見出し画像

新たな可能性を切り開く #ルーキー・スマート vol.5

ルーキー・スマート|ROOKIE SMART
著者:リズ・ワイズマン|Liz Wiseman
和訳:池村 千秋
発行:有限会社 海と月

この記事は前回の続きとなります。

【前回のあらすじ】
○ ファイアウォーカーはリスクを抑えて慎重に行動する
○ 慎重になった上で、素早く成果を出そうとする
○ そのために複数の専門家のアドバイスを素直に求める

今日はルーキー・スマート最後のモード“開拓者モード”のお話しです。

開拓者とはその言葉通り、地図のない未知の領域へ足を踏み入れ、資源の無い状況から新しい道を作り、後に続く人の希望となる存在です。めっちゃかっこいいですね。

こういったインディー・ジョーンズのようなかっこいい存在は、その未知のプロやベテランにこそ持っていて欲しい素養ですが、実はルーキーにこそ備わっているものなのです。

それもそのハズ。未開の地に足を踏み入れる人は総じてその場ではルーキーですから。

欠乏感と猛烈な追求|開拓者モード

画像1

開拓者とは、未開の地に足を踏み入れ、その先にある成果を得ようとする人たちです。よく見知った場所から離れ、手探りで進みます。

開拓者には訪れた未開の地に対する知識や経験などの資源がないため、物事をシンプルに捉え、最も重要なことに集中します。

そうして後に続く人たちに価値を生み出すために、世界を広げていきます。そのため、開拓者には知識への欠乏感と猛烈な追求が備わっています。

開拓者の思考パターン

画像2

開拓者の思考パターンは一言で表すと「ハングリー精神」です。

未開の地へやってきた開拓者は必要な経験もなく、知識という資源もありません。その状況下で新たな道を切り開くためには常に知恵を振り絞り、新たな可能性を見出していく必要があります。

これだけではかなり抽象的な話になってしまうので、具体的に会社組織に当てはめて考えてみましょう。そのためには開拓者モードの対極にいるベテラン「定住者」について知る必要があります。

定住者とは

開拓者の対極に存在する定住者とは、その言葉通り安定した場所に生活拠点を構え、そこから動かず新しい可能性を検討すらしない人々のことを指します。

みなさん一度は聞いたことがあるであろう「それは我が社では前例がないから無理だよフォッフォッフォ…」という謎の前例縛りオジサンオバサンがまさに定住者です。

定住者は既にあるもので満足します。ありものをそのまま受け入れるので、昔から運用されている謎のルール、統合した方が効率的なのに何故か分けられているのかよくわからないエクセルファイル、無駄に乱立したチャットグループなど…

これらに異論を唱えずそのまま受け入れる、または異論を唱える開拓者に対して既存のルールを押し付けて無理やり定住させるリーダーもいます。

また、輝かしい成績を残したとしても部署移動した先で全く同じやり方を繰り返してしまい、結果が出せなくなったというのも定住者の特徴です。過去の栄光を消去できず、同じやり方を踏襲してしまいます。なぜなら、定住者にとってはその方が快適だからです。

これに対し、常に新しい可能性を考え、プロジェクトごと、あるいはプロジェクト内のフェーズごとに常に最適な方法を考えて新しいルールを作ってしまうのが開拓者の素晴らしいスキルです。

開拓者3つの特徴

画像4

開拓者は新たな土地で生き延び、成果を上げるために猛烈な努力をします。ルーキーも同じように、勝手のわからない不快な状況を打破し、進歩したいという強い気持ちを持っています。

そんな開拓者モードには3つの特徴があります。

▼その① 新しいツールや仕組みを作る▼

最初から最後までお決まりのやり方に当てはめて終わらせるだけではいい仕事はできません。今の時代、そんな仕事はAIにとって変わられるでしょう。

スウェーデンのストックホルムで戦略コンサルタントをしていたヘンリク・エーケルンドは、企業が戦略の実行に苦労しているのをみたのを機に、シミュレーションを活用してクライアント企業の戦略思考を磨き始めました。

すると、その後顧客から自社用にカスタマイズしたシミュレーションを求められるようになったそうです。その過程では、顧客に最適化するための工夫は全てアドリブで行うことになるので、細かい段階に分けて小さな行動を取り、改善を重ねました。

そうして、やり方がわからない仕事を受注することに自信を持つようになりました。

もともと顧客ようにカスタマイズしたシミュレーションなどなかった頃に、ヘンリクは新たなツールや仕組みを作り、顧客のニーズに応えて行ったというわけです。

▼その② アドリブで行動する▼

NASAの元ロケット科学者 K・R・スリダーは「資源がなければ、人は知恵を絞るようになる」といいます。

そう、制約が多ければ現実的にその範囲内で何とかするしかないので、自然と知恵を絞るようになります。制約があったり資源が乏しいときには創意工夫の力が高まります。

ありもので満足するのではなく、ありもので何とかするという考え方です。

2007年、スタンフォード大学ビジネススクールの「超低コストの起業デザイン」というコースでは、当時2万ドルもした保育器を途上国で低価格で提供するという課題がありました。

途上国へ低価格で提供する=通常よりも圧倒的に資源が少ない状況で開発することを前提に考えたことで、保育器が電源を必要とするという概念を覆すことに繋がり、全く新しいタイプの保育器が完成したそうです。

その保育器の価格はたったの25ドルでした。

ルーキーはベテランに比べて2倍もスキル不足を感じている。
ルーキーはベテランに比べて高慢な態度を取らない確率が44%も高い。
ルーキーはベテランに比べて私的なニーズを後回しにする度合いが40%高い。

制約にぶつかると開拓者はアドリブで行動し、それが新たな発見に繋がります。定住者は無理だと決めつけて諦めるか、まったく見当違いな行動をとってしまうのです。

▼その③ 猛烈に努力する▼

開拓者モードのルーキーには、障害ははねのけて前に進む以外に選択肢はありません。それは知識への渇望、欠乏感の現れです。

入社間もない新人が猛烈に頑張って努力しているのを見かけたことがある人も少なくないでしょう。彼らは新たなプレーヤーとして注目に晒されているので、退却は敗北に等しいと感じます。

そのため、ベテランに比べてルーキーの方が仕事に真剣に打ち込む可能性が40%も高いこともわかっています。

自分に足りないものを求める姿勢を持ち続けることが何より大切です。

開拓者になるための具体策

画像5

ベテランは既にゴールにたどり着いた人間。
ルーキーはこれからゴールへ向かって突き進む人間。

一見、ゴールにたどり着いた人間の方があらゆる知識を持っていて有能に見えるでしょう。しかし、一概にそうとも言えません。

ゴールにたどり着いた定住者が優れているなら、何故今以上の成果が上がらないのでしょうか。

答えは「そのゴールはもう古くなっているから」だと私は思います。

これまで何度も触れてきた通り、時代は常に変化していて、日々至る所でゲームチェンジが行われています。そんな中で、ゴールにたどり着いたと達観し、そこに拠点を構えて動こうとしない定住者は時代に置き去りにされます。

そんな定住者ではなく、開拓者思考を得るための具体策が3つあります。

① 自分をあえて「資源不足」にする

長いこと仕事をしていると、必ず“マンネリ化”が起きます。日々の仕事の中で、全く同じやり方を踏襲していることはありませんか?

例えば、毎月リセットされる売り上げ目標を追う店舗。季節ごとに顧客のニーズは変化し、戦略が変わるはずなのにまったく同じ営業トークを展開しているなど。

今までの経験が「資源」として残っているからこそそれを繰り返してしまう。

そんなマンネリを抜け出すためには「新しい分野の仕事を選ぶこと」「自分の役割を広げること」「身の丈以上の課題に挑むこと」などにチャレンジしてみるといいでしょう。

自分の専門外の範囲に視野を広げることで強制的に資源不足にし、工夫を凝らします。これは私の所感ですが、行き詰まった時こそ新しいことにチャレンジするとアイデアが混ざってもともと行き詰まっていた仕事にも新しい発想が行き渡るようになります。

② 半分エキスパートになる

「1万時間の法則」というものがある通り、完全な専門家になるにはかなりの時間がかかります。しかし、集中して取り組めばある程度の熟練度までは短時間でたどり着くことができます。

あらゆる分野の専門家とネットワークを築き、知識に幅を持たせることでどんどん新たな分野を開拓していく。そうすることで自然と開拓者思考は身につきます。

③ 常に自分を問題に縛りつける

定住者は常に自分の知っていることだけを話がちです。だからこそ、いつどんなアドバイスを求めても当たり障りのない同じような答えが返ってきます。

皆さんも職場の先輩に仕事のことで相談した時、「あ〜、それはロープレするしかないね」「スケジュール管理をしっかりするべきだよ」など当たり障りのない誰にでも当てはまりそうなアドバイスを受けたことはありませんか?

本当に大切なのは常に自分を問題に縛りつけること。

後輩から相談を受けたら、その問題に自分を縛りつけ、後輩の立場ならどう解決するかを真剣に考える。それはもともと持っていた自分の経験の引出しからぽっと出したものではなく、アレンジして後輩に最適化したものでなくてはならない。

そもそもありもののアドバイスで簡単に解決できるレベルの問題なら相談しないですよね。

開拓者だけが得られるもの

画像4

未開の地を開拓するのは簡単なことではありません。資源不足な状態からどうやって新たなアイデアを生み出すのか。無から有を生むことが容易くないように、開拓者思考で新しい道を切り開くのは骨の折れることです。

しかし、それができた時にはとてつもなく大きな成果が得られるでしょう。

現代風にいうと「ハック」ですね。

仕事がマンネリ化していると感じている人は、開拓者思考を実践してみてください。今の仕事にも定住者が仕切っていて成長していない勿体ないポイントがあるかもしれません。

そして、それをぶち壊して新しい道を切り開いた時、大きな評価となって返ってくるのは間違いないでしょう。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?