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認知症の人の排せつトラブル

排せつのトラブルは多い

長く認知症の状態で生活をしていると、排泄のトラブルが生じることがあります。排便の失敗や放尿は、本人の自尊心を損ない、支援する人は事後の処理に多くの時間をかけなければならなくなります。家族との人間関係の悪化も見られることが多いです。
これらについては、適切な対応により改善する可能もあります。対処が困難な場合、在宅生活の継続が難しくなることもあります。

実例:アルツハイマー型認知症の女性のケース

80代のアルツハイマー型認知症の女性は自宅で排便の失敗が頻繁に起こり、その都度家族が対応に追われていました。ケアマネジャーのアドバイスによりショートステイを利用したところ、排泄の失敗が減少しました。ショートステイでは、女性が立ち上がるなどのサインを見逃さず、迅速にトイレへ連れて行くことで対応していたのです。自宅で24時間対応するのは難しくても、どういう動きがサインなのかを理解すれば、排泄の失敗の頻度が減る場合もあります。

実例:アルツハイマー型認知症の男性のケース

70代の男性は中等度から重度のアルツハイマー型認知症ですが、独居生活を送っています。数か月前から突然の放尿の問題に直面しました。リハビリパンツを脱ぎ棄て、脱衣所で放尿したり、リハビリパンツがうまくはけない状況が生まれました。数か月前に状況を確認すると、家族の要望によりアルツハイマー型認知症の治療薬リバスチグミンパッチを開始していました。この薬の副作用が原因であることが推察されました。リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミンはいずれも脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を阻害する作用があります。アセチルコリンは排尿にも関連しており、タイミングが合わなくなったのだと推測されました。リバスチグミンの使用を中止したところ、排泄の失敗は大幅に減少しました。
また、部屋の隅にベットがあると、部屋の中心の空間が広いため、伝い歩きができません。そのため、療養環境でもあるので、ベットを部屋の真ん中に置いて、壁やふすまを伝いながら安全にトイレに行けるように工夫をしました。
さらに、体感の支持性を強化するため、20㎝程のボールでの部屋の中でのキャッチボール、玉つきをリハビリとして取り入れました。
やっているうちにみるみる体幹の安定性は改善しています。

まとめ

認知症における排泄の問題は、様々なパターンがあり、すべては紹介しきれません。今回は2事例を紹介しました。排せつ問題は、本人と家族だけで対応するのは困難です。しかし専門家の介入により改善できる場合があります。しかし、改善するにも数か月ぐらいの時間が必要です。心が折れる前にできるだけ早く医師、ケアマネジャー、訪問看護、訪問リハビリ、ヘルパーなどの専門家と連携し、その状況が起きた原因を調べることから始めていきましょう。


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