをしていきたいです。


②リードユーザーを活用したマーケティングを行う

上記のMVPを用いたビジネスモデルを設計していく上で、今までのものを作る側の発想のみで作っていくことには限界があります。
そのため、「どの顧客」と共にMVPプロセスに従って製品やソリューションを作っていくべきか。つまり「どの顧客」とサービスをco-creation(共創)して、ユーザーイノベーションを起こしていくかは重要な観点です。僕達にとっての顧客が「本質的に」何を求めているのか。これを明確にし、それを実現する。その際、僕はこのリードユーザーという存在が1つのカギになってくると思います。
マーケティング学会の研究によると、リードユーザーの条件は

・市場動向の先端にいること、先端的なニーズに気づいている
・課題を解決すると高い利益を得られるが、解決方法を発見できていない

の2つです。

イノベーター理論でいうイノベーターに当たると思います。
先端的なニーズに気づき、それを解決したいと思っている志向があるからこそ、ものづくり側の視点にはない新たな発見が生まれます。
このリードユーザーを明確にし、そのリードユーザーと共にコンセプトやアイディアを生み出し、それらを実現するための要素技術の組み合わせを創出していく。今後はそういったユーザーイノベーションを起こしていくことが更なる価値を生み出すことにつながるはずです。

とにかくまずやるべきは、今のステークホルダーの中にいるリードユーザーを明確にすることです。そのために、今までの商品分析からユーザーの調査まで、データ分析が必要不可欠なので、データをつぶさに洗い出し、現場に足を運んでコミュニケーションを取っていきます。
これには企業内に存在するリードユーザーも含めて調査すべきです。

リードユーザーと共にMVPプロセスを行う上で活きるレオナルド・ダ・ヴィンチ的思考

しかし、リードユーザーと共に製品を作っていく上で乗り越えるべき壁があります。それはそのリードユーザーが持つ情報の粘着性です。それぞれ他者が経験していない特殊な経験に基づく情報を持っており、またその情報を言語化できていないことが多いです。長嶋茂雄さんが指導の時によく仰っていたという「スーッと」「キュッ」「バーン」みたいなアレです。

その個人特有の情報をいかに双方が理解できる共通言語にしてコミュニケーションを取れるかが重要です。
個人的に参考にすべきは、レオナルド・ダ・ヴィンチの具体と抽象を行き来する、一見関係のないもの同士の共通要素を見つけ出し結びつける能力だと思っています。双方が理解できる様な表現を考えていくためにはこの能力が活きてくると思います。

ダヴィンチは様々な領域を横断的に観察する中で、繰り返し出現するパターンを見つけていっていました。そして、アナロジーによって理論を構築していました。例えば水の渦と乱気流とのアナロジーは、鳥の飛翔を研究する手がかりとなりました。鳥の動きを理解するためにはまず風を理解する必要があり、空は水の動きから解明できると考えていたのです。

リードユーザーと共にコンセプトやアイディアを生み出すだけでなく、リードユーザーを用いたインフルエンサーマーケティング、アンバサダーマーケティング等その先にさらにやるべきことはたくさんあると思うので、引き続き考えて実行していきたいです。


また、このダヴィンチの思考法は世界でビジネスを行っていく上でも非常に大切だと思っています。

日本に限らず、各国の文化や表現方法、価値観があり、それまでに歩まれてきた特有の「ライン」があります。その大きな流れを踏まえ同じ目線で事象を見つめる、そしてその延長線を作っていけるようなコラボレーションを生み出していくには、ダヴィンチのような様々な領域を超えてつながりを見出していく「共通言語」を明確にすることが大切だと思います。
これはいわゆる異文化理解でもありますが、ここでいう異文化や他者、理解とはそもそも何なのか。根本的に意味を考える必要があると思っています。

それについて、以前読んだこの本が1つのヒントになるので、後日詳しくまとめます。

そのため、これはアジアの多様な文化に即した戦略を考えるためにもつながりますが、文化人類学や芸術、考古学といった文化的素養は必須だと思います。その習得は継続してやっていきます。

パナソニックだからこそ「ものづくり」を進化させられるはず**

今、ものを作る会社そしてものづくりを支えるB2B事業に携わることになり、その技術力やインパクトを非常に魅力的に感じています。何より本当に多様な人々が関わって社会が成り立っていることを実感できるため、ワクワク感が大きいです。
僕は、そんな職人の優れた技術力をきちんと次世代に残していきたい。残していくべきです。そして、みんなでより良い社会を作っていきたい。
しかし、機械・FA産業市場はアジアの存在感やデジタイゼーションにより、大きく変わる時を迎えています。そういった中で、ものを作るメーカーは今回僕が仮説として立てたMVPを用いたビジネスモデルやリードユーザーマーケティングの様な変革が必要です。

そういった状況でパナソニックとして何ができるのか。
ものづくりを次世代に伝承していくこと、これができるのは、長年パートナーとして寄り添い、課題を共有し解決し、そして今後の時代の流れを一緒に乗り越えていく覚悟を持ったパナソニックだからこそできると思っています。大変だとは十分分かっていますが、僕たちがやらなければいけないです。こういった視点を忘れずに仕事に取り組んでいきます。

しかし、僕自身がそこに貢献していくにはまだまだ知識も経験も実力もありません。だからこそ、まずは社内にいる優秀な人たちの力を借りたい。もっと社内にあるナレッジに触れたい。そのための施策の一つとして今取り組んでいるのが、社内ナレッジコミュニティ「松下村塾(まつしたむらじゅく)」の運営です。

これは、会社としてより質の高いコラボレーションを生むために確実に機能すると信じている取り組みでもあり、僕自身が考える、より良い社会を「皆」で作っていくためには欠かすことのできないものだと思っています。

次回はその松下村塾について、コミュニティとして描くゴールなどをまとめます。

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