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僕が音楽を「書く」理由

『関西音楽新聞』2022年3月号では、担当記事がちょうど二つ並んだ。
どちらも、結果的に演奏者の人となりを紹介するような切り口となった。

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人となりで思い出すのは、ずいぶん前、薬剤師の人に取材したときのこと。
創業ストーリーを伺う場で、自己紹介がてらピアノの話題から始めた。
その人は「私はてんで音楽のことわからないんで、すごく意味不明ですごく憧れます」とおっしゃった。
思わず「個人の情熱の発露だから、ほかの人には意味不明なことも多いですね」と相槌を打ったら、
「そっか!そうなんですね!今わかりました!」と眼差しがかわった。
「人間が作ったものだから、人にわかるはずですよね、きっと私にもわかるはずですよね!」
長年の謎に、俄かに光が差し込んだ喜びを抑えられないご様子だった。


言葉で音楽を綴るという無謀な仕事に携わっているのは、音楽作品の告知に加えて、表現者の人となりが垣間見える「窓」のような空間を創出したいからかなと思う。
その根底には「人が作ったものだから、いつかジャンルを超えた人も理解できるはず」というあの日の体験が息づいているのかもしれない。


僕にとって興味の湧く謎世界は数学の世界だ。
音符を通して音色を味わうように、いつか何ページにもわたる数式をとおして実数虚数の世界を気ままに泳げるようになりたい。
と夢想しつつ、手にした入門書は積み上がるばかりで、いまだその大海に漕ぎ出せないでいる。

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