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ブルックリンラガーから学ぶ愛と情熱のマーケティング

私がこの本を手に取ろうと思ったきっかけは、キリンビールさんのnoteに公開されたこの記事でした。

ほうほう…
ビールでブルックリンを変えた男か…

ビールの歴史とブルックリン・ブルワリーが生まれたストーリー。
元ジャーナリストがブルワリーを立ち上げ、世界的なクラフトビールへと成長させたマーケティング戦略。

これはしっかり学ぶしかない!
(ブルックリンラガーを飲みながらその歴史に触れるなんてロマンチック!飲みたい!

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というわけで早速近所のイオンモールへ走り、本書とブルックリンラガーを手に入れてホクホクしながら帰宅。

いただきます!

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想像以上に濃厚で香り豊か…
確かに、大手メーカーのビールとは比べ物にならないほど立体感のある風味と味わいです。

これは美味しい…
気付けば読書開始3ページ目で1缶空けてしまいました。

まぁ、それはさて置き読書を進めていきましょう。(カシュッ!2本目)

ブルックリン・ブルワリーとは

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1988年、荒廃した街ブルックリンで小さなビール醸造所が立ち上がりました。それが今世界中で大人気となっているクラフトビールメーカー「ブルックリン・ブルワリー」です。

私はここで奇妙な偶然に出会いました。

1987年創業、1988年3月30日に販売開始となったブルックリンラガー。
実は私は1988年1月生まれ。ブルックリン・ブルワリーと同い年だったのです。

急に親近感が沸き、ブルックリン・ブルワリーの魅力に早くも引き込まれて行きました。(カシュッ!3本目)


“ビールづくりをブルックリンによみがえらせる”

本書は、元戦場ジャーナリストであるスティーブ・ヒンディ氏(以下スティーブ)によって立ち上げられたマイクロブルワリー「ブルックリン・ブルワリー」が、趣味としてはじめたホームブルーイング(家で作る自家製ビール)から世界的なクラフトビールメーカーにまで成長する物語です。

いわゆる趣味を極めたら世界が取れたというものではなく、ビールでの企業に大きな可能性を見出して「荒れ果てたブルックリンにビール作りで活気を取り戻す」という強い意思のもと事業がスタートしました。

この本を通じて私が感じ取ったことは次の3つです。

① 信念のこもった継続力が人の心を動かし成功へ導く
② 「ニーズがあるから」ではなく「何を成し遂げたいか」から始める強さ
③ ギブの精神がコミュニティを生み、拡散力を持つ

信念の強さとストーリーを伝える力

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ブルックリン・ブルワリーの事業が軌道に乗り始めるまで、いくつかのターニングポイントがあります。

その中でも次の2つは、スティーブの信念と粘り強さ、そして戦場ジャーナリストとしての人を動かす語り手としての力が大きく影響したのだと思います。

① ロゴ制作に『I♥NY』のデザイナーを口説いたこと
② ビールの委託製造で力を持つマット・ブルワリーとの契約に成功したこと

ブランドロゴの誕生
企業にとってブランドとロゴは最重要。そこは妥協できないと、いろんな制作会社を当たったそうですが、どの会社もブルックリン・イーグル・ブルワリーの事業計画を褒めるばかりで何の参考にもならずピンとも来ない日々。

※計画当初は『ブルックリン・イーグル・ブルワリー』という名前だった

そんなある日、妻からは思い切って世界クラスのデザイナーに当たるべきとアドバイスされ、『I♥NY』を作り出したミルトン・グレイザーへアポを取ることにしました。

最初は当然受付嬢に門前払いされ、一切本人に繋いでもらえませんでしたが、一週間あきらめずに電話をし続けるとようやくミルトン本人に繋いでもらうことに成功。

そこでスティーブは事業計画と「ブルックリンにビール文化を取り戻したい」というビジョンを伝えました。

その思いが通じて実際に会うこととなり、さらにはデザインの報酬を株式保有で支払うという話になったのです。つまり、世界的デザイナーであるミルトンが仲間になった瞬間でした。

ミルトンからは「イーグルは別企業が使っていて訴訟問題になるからやめたほうがいい。君たちに鷲は必要ない。」とバッサリ切り捨ててくれたそうです。

飲料マーケティングのカギとなる物流問題
一般的に出回っていたビールはほとんどが大手メーカーのものばかり。物流を担う大手の卸売業者も、まとまった本数が確実に売れる大手メーカーのもの以外には興味も示しません。

そのため、自分たちで作って自分たちで売りまわるしかないという結論に至りました。マフィアの監視が厳しいブルックリン内ではなかなか難しい話です。

そこで、醸造所の建設規模を縮小してビールの製造を外注できるブルワリーを探しました。ニューヨーク市外でビールを作って、市内に運んでから自社のトラックで配送・販売を行うという戦略です。

そうして見つけたのが、当時最大のマイクロブルワリーだったオールドニューヨーク・ブルーイングからビール製造の委託を受けていた『FXマット・ブルーイング』でした。

しかし、FXは興味がないと言い放ち一切話を聞いてくれない。他の醸造所へも当たったけど、ブルックリンラガーには向かない製法を提案してくる。理想を実現するためにはFXの協力が不可欠な状況です。

スティーブは諦めることなくFXへのアプローチを続けました。話を聞いてもらうために、「I♥NYのミルトンがデザイナーとしている」という話を持ち出し、興味を引き付けて会話を続け、ついに口説き落とすことに成功しました。

ここで諦めていたら、今のブルックリンラガーの味はなかったでしょう。

「何を成し遂げたいか」からはじめる

本書を読んでいて一貫して感じるのは、世の中の困りごとやニーズに立ち向かうのではなく、自分たちが成し遂げたい夢をひたむきに追いかけているということです。

これは先日読んだ『突破するデザイン』で語られた「意味のイノベーション」と同じだなと感じました。

外→内の問題解決型の考えではなく、まずは自分の内からビジョンを生み出し、それを実現するための問題を外からのサポートを得て解決していくスタイル。

一貫してブレないビジョンがあったからこそ、ロゴのデザイナーも妥協しなかったし、外注先の醸造所選びも諦めなかった。

これが単純に「ブルックリンは荒廃しているから事業を起こして賑やかにしよう」という問題解決型の思考から始まっていたら、妥協をしてでも早く推進する方法を選んでいたのではないかと思います。

ギブの精神がコミュニティを生み、拡散力を得る

ブルックリン・ブルワリーは、ブルックリンにビール文化を蘇らせるというビジョンとブルックリンのビール史、そしてミルトンがデザイナーを務めるという要素だけでも十分マスコミからの注目を集めていました。

そのため、ある程度事業が大きくなってくる頃には莫大な広告宣伝費をかける必要性がなくなってきました。むしろ費用が嵩みすぎて売上は立つが利益は出ないという状況でした。

そこで、ブルックリン・ブルワリーは様々なイベントとのコラボによって宣伝と販売を同時にやってのけました。

ブルックリンラガー・バンドサーチ
ブルックリンにはロックバンドが多く、みんな有名になることを夢見ていました。

そこで、大手レコード会社と契約していないバンドを集めてコンテストを開催。そこでブルックリンラガーを販売し、その利益をコンテストを主催する非営利団体へ提供するというイベントを企画しました。

ロックバンドはコンテストに参加できるし、主催側はバンドに出演料を支払わなくても良い。そしてブルックリンラガーが売れることで大きな宣伝にもなる。

莫大な金額を投じて広告を打っても人々に届くかどうかはわかりませんが、実際にビールを提供すればその味を知ってもらうことができます。

これも、ブルックリンにビール文化を取り戻すという明確なビジョンと味へのこだわりを持ち続けたからこそできたマーケティング戦略だなと感じました。

愛に溢れた物語

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ブルックリン・ブルワリーの事業には愛が溢れているように見えました。それは、自分の内面から湧き出てきた明確なビジョンに強く突き動かされたからこそ感じ取れるものなんだなと思います。

この本を手に取ったことではじめてブルックリンラガーを飲みましたが、麦芽100%のこの濃厚な味わいが生まれたストーリーを想うと、より一層思い入れを感じて好きになりました。

同い年ですし。笑

今日もまた、ブルックリンラガーで1日を締め括ろうと思います。

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ちなみに、本書を開くと前半のページはクラフト紙のようになっています。こういう細部にまで拘った演出。だからこそ、紙の本はやめられない!

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