見出し画像

自動車業界:CAFE規制について調べたら、当面はEVではなくHVが勝ち筋?

今回は自動車業界に大きな影響を与えているCAFE規制について改めてまとめます。
というのも、僕達のB2B事業は自動車業界のいわゆるTier1やTier2(ラグビーじゃないです)が大きいお客さんの1つになってきます。

Tier1とは:
完成車メーカーに直接部品を供給するメーカーのこと。Tier2はそのTier1に部品を供給する。

で、このメーカーたちは当然、完成車メーカーのニーズや市場特性を注視しなければいけません。そしてそれは、僕たちにとっても顧客の顧客“Customer’s target”であるので、しっかりトレンドをおさえようということで、今回は自動車業界のトレンドの一つについてまとめます。
今回取り上げる自動車業界の大きな流れは「いかに燃費の良い車を作るか」です。

その燃費の良い車で、僕たちがパッとイメージするのはEV、電気自動車です。
今まさに開催中の東京モーターショーでもEVやCASE、MaaSの話題が多く出ていますし、これからはほぼほぼ近未来的な電気自動車のようなガソリンを使わない車ばかりが出るんじゃないの?
僕たちの世代で、車にあまり興味がない人の感覚はこんなものです。

ただ、そんなにすぐ今のガソリン車がEVに取って変わるのかというとそうでもなさそうで。
こんな記事も出ていました。

自動車メーカーを襲うCAFE規制

画像1

じゃ、そもそも各メーカーはなぜこんなに燃費の良し悪しに躍起になっているのか。
当然環境問題が背景にあるのですが、CAFE規制というのが各メーカーにとって大きな課題となっています。

CAFE規制とは:
Corporate Average Fuel Efficiencyの略称。
自動車の燃費規制のことで、車種別ではなくメーカー全体で出荷台数を加味した平均燃費(過重調和平均燃費)を算出し、規制をかける方式。(罰則付き)つまり、極端な話このCAFE規制だけで言えば、メーカーは何か燃費のとてつもなく優れた車種さえあれば、その他の車種をカバーできちゃうってことです。
欧州先行ですが、いずれ世界も似たような規制ルールに落ち着くと予想されています。日本でも2020年度燃費基準に採用されることが決まっています。

で、この2020年の95グラム規制がなかなかに難しそうで。上の記事でも紹介されていますが、達成できそうなのが、2つの動力源を持ち合わせたHV車(ハイブリッド車、低燃費車)の割合が4割近くを占めているトヨタだけなんです。つまりこのままだと他メーカーは罰則をくらってしまう可能性があります。

そもそも電気自動車って?

このCAFE規制を乗り越えるために必要なのが、先ほど挙げたHV車やEV車等のガソリンだけで動かない=新たな動力源を持った車です。つまり電気自動車ですね。で、この電気自動車の定義に関して、トヨタの寺師副社長がとてもわかりやすい説明をしてくれていたので、引用します。


画像2

HVもPHVもEVも燃料電池車(FCV)も全て、モーター、バッテリー、パワーコントロールの技術が共通して入っている。だから、全て広義での電気自動車なのです。その上で、何がついているかによって分かれています。(トヨタ資料より)

つまり、どれだけ電気で走ることができるか(どれだけ電池の量が積んであるか)によって種類が分かれていて、その中で、いわゆるEVは電池のみで走るというイメージです。電池の量が多い順にEV→PHV→HVとイメージすると分かりやすいです。
ちなみに、燃料電池は自分で電気を作るから、水素さえ積んでおけばオッケーって感じですね。
要するに環境規制の影響を受けている自動車メーカーにとって、理想はガソリンを使っていない(ゼロエミッション)EVやFCVであり、そこから電池とガソリンの割合によってPHVとか種類が分かれ、燃費削減率も減っていくのです。

(ただ、このEV=ゼロエミッションとする考え方に関しても議論が色々あり、その電池を作るまでや発電に必要なCO2排出量などの環境汚染を無視して良いのかという意見もあり、中々結論は長引きそうな印象。)

思ったより浸透していないEVと方針転換してきた中国

じゃ、この環境規制にとって理想であるEVの具体的な普及率ってどうなっているのかというと、
2018年に限って言えば、新車の販売台数が8600万台に対して、EV(BEV)は急激に伸びているとは言え126万台、つまり、約1%にしかならないのです。(世界有数のEVメーカーである日産ですら、EVの割合が1%程度なので、あまり功を奏していません。)

画像3

画像4

なので、メーカーにとってどんなに理想的な車だったとしても、そもそも普及してないから、今すぐにCAFE規制への対抗策とはなりません。
つまり、売れている車の環境負荷を低減しない限りこの燃費規制は達成できないのです。

それに加えて、これまでかなりEVやPHVなど「NEV(新エネルギー車)」優遇措置を取ってきた、中国の方針転換があって、HVにも優遇を取りそうなのです
中国市場は現在、全世界の30%近くを占めているので、当然その影響は大きいです。
元々、中国政府は2012年から補助金の支給を通じて電気自動車(EV)、プラグインハイブリット(PHV)を中心とするNEVシフトを加速させてきました。(HVはNEV政策の優遇対象から外されてました)

NEV生産を促すNEVシフトに加えて、罰則付きの燃費規制であるCAFC規制(さっきのCAFE規制と同じの)を組み合わせた「ダブルクレジット政策」を行ってきました。ただ、政府の意図とは異なり、基準を達成できている中国車メーカーは少なく(規制対象企業のうち約5割が未達成)、彼らは変わらず燃費の悪い車を作り続けているようです。そこで、7月の改正案では、燃費を算出する際にNEVを除外することに加え、今までガソリン車と見なしていたHV車を「低燃費車」として優遇を取る方針を決めました。
(さらに、NEV車の販売台数はそこまで伸びておらず、125万台で、全販売台数2808万台のうちわずか4.45%で、さらに直近3ヶ月でも販売台数は下がっています。)

なので、燃費とNEVクレジット取引を紐づけることによって、従来のような燃費を下げるためのNEV生産が若干抑制され、その分HVへのシフトなどICE車(内燃機関車)の燃費向上に力が入れられることが予想されます。

現実的な勝ち筋はHV車?

確かにEVに全てを取って代わることができたら、理想的です。ただそこの現実は冷静に見るべきなのかなと思います。今すぐ環境を改善するためには使用者にとって利便性が高くて価格も比較的安いHVしかないという説も十分納得できます。

いずれにせよ世の中の大きな流れとして、環境規制は避けられません。ただ大きくメディアとかで報じられている程、すぐにEVに取って代わることもなさそうです。だからこそ、中国など各国も低燃費車であるHV優遇に舵を切り始めているのかもしれません。

ただ、今回の東京モーターショーのトヨタブースのように、東京オリンピックで使われる予定のEV小型バス「e-Palette」や、「ただ移動するだけの乗り物」から変化していくという遠い?未来であるCASEなどは、今後のビジョンとして必ず把握しておく必要があります。なので、そういった長期的な視点も同時にきちんと押さえていきたいですね



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?