人食いバクテリアに侵された5ヶ月間の覚書

1978年生、東京都在住、男性、一人暮らし。血糖値と肝臓の数値は高めだが、基礎疾患は特…

人食いバクテリアに侵された5ヶ月間の覚書

1978年生、東京都在住、男性、一人暮らし。血糖値と肝臓の数値は高めだが、基礎疾患は特に無し。 日常的に酒タバコあり、不規則な生活リズム。

最近の記事

人食いバクテリアと夢十夜 半覚醒時の夢?

約2ヶ月半、意識が欠落している間、私は「言葉と肉体」という束縛から解き放たれ、夢の世界を自由に彷徨った。体は鉛のように重く、瞼は開かず、声にならない声をあげる。看護師の呼びかけは遠くかすかに聞こえるだけで、その意味を理解することはできない。私の言葉は誰にも伝わらない。すぐにまた眠りの淵へと引き戻されていく。私は常に夢と現実の曖昧な境界線上を彷徨っていた。全身の痛みと幻聴に苛まれながら、これからの死を感じていた。 傷口を処置する際には、追加で鎮痛剤を打たれた。その薬の効果もあ

    • 人食いバクテリアと夢十夜 ノーベル賞を取ることになった夢

      意識の無い約2ヶ月半の間にこんな夢を見た。 夕暮れ時の拝殿へと続く石畳の道は、まるで此岸から彼岸へ繋がる架け橋の様な静謐な佇まいであった。石畳の両脇には、細かな砂利が敷き詰められ、その先には聳え立つ杉の木々が天に向かって無数に伸びている。夕靄に包まれた境内には、木々の間からオレンジ色の夕日の光がフレア気味に差し込んでいた。私は砂利の上を男と歩いている。静寂を引き立てるように、ザクッザクッっと踏音だけが響く。 しばらくすると男は立ち止まり、私を見つめた。「このままお前が死ん

      • 人食いバクテリアと夢十夜 クラフトコーラの夢

        意識の無い約2ヶ月半の間にこんな夢を見た。 その店は幅5m程度の小さな川沿いの静かな小路にあった。入口には「クラフトコーラ」の立て看板のある小さな店。重い引き戸を開け10畳ほどの店内に入ると、瓶詰め生姜や謎スパイスの瓶が左右の壁一面の棚に並んでいた。正面には小さなカウンターがありその上にはiPad。そして、カウンターの向こうには、女店員がひとり立っていた。胸元に赤いハートの刺繍のある白いTシャツを着て、黒い無地のキャップを被り、後ろのポチポチボタンで調整する部分の上の隙間か

        • 手術と集中治療室(ICU) 3

          1月下旬、日々のリハビリがスタートした。鉛筆を持つこと、文字を書く練習から始まり、徐々にベッドの背もたれを使って腰を起こし、体を支えて座る訓練へと進んだ。土日はリハビリ先生がお休みなので、書き取りドリルの宿題。座る練習は、その時点ではまだ体を支えられないので、一人では止めるよう言われていた。 1週間ほど経つと、次はベッドの縁に座る訓練。寝た状態からベッドの脇まで移動し、ベッドから足をおろして体を起こす。タイマーを使い「今日は5分、明日は10分」と測られながら背もたれなしで座る

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          手術と集中治療室(ICU) 2

          1月に入りなんとなく意識は戻ったものの四肢に力が入らず、スマホを手に持つことすらままならない。持てたとしても、震えがひどく文字は読めないし、フリックもタップも定まらない。時間をかけLINEを開くと、知人友人から届いた200件以上の未読。読む気力も無いので、差出人とメッセージの冒頭のみをスクロールする。その中に1月1日付けでM嬢から「意識が戻ったようでよかった」的な書き出しのメッセージがあった。彼女との間に共通の知人はほぼ居ない。こちらからは誰一人として連絡を取っていない。病院

          手術と集中治療室(ICU)

          気が付くと、年が明けていた。 意識が戻ったとはいえ、朦朧とした状態が2週間程度続き、状況を理解できたのは1月の中旬あたり。気管切開されて人工呼吸器、4点の電極、点滴、血液パック、人工透析マシン、排血パック、バルーン、そして膝から鼠径部までぱっくりと開きっぱなしの状態。内ももの傷口からは骨も見える。ゾンビやスプラッター映画はよく出来ているなと思った。体に力が入らず、手は震え、寝返りすら自分では打てず、喉に穴が空いているので声も出せない。自分でコントロールできるのは、指先と瞬き

          突然の発症と意識を失うまで

          2023年11月のある日曜日、人手不足に悩む知人の飲食店経営者に友人を紹介するため、自由が丘で3人で夕方から会食。初対面2人の感触もよく、もう一軒行こうと誘われたが、私の体調が優れなかったため、23時ごろの一次会で謝りつつ帰宅することに。多少無理をすればいけそうだな、とは思ったがこれでうつしたりしても申し訳ないと断ったことを記憶。症状としては、酒の吸い込みも悪く、体が重く、まるで風邪をひいたときのような感覚だった。 翌日の月曜日、朝から身体の重さに加え、右足の付け根ふともも部