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盤上コミュニケーションをサポートするTシャツを作りました

2014年、私はそれまで3年間住んでいた中国東北部の都市、大連を離れ、華東地域沿海部に位置する上海に移住しました。大連には私がボードゲームに初めて出会ったコミュニティーがあり、定期的に日本語でボードゲームを楽しむことができました。しかし、上海に移ると、ボードゲーム環境もリセットされてしまいました。

初めは日本語でゲームができるコミュニティーを探しましたが、時間・場所・人間関係などを総合的に考慮して、上海には私に合ったコミュニティーはありませんでした。そこで、現地の人々のゲームコミュニティーを見つけ、参加させてもらうことにしました。

私は中国で一人で生活していけるだけの中国語口語能力はあったものの、ネイティブではないので、中国人のコミュニティーに混ざれば、話についていけないことはあるし、言いたいことを上手く伝えられなかったりもします。

ボードゲームの面白いところは、そのような人間が混ざっていても、ルールさえ共有できていればボード上でコミュニケーションが成り立つことです。会話には加われなくても、定期的に手番が回ってくる。自分や相手の打った手によってインタラクションが生まれ、なんとなく相手の意図がわかってきたり、出し抜かれて悔しい思いをしたりする。この盤上コミュニケーションと呼ぶことができる交流が、ボードゲームの醍醐味であると私は思います。

さて、私が上海のコミュニティーに参加する時、ほとんどの人は好意的に受け入れてくれました。しかし、なんとなく歓迎していない雰囲気を出しているように感じる人もいました。反日感情が、とかいう話ではなく、普段のコミュニケーションが通用しない相手への恐れ・いらだち・戸惑いのようなものの発露だったのではないかと思います。

歓迎されていないかもと感じる経験を一度すると、その後もふと「もしかしたら自分は歓迎されていないかも」と頭をよぎることが出てきます。立場を変えると、日本で生活している外国人も「歓迎されていないかも」と感じることが多々あるでしょう。そのことを意識し、相手を受け入れる気持ちを示すことが、異文化コミュニケーションにおいては重要です。

ここで話は変わりますが、昔ベトナムに住んでいた私の友人、ネルソン水嶋こと水嶋健氏が、昨年クラウドファンディングで資金を調達して「GINO-T」というTシャツを作りました。仕事中に使う用語の日本語・ベトナム語対訳14種類を、それらのイラストと共にプリントしたTシャツです(現在、水嶋氏はイラストと複数言語の組み合わせを「COMIGRAM」と名付けて展開しています)。ベトナム人技能実習生と、彼らを受け入れる現場の方々のコミュニケーションの促進を目的としていました。

水嶋氏によれば、このTシャツは実用性以上に、「コミュニケーションが取りたい」という気持ちを視覚的に伝えられることが重要だそうです。私が中国で生活していたときの経験とリンクして、これには非常に納得しました。そして、ボードゲーム用語でもこのようなTシャツを作れば、ボードゲームを通じた盤上コミュニケーションをより円滑にできるのではないかと思いました。

このような経緯で「ボドグラムTシャツ」を制作しました。「ボードゲームのCOMIGRAM」で「ボドグラム」です。もちろん制作にあたっては水嶋氏に相談し、イラストレーターの方とのやり取りや全体的なデザインは水嶋氏側が、用語の案出しは私が行っております。以下のネットショップで販売しておりますので、ぜひご覧ください。

※2023/11/11追記
現在はSUZURIでのみ販売しています。

非日本語ネイティブとゲームをする場面での使用を想定しておりますが、聴覚障害がある方が混ざる場合でも使えるかと思います。ゲーマーぶりをアピールしたい方はぜひ普段使いに挑戦してみてください。Tシャツ単独では主張し過ぎでも、上にジャケットを羽織ったりするとさりげなくなっておすすめです。

ノートに「スキ」をしていただくと、あるボードゲームの中国語タイトルと、それに対応する日本語タイトルが表示されます。全10種類。君の好きなあのゲームはあるかな?