歌と、ラムネ

予報通り、珍しく東京でも降雪が観測された日。わたしは金沢文庫から京急線に乗り込んだ。もちろんBGMは、くるり。赤い電車に乗っかって、冷えた手をさすりながら、お姉さんの後に続いて空席を探す。ギターケースを抱えた男性と、クーラーボックスを足元に置いた男性の間にスペースがあった。前を歩くお姉さんはスルーして行ってしまったので、遠慮なく私は座らせていただくことにした。シートに腰を落とすと、途端に、左隣からはロックンロールが漏れ聞こえ、右隣はなんだか魚臭い。なるほど、とマフラーの下で思わず笑ってしまった。

赤い電車を見ると心が安らぐのは、小さい頃の記憶があるからだろう。おじいちゃんおばあちゃんが住んでいたのは、京急線沿いの下町だった。家族で2人を訪ねて行くときはほぼ車移動だったので、自分が赤い電車に乗ることは滅多になかったけれど、川と、神社と、公園と、赤い電車のある風景を思い出すと、やさしい気持ちになる。おじいちゃんと一緒にお散歩に行くと、帰り道に駄菓子屋でよくラムネを買ってもらっていたらしい。私は残念ながら覚えていなかったけど、のちに母からその話を聞いて、ラムネがますます好きなお菓子になった。神社の恵比寿様は相変わらずお腹を出しているのだろうか。誰か腹巻きでも届けてくれてたらいいな。

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