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妖怪感度の定期検診

物心ついたころから水木しげる先生の妖怪画が非常に好きだ。
小学校に上がるよりも前、漢字も読めるようになる前から、
自宅にあったハードカバーケースつきの黒い布表紙の画集を眺めていた。
とても怖かったが、怖いのにどうしても目が離せなかった。


そんなわけで、
今でも原画展的なものがあるたびにいそいそと出かけていく。
この生誕100周年を記念した『百鬼夜行展』は
特に行きたいと、ずっとタイミングを狙っていた。

個人的な目玉は、元ネタになった絵と並んでいる展示。
かなり忠実に取り入れているものと、水木先生らしいアレンジのバランスを
じっくり比較できるのが興味深い。
(墨一色で描かれた輪入道の驚異的な立体感&存在感には息をのんだ)


ところで、水木先生の妖怪画には、
普通の風景画や静物画のようにしか見えない絵がたまにある。
しかも、そういうのに限って妖怪の名前くらいしか書かれていなくて、特に説明もなかったりする。
昔から見るたびに「何の絵なんだろう」「どこが妖怪なのだろう」と不思議におもっていたのだが…
今回、改めて原画をみて「そういうことか」と急にピンとくるものがあった。

どうしてもひとつの像としては結べないから、描ける残りの全部を描いている…というのか、この妖怪にふさわしい姿、雰囲気を描き出そうとするとこうなる…というのが、スッと理解できてしまった。
とにかく、1枚に仕上げると、完全にこうとしかならないというのが納得できた。(まるで、その1枚の原画そのものが妖怪であるかのように)

なるほど、これが妖怪感度の高まりというものなのだろうか。
わたしは人間以外の目には見えないナニかの力を感じる能力だと解釈しているのだが、日々、様々なものの気配、雰囲気に触れ、その実感を確かめていくなかでいつの間にか磨かれているものなのかもしれない。

とはいえ、どうにも風景画にしか見えない絵はまだまだ何枚もある。
今後も折をみて原画に触れて、己の妖怪感度の具合を確かめていこう。
こういうのは、定期健診が大事なのだ。

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