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ロックしかねーだろ、人生は (最初の旅 vol.14)

困ってしまった、調べておいたホテルが満室。
まじかー、と困り顔をしていたらフロントのおっさんが、エアコンなしだったら15ドルであるぞ、との提案をしてきた。ん?部屋あるのか?
なんだこれは、足元を見られている、どう考えてもこのホテルでエアコンなしで15ドルはぼったくりだ。8ドルはどうだ?と交渉してみるが、No、とのこと。うーむ、ここでぼったくり案を飲むのは癪だ。それだったらいいです、とホテルを後にする。値下げ案を再提案されることも期待したが、それもなくトボトボとホテルを出る。

もうほんと真っ暗な町中。これは早く決めないとまずい。
比較的通りにはホテルが結構あったので、安ホテルを片っ端から突撃してみるが、どこも満室 or 30ドルなどのぼったくり価格ばかり。いや、今だったら30ドルは普通なのだろうか分からんが、当時はね、どう考えても足元を見られた値段なわけなのだ。それを簡単に飲むのは日本人が舐められる元凶となりかねん、おれっちは戦うぞ、最後の一滴の血が尽きるまで。

一時間以上町中を彷徨った、安ホテルに入っては値段交渉をして敗れの繰り返し、もうクタクタだ。蒸し暑い中歩き通しで汗はダクダク、もうほんとダメだ、諦めよう、最初のホテルであるPerfume Grass innに戻ってエアコンなしの15ドルで手打ちにしようと決心をした。仕方ない、もう十分だ、これ以上の交渉は無駄だ、と思い再訪してフロントのおっさんにへローアゲインと笑顔で、さっきのエアコンなしの部屋頼むよ、って白旗を上げると、なんと、なんとその部屋が埋まったとのこと! まじか、まじなのか。

ああ、やっぱ俺は今日死ぬ、お前は明日だ、バタンQ。
失意の中、もう動けない、フロント横にある長椅子にリュックを放り投げ、座り、放心を続けた。疲れたし、腹減ってるし、足も痛い、眠い。
そんな絶望のおれっちの前を一人の少女が通り過ぎた。少女と言っても二十歳そこそこか、顔から推測するに日本人っぽい。しかし、おれっちは絶賛放心中だからそんな意識なく、今考えるとそうだったなー、って感じで、その時はほとんど無意識の中。

フロントのおっさんがその少女に話しかけ、何やらこちらを見ていた。そしたらなんと、こっちに来て話しかけてくれる、そしてホテル探しを一緒にしてくれるとのこと!フロントのおっさんが、お前も日本人なんだから、あの日本人を助けてやれよ、と言ってくれたらしい。おお、助かる、本当に助かる。ベトナムに来て初めて人の優しさに触れたおれっちは感動した。


咳をしても一人、コホンコホン。 (ガサガサ) おい、大丈夫か? えっ、誰?