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「王様は裸だ!」という番組

GW真っ只中5月1日の夜に「ななにー」と言う元SMAPの三人がやっている
Abemaの番組に出演した。
「テレビのこれからを考える」みたいなコーナー。その中で僕がキャイ〜ン天野の「今、電波少年をやるとしたらどんなことをやりますか?」と言う質問に対して答えたのが表題にした「王様は裸だ!と言い続ける番組をやりたい」だった。

ロシアのウクライナ侵攻から約3週間が経った3月14日にロシアの「第1チャンネル」のニュース番組の生放送中に同テレビ局の女性社員がキャスターの背後で「戦争をやめて」などと大書された紙を掲げた。女性はテレビカメラに向かい「戦争反対」と叫び、「プロパガンダを信じるな」などと書いた紙を広げた。

このニュースを見て「これは日本のテレビ局では起こるだろうか?」と考えた。この行為は単独犯ではないと思われる。こんな大きな紙を持ってスタンバイしキャスターの後ろに映り込むことを単独で成せるとは思えない。カメラマンもスイッチャーもキャスターも多分知っていた。彼女自身は単独だと言い張り周りも知らなかったと口裏を合わせるだろうが本当にハプニングだとしたらあのスピードでのスイッチングにはならないしカメラマンもサイズを変えキャスターは何らかの反応をする。だからあのスタジオにいた人は協力者だ。
そんな状況だったとして『日本ではこのことは起こるだろうか?』ともう一度考えた。

日本のテレビ局ではこんなことが起きる。
2005年「第2日本テレビ」を始めるときに渡米してNBCのトップにこんな質問した時の答えを思い出す。
当時アメリカのテレビ番組のネット配信は既に始まっていて例えば土曜日の夜の大人気バラエティショー「サタデーナイトライブ」も自社サイトNBC.COMでオンライン版の配信が始まっていた。僕の質問は「アメリカは出演者やスタッフがユニオン(組合)に所属していてその権利関係のクリアが大変だと聞いているがそれはどうなっているのか?」と言うものだった。そのトップは意外そうな顔をしてこう答えた。「そこの新しいビジネスがあるんだ。すぐにやるに決まっているだろう。権利関係?ハードネゴシエーションはこれからだ!」Hard negotiation この単語をはっきりと覚えている。
そしてそれから2年後の2007年11月全米脚本家組合がストライキに入ってアメリカのテレビは5カ月間再放送だらけになった。ハードネゴシエーションが決裂したからだった。新作を脚本家やライターが書くことをストライキでボイコットしたから再放送しかなくなくなったからだ。理由はもちろんネット配信をした時の取り分。そして4カ月後全米映画テレビ製作者協会と妥結した。
つまり彼らは”不満があればストライキでもなんでもして戦って勝ち取る”。つい先日も大リーグの選手会がストライキをして開幕日が遅れるかもしれないと言う事態が起こった。アメリカは民主主義をそう言うものだと理解し実践している。
それに対して日本は「みんな」がどうするかと言うことが優先される。
和をもって尊しと成す。
関係者・関連団体と調整をし会議を重ね合意形成を時間をかけて行う。
これが日本の民主主義の形だ。
お互いが権利主張をして折り合わなければ”戦う!”そして勝ち取った権利は当然ながら毅然と行使する。だからアメリカのテレビのネット配信は進んだ。一方日本のテレビのネット配信は「みんな」が合意するまで時間をかけた。暫定料率なるものも決められた。でもほとんど使われなかった。それは勝ち取ったものではなかったからかもしれない。丁寧な作業というやつが会議室の中で行われ会社やそれぞれの団体にフィードバックされて文書で回覧された。時間は誰の責任ということではなくゆるゆると過ぎていった。「みんな」の合意形成がなされるまで一歩も出ない。これが日本の民主主義の形だ。

もう一つ。
欧米では「俺はマスクはいやだ」とコロナ蔓延の最中もいたくらいだから治る気配を見せつつある今は街中でマスクをしている人はほとんどいないらしい。それに対して日本では法律や条例で決まったわけではないのに「みんな」がマスクをしているからほぼ100%の人がマスクをこの2年間してきた。そして今も。暫定料率のように”国が決めてくれ”るのを待っている状態のようだ。感染と蔓延を防ぐためには良かったのだろうと思うけれど違う方向から考えるといかに「みんな」の顔色を伺う国民性か?「自分はこう思う」より「みんなはどう思っているか?」を気にしてだから「○月○日からマスク解除!」と発表してくれないかと国に迫ったりしてみる。
つまりこのことって『決めるのが遅い』ってだけじゃなくて『決まったらガ〜ッといく』つまり一方向に走り始めたら逆らう人がいなくなるのがこの国なんじゃないか?
そして思い出す言葉は「一億火の玉!」「欲しがりません勝つまでは!」

最初のロシアのテレビ局の話に戻る。
日本が戦争を始めそうになったら「みんな」がそっちに走り始めたら一気に行ってしまうのではないか?スタジオに飛び出したあの女性が日本だとしたら『非国民』と満場一致で吊し上げられるだけではないのか?『お前の家族が殺されてもいいのか?』きっとそんなことが言われるのだろう。何が正しくて何が正しくないかきっとわからなくなる!でも日本人は他の国民に比べて一つになるのがきっと早い。間違いなくそう思う。団結力があるから?そうじゃない。「みんな」がどうするのかが判断の最重要項目だからだ。

だから「王様は裸だ!と言い続ける番組」があったほうがいいと思った。いや絶対にあるべきだ。
大上段に「裸だ!」言い切らなくてもいい。お笑いにまぶしたバラエティ番組で。
「王様は裸なんじゃない?」
「王様は裸に見えない?」
「ひょっとして間違いかもしれないけど王様は裸じゃないよね?」
「王様は裸だ!なんてね」
王様とはその時の権力者ではない。その時の「みんな」だ。
そこに「あれ?違ってない?いやもう一度少し立ち止まっても良くない?」とギャグで笑いにまぶしながら言っている番組はYoutubeでもNetflixでもないどこかのテレビ局が放送しているべきだと思うのだが。。。

とても難しい。正直無理なのかと思っている。でも「みんな」の圧力が強い日本だからこそ必要だと思う。

誰かやってはくれないか?

今のうちから始めないと気がついたら「一億火の玉!」「欲しがりません勝つまでは」とテレビが叫んでいるかもしれない。いやそっちの可能性がとても高い。

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