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本に答えがあるかもしれない ~「うつ」と「心」のブックガイド Part2. うつと心の本 20年史/編集部(仕事文脈vol.13)

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Siriに話しかけさえすれば、天気予報や乗換方法を即座に知らせてくれる2018年。便利さや速さが求められる世の中で、話しかけても反応しない、読んでも答えを教えてくれない、めんどくさいメディア、本。だけど先日とある情報番組で、「健康寿命を延ばすには運動よりも食事よりも読書が大事」というAIの解析結果が紹介されていた。体に直接関係しそうなのは運動や食事なのに、本が長生きの秘訣になるなんて。じっくりと本に向き合う時間は、実は心の安定につながるのかも。「うつ」を患った時、本に助けられたという女性にその体験を寄せてもらうとともに、「うつ」や「心」の本が増え始めた20年前から現在に至るまでどんな本が話題になってきたのか調べてみました。

Part2. うつと心の本 20年史/編集部

「心の時代」がはじまる
1998~2002

 国内の自殺者数が3万人を超えた98年、今も読み継がれる「心」の本が多く出版されました。河合隼雄『こころの処方箋』は、やさしい語り口で「心」の不思議を解説しています。リチャード・カールソン『小さいことにくよくよするな!』は、アメリカ人心理療法士による自己啓発本で日本版も大ヒット。人気作家五木寛之が自らのうつ体験をつづったエッセイ『大河の一滴』も書籍年間売上第4位にランクインしています。00年代前半に入ってからは、一般人の壮絶な体験記に注目が集まります。大平光代『だから、あなたも生きぬいて』は、いじめから非行に走った著者が弁護士になるまでの奮闘をつづりベストセラーに。南条あや『卒業式まで死にません』はふつうの女子高生がリストカットや薬物中毒におちいる心境をポップに描き、一部で熱狂的な支持を集めました。瀬戸内寂聴『生きることば あなたへ』日野原重明『生きかた上手』など、年長者が人生の金言を散りばめたエッセイも多くの支持を獲得。
 SSRI(副作用が比較的弱い抗うつ剤)の発売が始まり、「うつは心の風邪」のキャッチコピーが広まったのもこの時代のことです。とはいえ、「うつ」が書籍のタイトルに使われることはまだ少なかったようです。

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