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発達障害と認知症

発達障害は、生まれつきの脳の機能障害です。わかりやすい症状がある方もいらっしゃいますが、ちょっと変わった子供ぐらいに思われて、見過ごされて、大人になってから診断される方も多くいらっしゃいます

認知症の場合は、いったん発達した知能が脳の機能低下により低下した状態と定義されます。発達障害と認知症の鑑別は、実はけっこう注意する必要があります。つまり、これまで一緒に暮らしていた方、家族の提供してくださる家庭状況や生活状況などの情報が診断のカギとなります。

事例(複数の事例を合わせた経過です)

58歳の女性は、物忘れがひどく、糖尿病のインスリン治療ができなくなった、糖尿病の治療薬に変えても低血糖発作を起こしてしまう。認知症になったのではないかと相談に来られました。確かに、近時記憶障害が強いものの、道に迷うことはなく、簡単なコミュニケーションは取れる方でした。ただ、服薬は本当にでたらめで、1日に3日分を一緒に服用してしまうことも少なからずあり、危険な状態でした。

ある時、遠方に住むお姉さんからお話を伺うことができました。どうしてこれまでできていた糖尿病の治療が難しくなったのか?と聞いたところ、思い出したように、もしかしたら5年前に母親が逝去したあとから、糖尿病が悪化したかもしれない、もともと学校の成績が悪かったとのことでした。これまで親戚の工場で働くことはできていたが、いろいろ配慮してくれてお小遣いをもらうような仕事だったとのことでした。
つまり、5年前までインスリン治療ができていたのは、お母さんが支援していたからで、もともと本人が一人で行っていたことではなかったのです。発達障害が疑われましたので、地域の専門機関を受診してもらったところ、発達障害があると認定されました。また知的発達の遅れも認定され、療育手帳も発行されました。

その後の支援経過

発達障害の場合は、週3回まで医療保険での精神科訪問看護の利用が可能です。また自立支援医療制度での訪問看護が可能となるため、自己負担額も収入によっては押さえることが可能です。この方の場合は、58歳ですが糖尿病による末梢神経障害もありますので、特定疾病の適応を受けて介護保険を利用することが可能です。介護保険によるヘルパーの利用も行っています。訪問看護・リハビリテーションと生活支援であるヘルパーの利用、さらに転倒防止のための福祉用具も借りることができて、一人暮らしを継続しています

認知症の場合ですと、訪問看護は特殊な場合を除いて介護保険の訪問看護を利用することが多いです。その場合、介護保険内で訪問看護とヘルパーを両方利用しなければならず、常に限度額を意識せざるをえません。服薬の支援に、日常生活支援を日に何度も必要な場合は、単位数が足らなくなってしまうことも少なくありません。

50代の方の認知機能障害は、若年性認知症、高次脳機能障害も起こりうる年齢であり、鑑別には慎重を要します。受けられる社会保障制度も異なりますので、きちんと診断を付けることは大切です。


認知症についてどのような人とつながったらよいか学びたい方にお勧めです。


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