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成功する飲食店の3大初期設定


今回はこれから飲食店の開業を考えている方が最初に決めておくべき3つの初期設定業種・業態・コンセプト)と、その具体的な決め方や考え方についてご紹介していきたいと思います。

長年、飲食業界に携わってきた自身の経験を踏まえた上で、これらをきちんと決めずに始めたお店はどうなるかと申しますと…おそらく99%以上が一年以内に廃業するハメになるかと思います。

要するに奇跡的に運の良かった1%以外は基本的に失敗するということであり、この3つの基本設定について熟考しておくことは飲食店として成功するために必要不可欠な最初の関門と言えます。

① 業種について

開業を成功させるためには非常に多くのハードルを越えていかなければならないわけですが、その最初の第一ハードルがこの業種の選択です。

業種とは『何を売るか』ということ。
一般的には『○○屋』や『○○店』などと表現されるものが業種です。

主力となる料理のジャンルによって和食、洋食、中華料理などと大雑把に分類され、そこからさらにすし店やイタリア料理店やラーメン店などのように細かく分類されていきます。

ただ、飲食店の形は年々多様化しており、昔に比べると業種を一言で説明しにくいような場合もあります。ご参考までに総務省の統計項目になっている飲食店の業種一覧については以下の通りとなっております。

【飲食店の業種一覧】(※総務省の統計項目による)
・食堂、レストラン(専門料理店を除く)
・専門料理店
・日本料理店
・料亭
・中華料理店
・ラーメン店
・焼肉店
・その他の専門料理店
・そば、うどん店
・すし店
・酒場、ビヤホール
・バー、キャバレー、ナイトクラブ
・喫茶店
・ハンバーガー店
・お好み焼、焼きそば、たこ焼店
・他に分類されない飲食店

自分の店なのだから何でも自分の好きなことをやればいい!というのはもっともな理論であり決して悪いことではないのですが、あくまでアドバイスとして言わせていただくなら無謀です。

なぜなら好きなことだけをどんなに一生懸命にやっていても、お金の稼げる商売として成り立たせることができなければ事業としての成功はおろか職業として継続していくことすら困難となってしまうからです。

出店候補地がすでに決まっている場合は、どんな客層を見込める立地なのか、どんな利用動機が期待できるかということについて商圏調査することで、ある程度の推測ができます

業種選びのセオリーは自店の商圏内で最も多い客層の利用動機を狙うということになります。つまり、出店候補地が決まっている、もしくは決めているのであれば、その場所に求められている業種を選ぶべきで、先にしたい業種が明確に決まっているのであればその業種がもっとも求められるであろう場所を出店候補地に選択すべきかのどちらかとなります。

しかし、このセオリーの欠点として、そういったニーズの適合した場所には既にライバル店が多く存在している可能性が高く、熾烈な分取り合戦に巻き込まれてしまうということがあげられます。まして初めての出店であれば、もう少し手堅く商売できる道を模索したほうが賢明だと思われます。

そこで、おすすめなのがニッチな業種を選択するという戦略です。

商圏内に競争相手が少なく、それでいてニーズに余裕がある業種を見つけ出すのです。たとえ全体の中では小さめのニーズであっても、そこを独占することで十分に商売としての成功を掴むことができるというわけです。


② 業態について

業態とは単に料理の分野だけでなく、もう一歩踏み込んだ分類方法です。具体的には『どのように売るか』といった販売形態のことを指します。

飲食店に限って言えば主に以下のような売り方のことです。

【飲食店の主な業態例】
・テーブル着席型飲食店
・立食型飲食店
・セルフサービス型飲食店
・テイクアウト
・デリバリー
・ファーストフード
・ファミリーレストラン
・屋台
・キッチンカー移動販売 etc

業態の意味をより分かりやすくするため、既に成功している飲食店の業種業態を組み合わせた一例を見てみましょう。

【マクドナルド】
業種: ハンバーガーショップ
業態: ファーストフード

【サイゼリア】
業種: イタリア料理店
業態: ファミリーレストラン

【俺のフレンチ】
業種: フランス料理専門店
業態: 立食型飲食店

業種も業態も複数の要素が組み合わさって多様化していますので、もはやリストの中から、この業態を1つ選べばOKといったような単純なものではありません

ただ多くの人が飲食店を開業する際に一般的なテーブル着席型のレストランやカフェ、居酒屋などをイメージするかと思いますので、そのまま猪突猛進するのではなく一旦は立ち止まって、はたして本当にテーブル着席型がベストな選択なのか、それは自店の立地や商圏の客層にもっとも適した販売方法なのか、もっと他に可能性のある売り方はないのかについて深く考えを巡らすということが重要です。


③ コンセプトについて

コンセプトとはお店のテーマや骨子とされ『どんな価値を売り、どんな理由であなたの店が選ばれるのか』といったものです。

繁盛店や人気店には必ず明確なコンセプトが存在し、それは一流企業が広告やPRに使っているキャッチコピーにも見事に反映されています。

【有名飲食店のコンセプトを示すキャッチコピー例】
・吉野家
「うまい、やすい、はやい」

・スターバックスコーヒー
「Third place(第3の場所)」

・スシロー
「うまいスシを、腹一杯」

お店が目指さんとしているテーマが直球で伝わってきますね。

これらも確かにコンセプトの根幹部分を表現したものに違いないのですが、あくまで自店のモットーを多くの人に分かりやすく印象的に伝えるために考え出されたキャッチコピーであり、開業する人が最初に考えるべきコンセプトそのものとは少しだけ担う役割が違うものです。

最終的にコンセプトをキャッチコピーにまで落とし込んで社内外に浸透をはかるのは良い経営戦略の一つだとは思いますが開業時に考えるべきなのは、このようなキャッチーな合言葉ではなく、もっとしっかりと事業の方向性を示し、導いてくれる詳細なコンセプトです。

もちろん詳細とは言っても、だらだらと長い文章が続くことで余計に意図が不明瞭になってしまうのは避けたいところで、キャッチコピーよりは具体的で、かつ一行にまとめられるくらいの長さのものがベストだと思います。

【最初に考案すべき明確な飲食店コンセプト例】
・都会に居ながら海の家に来たようなプチ旅行気分を味わえる居酒屋
・ジャズが流れるお洒落な雰囲気の中で安く気軽に楽しめる焼肉店
・洞穴のような地下空間に突然広がる隠れ家的カジュアルイタリアン
・日本人が日本の魚の美味しさを再確認できる大人向けの寿司店
・田舎の実家に帰ったようにほっこり落ち着くアットホームな定食屋

いかがでしょうか?

自身のお店にこのような明確なコンセプトがあれば、メニュー構成立地選ぶ食器のデザインから内外装まで方向性がはっきりし、次から次へと準備すべきイメージが膨らんでいきませんか?

飲食店開業に向けての最初の仕事はメニュー作りでも内装や外装を考えることでもなく、このように事業の根幹となるコンセプトを明確にすることであり、その内容次第で店の寿命が決まるといっても過言ではありません。

安定的に利益を残して商売を継続するには単なる業種業態の選定だけにとどまらず、お客様に「また来店したい!」と強く感じてもらえるような魅力や価値が必要となります。そして、そのために必要なものこそがまさにコンセプトなのです。

では、このような優れた飲食店コンセプトとは具体的にどのように考えていけば作れるのでしょうか。

僕はまず、経営者自身の目標とする理想の飲食店像を細分化して考える方法を推奨します。ビジネスでよく用いられる5W1Hの考え方を飲食店の経営に当てはめて少しだけ進化させた5W2Hを活用して考えてみましょう。

【飲食店経営における5W2Hとは】
1. Why(なぜ)… 何のためにその店を開業するのか?
2. Who(誰に)… メインターゲットはどんな客層なのか?
3. What(何を)… 主力商品はどんなメニューなのか?
4. Where(どこで)… どんな立地のどんな物件で店をするのか?
5. When(いつ)… 営業する時間帯はいつなのか?
6. How(どうやって)… どんな接客やサービスを提供するのか?
7. How much(いくらで)… 客単価や売上目標はいくらなのか?

コンセプトは何度も熟考して納得性の高いものに仕上げていく必要があります。各項目への理想や考えを一つずつ言語化して書き出し、自身のお店の完成イメージを固めていきます。

ある程度まとまったら、それぞれの項目に矛盾がなく整合性がとれているかの確認も必要です。極端な例ですが客単価5,000円のファミリー向けラーメン店などは非現実的ですし、メイン客層が会社帰りのサラリーマンなのにお店の立地は閑静な住宅街などというのは条件が完全に矛盾していますので、どちらかを修正してやり直しということになります。


さらにコンセプトを考える上でのヒントをもう一つ。

物事を見る、捉える、考える時に使える3つの目という方法論があります。これらの視点からもコンセプトについて検討してみると良いでしょう。

1. 鳥の目「俯瞰的、客観的に見る」(マクロ)
鳥は上空から広範囲を見下ろします。自分の理想を追うだけでなく、こんな店があったら自身も気に入ってお客として通うだろうか、他人の意見も聞いて参考にしてみるなど客観的、俯瞰的な目線でもコンセプトを繰り返し見直しましょう。

2. 魚の目「流れを見る」(トレンド)
魚は潮や川の流れを読みながら泳ぎます。時代の流行や勢いのある業種業態はどんなものかといった最新のトレンド情報なども上手く取り入れつつ、多くの人を自身が作る波に巻き込めるようなコンセプト作りを意識しましょう。

3. 虫の目「近い距離で様々な角度から見る」(ミクロ)
小さな虫は目の前にある物体を至近距離から様々な角度で眺めています。ある程度コンセプトの大枠が決まった後でも、本当にそれがベストな選択なのか細部まで確認したり、角度を変えてシミュレーションをしてみる事で新しい発見や気付きがあるかもしれません。コンセプトの精度を極限まで高めていきましょう。


④ 要点まとめ

・業種、業態、コンセプトの設定は飲食店の成功に不可欠。
・業種のセオリーは商圏と利用動機だがニッチ分野を狙え。
・業態は先入観に縛られず、ベストな売り方を模索すること。
・一行にまとめられるくらいの明確なコンセプトを考案する。
・5W2Hを活用して理想の飲食店像をコンセプトに反映。
・3つの視点で分析し、コンセプトの精度を極限まで高める。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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