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【イ・ラン×いがらしみきお 往復書簡・登場作品紹介3】『哭声/コクソン』『はちどり』

韓国のアーティスト イ・ランと『ぼのぼの』の漫画家いがらしみきおによる往復書簡『何卒よろしくお願いいたします』。二人の手紙に登場するさまざまな映画や本をご紹介します!

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「我々の意識や思考がすべて神様の言葉ならば」
いがらしさん → ランさん

亡くなった友人に最後の別れの挨拶をするために、朝鮮の霊媒師「ムダン」に会いにいきたいというイ・ランさんの手紙を受け、いがらしさんはある韓国映画を連想します。

『哭声/コクソン』
(ナ・ホンジン監督、2016年、韓国)

ムダンというと、ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソンという映画に出て来る、ファン・ジョンミン演じるところの歌って踊る霊媒師を思い出します。お友だちを偲ぶイベントとして、ムダンに霊を呼び出してもらうなんて、それは素晴らしい。ぜひやってほしいです。(本文より)

韓国映画が大好きだといういがらしさん。ちょっとしたキーワードからすぐに映画のワンシーンが思い浮かぶのはさすがですよね…。ここから手紙の内容はいがらしさんが最近観たという韓国映画の話へ。

『はちどり』
(キム・ボラ監督、2020年、韓国)

私が韓国映画好きなのはランさんも知っていますが、この前、ようやく『はちどり』を観ました。…キム監督はインタビューで「主人公のウニは、あまり普遍的ではない女の子にしたかった」と言っていましたが、私から見ると、ウニは十分普遍的な女の子だと感じました。その普遍的な女の子の世界をちょっと視点をずらしたり、傾けたり、その「ちょっと」の感じがよかった。(本文より)

この映画の舞台は1994年の韓国。多少の違いはあるかもしれないけれど、韓国の子どもと日本の子どもは置かれている環境や悩みがなぜこんなにも似ているんだろうと映画を観ながら疑問を持ったといういがらしさん。言語や文化や歴史だけでなく、似ている部分の多くの部分はいつのまにか社会につくられてしまったものなのではないかと思考をめぐらせます。

では、この「1994年」という時代の韓国と日本は、一体どのような社会だったのでしょうか?

『はちどり』の終盤では、1994年に起きたソウルの聖水大橋の崩落事故が描かれます。この事故が韓国人のトラウマになっているというイ・ランさんの言葉を受け、いがらしさんは当時の日本社会をこう振り返ります。

「日本人のトラウマになっている事件はなんですか?」と聞かれたので、私は「阪神淡路大震災だろう」と答えましたが、この震災は1995年で、聖水大橋崩落事故の翌年に起きています。同じ年にオウム真理教のサリン事件もあったので、日本人のトラウマとして考えた場合、サリン事件の方をあげる人は多いかもしれない。つまり、1995年は、日本人のトラウマになってしまうような事件が二つあったんですね。(本文より)

そして、前者は日本人にボランティアの意識を芽生えさせ、後者は宗教に対する印象を悪くしたのではないかと分析しつつ、韓国の聖水大橋崩落事故が韓国の人にどのような影響を与えたのかという問いかけによって言葉を結びます。

聖水大橋の崩落事件は、韓国の人たちをどう変えたのでしょうか。(本文より)

この問いに対してイ・ランさんはどのような返事を書くのでしょうか?

続きが気になる方はぜひ書籍を手に取ってみてくださいね!

(椋本)

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