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永久保存版|飲食店開業への道


独立して飲食店を開業する
までには、いくつものハードルをクリアしていかねばなりません。

ですが、もちろん大半の人が初めての経験であるため、誰もが手探り状態で様々な情報を自力で調べながら、それなりの時間をかけて開業までの道のりを歩んでいくことになります。

【僕の推奨する『開業を決意してから開店するまで』の目安期間】
・飲食店で調理場やホールを仕切れるレベルの人 … 約1年
・飲食店での勤務経験はあるが、まだ未熟な人 … 約3年
・飲食店での勤務経験がなく、資金力ゼロの人 … 約5年
※あせって準備不足のまま出店しても開業後に手痛いしっぺ返しを喰らうだけです。開店までにはしなければならないことが山のようにありますので、しっかりと必要な準備期間を使って正しい開業スケジュールを組み、綿密な計画に沿いながら行動を進めていくことが重要です。

今回は現時点でまだ何も着手していない人が無事に飲食店の開業を成功させるまでに必要なステップをまとめ、全体の流れをご紹介していきます。

この開業までの一連の流れは、おそらく時が経っても大きく変化することはないでしょう。ですので、まだ独立を何年か先に考えられている方も内容を保存されておけば、いつかきっとお役に立てるときが来るかと思います。

① 独立開業の決意を固める

まず何よりも初めにすべきことは『飲食店で独立開業する』という決意を自身の中で固めることです。

独立は生半可な気持ちではできません。また飲食店の仕事はお客目線だと華やかで楽しそうにしか見えないかもしれませんが決して楽な仕事ではありません

すでに飲食店で働かれている方であれば大きく頷かれることかと思いますが真夏の土木作業に匹敵するほど過酷な環境であったり、重労働的な業務も多く伴います。

仕事中は常に…とまでは言いませんが誰もがやりたくない仕事の代名詞である4K(キツい、汚い、危険、給料が安い)の要素を含む職種であることは予め理解しておく必要があり、それでも絶対にやり抜いてみせるという強い心構えと覚悟が必要です。

また、本格的に独立開業を目指すとなると、もはや自分一人だけの問題ではありません。熱意と確かな計画性をアピールし、ご家族はじめ、親しい友人たちの賛同や応援を取り付けることが、その後の事業の成功に大きく影響することは経験者として断言します。


② 業種業態とコンセプトを決定する

業種業態とコンセプトの決定は飲食店の経営を始める上での最重要課題といっても過言ではありません。

【業種・業態・コンセプトとは】
業種 … どんな物を売るのか。飲食店に限定して言い換えるならば『何屋さんをするのか』が業種です。例えばイタリア料理店、居酒屋、カレーショップ、カフェ、ラーメン屋などですね。

業態 … どんな風に売るのか。つまり『お店の販売スタイル』が業態です。例えばひとまとめに寿司屋といってもカウンター越しに熟練した大将が握ってくれる高級寿司店やファミリー層に人気の回転寿司、屋台の立ち食いスタイルから宅配専門まで様々な売り方が考えられます。

コンセプト … どんな価値を売るのか。分かりやすく言うと『あなたの店が選ばれる理由』がコンセプトです。開店からわずか2年以内に廃業してしまうという50%のお店の中に入らないためにはこれこそが重要です。業種業態を決めただけでは一切のこだわりが感じられず、何の印象にも残らないお店。味や接客サービスに特別不満はなくても再び訪れたくなる価値や理由のないお店は遅かれ早かれシャッターを降ろすことになります。

業種業態コンセプトは単なる自分の好き嫌いだけではなく、将来性、資金、立地条件、スキル、適性、ニーズなどのあらゆる角度から検討して決定すべきものです。

独立の第一歩でつまづかないよう、しっかりと時間をかけて個性的なアイデアやお店の目指すべき方向性を練り上げていきましょう。


③ 必要なスキルを身につける

飲食店で独立すると言っても必ずしもプロレベルの調理技術が必要になるというわけではありません

既製品を中心とした簡単な料理のみを提供し、料理以外の部分で自店の価値を提供する。
料理人を雇用し、自分自身は主に経営や接客サービス担当にまわる。
調理学校や独立を指導する学校などで学び、開業時点で自分にできる範囲の料理だけで運営する。

上記のような場合、自らが高度な調理技術を身に付けなくとも飲食店を開業し、運営していくことは充分に可能です。ただ、やはり雇用していた料理人に辞められると店が営業継続できなくなったり、素人レベルの単純な料理のみでは自店のファンを増やしていくのは厳しいでしょうから、自店の料理を自分で作れる程度の調理技術はマスターしておくに越したことはないでしょう。

さらに調理や接客のスキル云々の話は抜きにしても、自分のお店を経営する前には必ず最低でも一年程度、同じような規模、似たような料理内容を提供している既存店で働いてみるという経験は必要不可欠です。

仕事の流れや揃えるべき店舗設備、スタッフの人員配置など卓上の勉強だけでは決して学びようのない実践的でリアルな知識が身につき、多くの想定外の失敗を未然に予防することが可能となります。


④ 開業のための資金計画を立てる

開業に必要な資金を紙に書き出し、資金計画を立てます。

資金不足に陥らないよう自分自身は開業までにいくら貯蓄しなければいけないのか、不足分の借入先はどうするのか、開店直後に必要になるお金にはどんな種類のものがあるのか、営業が軌道に乗るまでの運転資金はどれくらい確保しておくべきか、さらに日々の売上目標月間の収支計画まで、お金に関する計画を開業後の予測も含めて、しっかり把握しておかなければなりません。

これを怠ると想定外のタイミングで資金が突然ショートしてしまい絶対に必要だった厨房機器を開店までに揃えられなかったり、最悪の場合は開業直後に資金繰りが急激に悪化していきなり閉店…なんて笑えない結末を迎えてしまう可能性すらあります。

もちろん事前予測には限界がありますし、全てが計画通りに進むことのほうが稀というのが現実ですが、自分の中である程度の計画ベースがあると計画と現実との間に乖離が発生したとき、ここが増えたからここを削ろうといった具合に状況に応じて即座に軌道修正がかけられる思考力が身につきます。

この予算をコントロールするスキルこそが経営をスタートさせてから非常に重要になってきますので、そのトレーニングのためにも開業までの資金計画はコンサルタントなど他人任せにすることなく、必ず自らの手でやり遂げましょう


⑤ メニュー考案と価格設定を決める

お店で出す料理は数が多いほど良いというわけではありません。どんなお店でも主力商品として売れるメニューは数品に絞られてくるものです。

ですので、まずはじめに取り組むべきは自店の絶対的な目玉になると確信できるような看板商品を作り上げることです。

続いて看板商品以外の主力メニューとサブメニューについて、それぞれ店全体のメニューバランスに配慮しながら考えていきます。

味付けや一皿の量、サーブ方法や盛り付けまで細かくイメージし、ノートなどにアイデアをメモしていくとよいでしょう。

当然、試作も繰り返し行う必要がありますので誰かに試食をしてもらい率直な意見や、どれくらいの価格であれば安い(高い)と感じるかなどの感覚的なコストパフォーマンスレベルも測っておくと独りよがりではない正しい方向への改善につながっていきやすいかと思います。

なお実際の価格設定は感覚などではなく、食材の原価やお店のコンセプトもふまえた上で適性な値に設定しましょう。


⑥ 出店する立地と物件を探す

ここまでの準備がある程度整い、資金も目標金額に到達したら、いよいよ出店候補地の絞り込み物件探しをスタートします。

業種業態やコンセプトが決まっていれば、どのような客層が多い場所が適しているかは必然的に絞られてきます

オフィス街なのか住宅街なのか、学生街なのか飲み屋街なのか、繁華街や商店街なのか。はたまた大都会よりも少し田舎のほうがコンセプトに適しているような場合もあるかもしれません。

自宅からの距離ができるだけ近いほうが便利なのは間違いないですし、全く知らない未知の場所よりも土地勘があったり、人の流れを把握しているような場所であれば、それだけでも商売をするには圧倒的に有利です。

過去に住んでいたことのある地域や長く勤務していた職場周辺などを第一の候補にあげられる方も多いようです。

店舗の物件情報は住宅とは全く違います。流通も特殊ですし、家賃も相場が曖昧で家主のさじ加減次第という面もあります。まずは、あらゆる手を尽くして情報を集めるところから始めましょう。

そして住宅のように不動産屋を回るというよりは、実際に自分の足で候補地域を歩き回り、気になる空き物件を見つけたら表に張り出されている電話番号に自ら連絡をして物件の詳細を尋ねたり、条件が合いそうなら内覧の約束を取り付けるなど臆せず前向きに実行していきます。

こういった積極的な行動力が最良物件に巡り合うためのカギとなります。


⑦ 店舗の設計と施工の発注をする

物件が決まったら内外の現状写真を撮影したり、家主から図面のコピーをもらうなどして、お店の大雑把なレイアウトイメージを描いていきます。

もしも『ここは絶対にこうしたい!』という譲れない希望があるならば、この段階ではっきりとさせておく必要があります。

以前も飲食店だった居抜き物件の場合は厨房や客席などが最初から区分けされているので、それに準じて、あまり手を加えないほうが施工費が安く上がります

逆に元々厨房設備がなかった物件に新規で厨房を作るのには、かなり莫大な工事費用かかりますので余程お金持ちの人でもない限り、初めての開業時は居抜き物件を推奨します。

ある程度のレイアウトイメージが決まったら施工業者さんを探します。
ネットなどで『飲食店 施工業者 ○○(物件のある都道府県)』などと検索すれば多数ヒットするかと思います。

この際、必ず飲食店の施工経験が豊富な業者を選ぶようにしましょう。

最終的に決める前にはその業者が実際に施工した店舗に直接足を運んで内外装の施工技術を確認しておくとハズレを引く可能性はグンと低くなります。

また候補を2~3社に絞った時点で各社に施工イメージを伝えて相見積もりを出してもらうと相場からかけ離れた費用をふっかけられる心配もなく、もっとも価格と品質のバランスが取れた業者を選べるはずです。

以降は確定したプロの飲食店施工業者と細かい箇所を相談しつつ、具体的な施工プランを固めていきます。


⑧ 厨房機器や什器備品等を調達する

自店に必要な厨房機器はメニュー内容が決まっていれば必然的に選択できるはずです。厨房機器はリースという手段もありますが居抜き物件の場合ですと元から設備が残っている場合もあります。

ちなみにビールサーバーは契約した酒屋さんを通じてビール会社が無償で貸してくれる場合もあります。お世話になる酒屋さんが決まった時点で一度交渉してみると良いでしょう。

食器類の数は一般に客席の1.5倍量を目安に揃えれば良いと言われますが実際はそんなに必要ありません。箸やスプーンや取り皿など来店されたお客様の大半が使う食器についてはそのくらい用意しておいたほうが無難かもしれませんが、それ以外の通常の料理を盛るお皿などはせいぜい客席の 1/2 ~ 1/3 程度の数があれば意外と大丈夫です。

実際に営業していて不足を感じたら、その都度、買い足せば良いだけのことですし、この皿が足りなくなった場合はこちらの皿で代用する…などと予め決めておけば急に現場で焦ったりするようなこともありません。

他にはレジシステム電話機、トイレ備品、店内に飾るオブジェやポスターまで必要なものは多いですが、あくまで予算は限られていますので最初からアレもコレもと欲張らず、まずは最低限、営業に必要なものから揃えていき、他のものは営業を始めてから少しづつ増やしていくようにします。


⑨ 必要な届け出をして営業許可を取得する

内外装工事が終わり、厨房機器なども搬入されてお店の形態が整ったら、電気やガスや水道などの開通手続きを済ませ、保健所に営業許可証を発行してもらうべく必要書類をまとめて申請に行きます。

保健所は申請数日後に実際に担当者がお店を訪問し、営業許可審査が行われます。その時に規定の条件を満たせていなければ通らずに再審査となり、開店スケジュールが大幅にくるってしまうこともありますので内外装施工の段階から保健所の審査基準を満たすように配慮して準備を進めておく必要があります。


⑩ 仕入業者を選定して契約する

保健所などと同時進行で各食材などの仕入業者についても選定し、契約が必要であれば済ませておきます。

近隣に業務スーパーやディスカウントショップなどがあれば小さな飲食店にとってはとても心強いですし、生鮮市場などもあればお世話になりそうな八百屋や肉屋や魚屋などに予め名刺を配って、あいさつ回りしておくのも良いですね。市場の中には無料で店頭まで配達してくれる業者もありますので必要に応じて相談しておきます。


⑪ 従業員を雇用して教育する

いきなり正社員を抱えるのはあまりおすすめしませんがアルバイトスタッフは必要に応じて募集し、面接をして条件に合う人を雇用しておきましょう。

雇用したスタッフには開店までに自身の担当する業務について完全に理解しておいてもらわねばなりません。

開店前は、実際にお客様が来店されてから帰られるまでの流れを自分たちで役割を演じながら限りなくリアルに再現しつつ教育指導していくRPG(ロールプレイング)と呼ばれる仮想トレーニングが役立ちます。


⑫ 開店計画と準備を整える

保健所の営業許可もおりて開店日が確定したら、どのように事前告知をしたり、オープン初日はどのような営業やサービスをするのか、来られたお客様に何かを配布したりするのかなど細かい開店計画を立て、その準備を整えていきます。

本オープンの2~3日前には家族や親戚、友人や知人、これからお世話になる納品業者さんやお店を改装してくれた施工業者さんなどの関係者のみを招待したレセプションと呼ばれる、仮オープンを兼ねた身内のみのイベントを開催されることを強く推奨します。

その日はお店の全メニューを半額でサービスする代わりに、慣れていないスタッフの接客や料理などに、もしかすると失敗があるかもしれない旨を予めお伝えしておきます。そして実際のお客様と全く同じように対応させてもらった上で、お帰りの際に気付いたことや改善したほうが良いと思われる点などをできるだけ客観的な視点からアドバイスしてもらいます。

その日に気付いた課題を2~3日かけて改善した後に本オープンの初日を迎えられるようスケジュール調整ができれば理想的です。


⑬オープン初日を迎える

ついに記念すべきオープン初日を迎えます。

長い旅路の果てにようやく辿り着いたゴール地点のような気分になりますが、実はこれが本当の意味でのスタート地点です。

この先もまだまだ様々な問題と対峙していかねばなりませんが飲食店経営はときに、それ自体が仕事だということを忘れるほどに熱中してしまったり、楽しさや幸せや喜びを感じたり、涙が出るほど感動する機会もあるようなやりがいに満ち溢れた唯一無二の素晴らしい職業です。

一財を築けるかもしれないという巨大な夢もあります。

ぜひ僕と同じく独立開業を実現していただき、一緒に力を合わせて日本の外食産業を盛り上げていきましょう!


⑭ 要点まとめ

・今回の記事は発起から開店初日までの一連の流れをざっくりと追いかけた『開業スケジュールチャート』のようなものです。

・一つ一つの項目につきましては、また今後の別記事にて詳しく、より具体的に解説していきたいと考えております。

・飲食店経営は決して楽ではありませんが、やりがいに満ち溢れた唯一無二の素晴らしい職業です。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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