人は理解したいように理解する~認証バイアスの例

「重症者の6割がワクチン接種者」 の記事のような結果を、ワクチン不要論の人が理解しようととどうなるか。事例を見つけました。

画像とリンクは貼っていますが、数字の確認はしていません。今回の目的は、人は理解したいように理解する、自分の主張を補強する情報(だけ)を集める傾向がある、という事例を示すことです。それが認証バイアスというもので、フィルターバブルにはまり、最後はエコーチェンバーというその考え方が増幅されたコミュニティーの一員となってしまう。さらには社会の分断を招く可能性があります。

「重症者の6割がワクチン接種者」では、重症者数の内訳だけを見ると、ワクチン接種した人の方が多いことは事実。しかし年代別に人口は異なる、ワクチン接種率に差があるため、詳細な分析が必要。ワクチン接種しない方が重症化しにくいという訳ではない、年代別に見れば効果はあると結論できるという説明をしました。(しかしそれは今、現在の情報であるため、将来かわるかも知れない、その兆候も見られるという補足も)

これはシンプソンのパラドクスと呼ばれ、統計学で良く知られた話題です。全体だけをみて軽々に判断してはいけない、詳細分析、様々な解析の整合性が重要だ、という事例でもあります。

今回見つけたのは、まさにその逆。日本でも年代毎にワクチン接種率が違います。明らかにワクチン接種した方が致死率が(今の所)低いのですが、全体でみればワクチン接種した方が致死率が高い、と結論している例です。

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ワクチン接種は意味がない、ほら、全年齢で見ると致死率は未接種者の方が少ないでしょ、という主張です。

まさに見たいところだけを見るという認知バイアスです。


認知バイアス、フィルターバブルからエコーチェンバーにまで到達してしまった人たちの例を、私たちは最近目にしています。2020年のアメリカ大統領選挙があまりにも典型的でした。結果社会の分断を招いたことも記憶に新しいでしょう。

いつも同じような結論ですが、統計学・数学などの基礎知識は、社会の理解に役に立つのです。こんなことが起るのだ、という知識だけでもフィルターバブルから距離を置くきっかけになるでしょう。

(麻生太郎が2020年9月にN高で発言した「義務教育に微積・サインコサインいらない」は、数学を通じた論理的思考の訓練をしていない人の発言でしょう。文系の大学生にデータについて教えていると、学習した経験があるので必要になった時に何とか理解できる、しようと努力できる、と感じます。)