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【試し読み第3話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

「私、男と恋愛する気は無いの」
 新宿歌舞伎町のダイニングバー。少し離れたバーカウンターでは、長身が目立つ長髪の店員が常連であろう女性と楽し気に話している。その隣には酔っぱらったカップル。反対側の奥の席では、大学生の団体が怒号に近い声を上げて盛り上がっていた。ほの暗い店内に溢れる数多の声から、遥は小さくかすれた千尋の声を掬うので精一杯だった。
「それは、なんで?」
「男の人ってなんか気持ち悪いんだよね。アプリで何人か会ってヤってみたけど、痛いし気持ち悪いし、嫌悪感しかないっていうか」
「そうなんだ…」
 千尋は意味もなくカンパリソーダのグラスの汗を細い指で拭い続け、たまにその小さな口に液体を運んでいた。反射で遥もそれに倣って喉を潤す。
 それはアプリで会った人だからなのでは。体本位の人とセックスしても気持ちいいはずが無いのでは。そのセリフが喉まで出かかったけれど、遥にはそもそもそんな経験が無いので押し黙るしかなかった。
 どきどきしていた。酔いが回っていたのもあるし、ほの暗い店内でなまめかしく光る千尋の唇から突然性的な話が出たことに遥は動揺していた。反応に困って、ツマミに注文したバケツいっぱいのポップコーンを数粒摘まんで口に放り込む。
 会うのはこれで五回目だった。千尋は寡黙だが、細々とした趣味が合って、一緒にいるのは居心地が良かった。

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2,416字
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