AIの開発ってなんで高いの?

どうやら世間的にはAIの開発(PoC)は高額らしい。何故そうなってしまっているのか、AIの開発会社の経営者が答えてみます。

あくまで個人の所感であり、いくつか原因はあり、時と場合によって異なったりすると思うので、ご了承ください。これからAIの開発を委託しようとしている企業へのアドバイスのように考えていただきたいですし、AI開発の難しさなどを理解していただきたいという気持ちも込めて書きたいと思います。

何故高いのかの原因は下記のようなことが考えられます。

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AIの開発会社や開発委託内容によって異なりますが、まず一番に挙げられるのが『AI人材の給与高騰』です。

某大企業が新卒でも1000万円の年収を出すと打ち出したり、某有名AI開発会社のエンジニアやリサーチャーが3000万円もらっているなど、AIの開発を高度にできる人材の給与はかなり高騰しています。
彼らを動かすわけですからAIの開発をする為にはそれ相応のお金を頂かなければいけません。よって従来のシステム開発の費用とは比べ物にならないほど高くなってしまうこともあります。それくらい経験豊かで高度にAI開発ができる人材はまだまだ少ないということです。

ちなみにじゃあ高額の給与を出してAI開発のエンジニアを採用しようという考えを持つ事業会社もあるかもしれませんが、それは注意が必要です。優秀な人であればあるほど、多くのオファーがありすぐに転職できちゃいます。そんな人をお金だけで確保しておくことは難しいです。働く環境(PCなどの計算環境など)ややりがいのある仕事(データが沢山ある)など、給与以外の部分の整備をしなければそういった優秀な人材はすぐにいなくなってしまうでしょう。

次に挙げられるのが『やってみなきゃわからないという不確実性の高さ』です。以前やったプロジェクトと全く同じデータでやりたいことも全く同じということであれば、やる前から分かる部分もありますが、そんなことは稀です。どんな精度が出るのかも確実に言うことはできませんし、ウォーターフォール型の開発ではなくアジャイル型の開発であり、工数も読めない部分が多いです。

するとどうなるかというと、詰め込んだスケジュールや見積もりではなくある程度バッファを積んだ見積もりを出さなければなりません。
例えば結果的に2ヶ月で終わるプロジェクトも不確実性が高い部分があるので3ヶ月で提案しておくといった感じです。そうなるとその分お金をくださいということになってしまうのです。
経験の少ない開発会社はどうしてもバッファを積みがちです。

ちなみにですが、情報が一人歩きしないように契約書には勿論、提案書にも精度などは書きませんが、自信のあるプロジェクトとそうではないプロジェクトがあったりします。エレベーターまで歩いている際に「ぶっちゃけ今回いけそうですか?」と聞いてみたら本音が聞けるかもです。

3つ目は、『複数事業をやっている中で、AI受託開発で稼ぐ必要がある』という理由です。これはあまり理解されていないところがあるかもしれませんが、こういった要因がある会社は少なくはないはずです。

どういうことかというと、あるAI開発会社が、Xという事業を展開しているが、このXという事業は20名ほどの従業員が携わっているものの未だ投資フェーズで赤字を垂れ流している。この状況を打破する為にAIの受託開発を請け負っているということもあったりする。そうするとXの赤字分も補填するような売上を受託開発で稼がなければいけないので、どうしても高額になってしまうといったことです。こうした他事業が上手くいっていればむしろ適正な価格で見積もることもできるのですが、AI開発を委託する時には相手の会社がいくつ事業やっているかもベンチャーの場合は注目すべきです。
逆に言うと大手企業は他事業で設けているので、AI開発は安くするということもあるかもしれません。(あまり聞きませんが笑)

4つ目は3つ目と少し似ているのですが、『事業規模の割に社員数が多い』という理由です。
大きなAI開発会社であればあるほど、管理部門などの費用が多いと言えます。そうしたコストも鑑みて見積もりを作らなければならないので、高額になることもあるかもしれません。

最後に『単価(人工)計算による弊害』です。これはシステム開発の悪しき文化なのかもしれませんし、開発会社からすれば助かる話ですが、1つ目に話したようにAI開発のエンジニアは高額です。そしてどうしても人工単価でプロジェクトを考えてしまうので(これは開発側も委託側も)、そりゃあ高額になってしまうわけです。

本来、人は価値を感じてそれに対する対価を支払うわけです。私の古巣である東京ディズニーリゾートでも人が何人働いているから数千円くださいというビジネスではなく、ディズニーで遊んで楽しいから数千円払うわけです。でも未だにシステム開発同様にAIの開発も人工単価で見積もりを計算してしまっているので高くなってしまうのです。

AIの開発に数年携わっている身として、何かヒントになればいいなと思います。
ちなみに、KICONIA WORKSはどうなのかというと。

1. KICONIA WORKSのメンバーの給与は高いのでは?
→普通よりは高いです。でもそんな高くない。むしろ給与以外の部分での社員への価値提供に力を入れています。

2. KICONIA WORKSでも不確実性高いから高いんでしょ?
→もう5年くらい、多い時は年間30個以上プロジェクトをやっていて、業界もバラバラです。経験豊かなので不確実な部分が少ないことが多いです。なので見積もりはキュッと縮めたものが多いです。

3. KICONIA WORKSでも他の事業へ投資して高いんでしょ?
→むしろ早く他の事業で稼いでAI開発の受託をもっと安価にやってあげようと考えて事業創造し始めてます。ちなみにこの事業への投資は極限まで小さくしています。

4. KICONIA WORKSでも管理部門とかのお金はかかるでしょ?
→管理部門の正社員はゼロです。マーケティングもしていません。こうして浮いたコストを反映した見積もりを心がけています。

5. KICONIA WORKSでも結局人工単価で高いのでは?
→残念ながら未だに多くが人工単価で見積もりを計算しています。これをなんとか価値ベースにしていきたいと強く前々から思っていて、ついに今年価値ベースで見積もりを決めるようなことをしていきます。
まだ一部顧客への提案となってしまいますが、興味ある方是非ご連絡ください。

ダラダラと書いてきましたが、今回書いたことは是非AI開発を委託しようとしている事業会社さんに参考にしていただきたい、そして従来のシステム開発と違う点があることを認識いただきたいと思うとともに、現在コロナの影響でどの会社も新規投資の予算縮小が発生しているだろうし、AI開発の内製化も進んでいる中でAIの開発会社も今までのような高額な見積もりが不可能になってくる可能性もあるので、頑張らないと生き残っていけないぞ!という気持ちも込めています。

多くの仲間と業界を盛り上げていきたいし、顧客企業にとって良いものを引き続き生み出していきたいと思います!


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