質問一つせず取材を終えた外国人記者
祖国解放戦争(朝鮮戦争)たけなわのある日、訪朝中のある外国人記者が最高司令部を訪れ、金日成主席との会見を求めた。アメリカ軍の大規模「新攻勢」と関連して、今後の戦争の見通しはどうか、これが彼の知りたいことであった。
主席に取り次いだ幹部が戻って来て、「申し訳ありませんが、しばらくお待ちください」と言った。
記者は、さもありなんとうなずいた。それには、主席がいかに多忙な身であるか十分理解しているという意味が込められていた。
しばらくして、われ知らず強まる緊張をほぐそうと努めながら、案内された部屋へ足を踏み入れた記者は、思いがけない光景を目にした。
主席が広い室内の一隅に置かれた作戦台の前で何かを見ており、かたわらに立っている一人の兵士が主席になにか話していたのである。
案内人が、今、最高司令官同志は彼の学習状況を点検しているところですと耳打ちした。将軍が外国語の単語を毎日五つずつ覚えるよう宿題を出したにもかかわらず、それができなくて兵士は冷汗をかいている、ということであった。
記者は目を丸くした。学習の点検とはまた……。
「戦後の復興建設に備えて学校へ送る軍人たちを準備させる勉強なのです」
記者は驚きのあまり声も出なかった。ならば、将軍はすでに戦争の勝利を確信しているということではないか
こう考えた記者は、足音をしのばせて部屋を出た。案内人がいったいどうしたのかと聞くと、彼はこう答えた。
「もう結構です。わたしは取材を終えました。『信念の対決で勝利した朝鮮、金日成同志は戦後復興建設を設計中』 これがわたしの記事のタイトルです」
2021-04-13
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