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【本】阪急電車/有川浩

【あらすじ】
隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車—人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

自分は阪急ユーザーでこそなかったが、生まれてから24年間大阪に住み続けていたこともあって、登場する地名や駅名は聞き覚えのあるものが多く僅かな親近感を覚えた。

街並みであったり建物であったり、描写が具体的であるほどに物語はリアルな生活感で溢れていて、心の中にスッと溶けるように馴染んでいく。

この小説の登場人物は、図書館通いが趣味の青年、孫娘を連れた老婦人、結婚式帰りのOLなど、なんの変哲もない至極普通の老若男女であり、物語は特に大それた事件が起きるでもなく進んでいく。

そしてそれらは偶然時と場所を同じくして見聞きしたモノをきっかけに出会い、交じりあう。

「ちょっと人生の機微を味わってきました」

人生の機微。

それはバタフライ効果のように、彼らの人生の行き先を大きく変化させる僅かなきっかけかもしれない。

自分の周りにもたくさん散りばめられているであろう人生の機微を、見落とさず拾いながら生きていきたいなと思いました。

先々週の金曜日、新宿で晩ご飯を済ませてそろそろ帰ろうかと駅の方向にふらーっと歩いているところに声を掛けてきた三人組の男女。

話のきっかけは
「ここらへんで空いてそうなご飯屋さん知りませんか?」
と。

実はぼく大阪出身であまり知らないんですよーなんて話していると、三人組は自分と同年代で内一人は同じ関西出身だということがわかった。

話が盛り上がってきたところで一番年長らしい男が「よかったら今度飲みませんか?」とスマホを取り出す。

警戒心が強い性分なのでその時は咄嗟に断ってしまったが、あれは人生の機微だっただろうか。

いや、きっと勧誘。

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