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これからブランドを始める人に知ってほしい、ぼくが実践した5つの手順

ぼくは今、クリエイティブ×テクノロジーでブランドのマーケティングを支援するコクハク株式会社という会社を経営しています。

いわゆる企業や商品、サービスをクリエイティブやデジタル活用などで支援するエージェンシーではありますが、同時に自社プロダクトとして「チョコレートブランド」や「コオロギドレッシングブランド」を開発・販売してもいます。

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「#読むチョコレート」というコンセプトで開発した「Chocolate Library」は、ECでの展開を主としながら、2020年2月のバレンタインシーズンでは渋谷PARCOのメイン企画として選ばれ、9日間のポップアップショップを展開。その他、BEAMS 六本木ヒルズや渋谷ヒカリエなど、ファッションと親和性の高い店舗で展開しました。

● https://chocolibrary.theshop.jp/

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日本橋馬喰町にレストランをもち、昆虫食の魅力を探究するチーム「ANTCICADA」とコラボレーションしたコオロギドレッシング「2/3」(two thirdsと読みます)。食材としての昆虫に着目し、その美味しさを最大限に引き出した日本初の昆虫ドレッシングブランドで、未来の食のスタンダードとして期待される昆虫食を、日常的な調味料として味・パッケージともにこだわり抜き製品化しました。

● https://two-thirds.jp/

第三者と当事者、両方の立場でブランドに関わっている経験をもとに、ぼくのノウハウを紹介したいと思います。

なぜそんなことを書こうと思ったかというと、一過性のバズを生むのではなく、最低でも3〜5年かかると言われるブランドの作り方について、頼りになる情報が少ないと感じているからです

企業内で新規事業の立ち上げにアサインされた人や、これから起業を考えている人、副業でブランドを作ってみたいと考えている人など。プロダクトじゃなくても、企業のオウンドメディアやイベントでもなんでも、あらゆることに応用できると思います

特に最近はD2Cが盛り上がりを見せています。
いろいろなブランドが立ち上がる中で、ユーザーに愛されるブランドが1つでも多く日本発で生まれてほしい。そんな思いを原動力にまとめていきたいと思います。

今から前提となるステップ0と「5つのステップ」を紹介しますが、ぼくは本当にこのとおりやっているので(笑)、ぜひ参考にしてみてください。

ステップ0:やる理由を5回考える。

会社から任された場合でも、自分の意志で立ち上げる場合でも、マインドセットこそがブランド創造の原点です。

そもそも、ぼくは「やりたいことがあってそれに取り組めている人」は、実はほとんどいないのではないかと考えています。だからこそ、自分がそのブランドをやる意義を確たるものにすることが大事です。熱量ともいえますし、「言い聞かせる力」ともいえます

自分自身のことも振り返って考えると、人間は水と同じで、低い方、易き方に流れてしまいがちだなと思います。やる理由に少しでも隙や揺らぎがあれば、困難に直面した際に歩みが止まってしまうかもしれません。

トヨタの「なぜ5回」じゃないですが、5回の「なぜやるのか?」に答えられるようになって、初めてスタートラインに立てると考えています。

ステップ1:誰とやるかを決める。共犯者をつくる。

どんなプロダクトにするかを考えるよりも大切なのは、一緒にやる仲間です。

職人や圧倒的な才能があれば別なのかもしれませんが、、基本的には1人でブランドをつくることはできません。"1人目"がやるべき仕事は、最初のコンセプトを用意し、それに共感してくれる人を集めることです

たとえばぼくが立ち上げでお手伝いした、代々木上原の「sio」というレストランがあります。オーナーシェフである鳥羽周作さんはまさにこの仲間づくりの天才で、店舗ロゴや食器、音楽に至るまで、コンセプトを伝えて共感してくれたクリエイターにすべてを任せました。こうするとどうなるかというと、簡単に言えば「あの店はおれが立ち上げに関わった」と語ってくれる身内、つまり「共犯者」が増えていきます。ぼくが先ほど「立ち上げで手伝った」と書いたのも、彼の術中にあるのかもしれません(笑)。

共犯者が多ければ多いほど、いろんな方面からファンが集まってくるのです。

ステップ2:コンセプトを“ふわっとした”状態から完成形に。

共感してくれる仲間を揃えたら、次は彼らと共にコンセプトを磨き上げます。

自分の中である程度「〇〇をやりたい」というふわっとした思いがある状態で、そこから先は仲間とコンセプトを考えるのが肝です。先ほどの「共犯者」になれるかなれないかは、ここでどれだけ仲間に自分ごと化してもらえるかにかかっています。

たとえばぼくが「Chocolate Library」を作ったとき、最初は「生産者の想いが伝わるチョコレートブランド」という話を仲間にしました。そこから紆余曲折や喧々諤々があり、最終的に「#読むチョコレート」になりました。自分の「やりたい」と仲間の「やりたい」が両立するスポットをうまく見つけることが大切です。

ただ、最初の状態から形がだいぶ変わったとはいえ、「情緒的な価値に重きをおいたチョコレートブランド」という点は変わっていません。ブランドオーナーの最初の思いと、共犯者からの意見はバランスを取ることが大事です

ステップ3:50%で市場に問う。

コンセプトができたら、それを早く形にして、一度ユーザーからの反応を見ます。

大切なのは、この時点でプロダクトを磨くことにこだわりすぎないこと。もちろんあくまでも”ブランド”なので、その”ブランド”の肝になる部分が50%ではその後の変更が利かなくなるなど致命傷になりかねないので、そこは要注意です。

あくまでテストするのは「コンセプトが市場で通用するかどうか」です。細部にこだわっているうちに競合が出てきてお蔵入りになってしまうのが一番もったいないということを、チームの共通認識にしておくことが大事です。

また現実には、このステップを経てコンセプトを考え直さないといけない場合もあります。その場合はまたステップ2に戻ります。

ステップ4:P/Lを精緻にする。出口を決める。

「コンセプトが通用する=ビジネスになる」と分かったら、きちんと数字で考えていきます。もちろん、プロダクト開発・製造の段階で粗いP/Lをつくっっていると思いますが、ステップ3での検証を踏まえてより精緻なものをつくっていきます。

もう一つ大事なのが、「ブランドとしての出口はどこか」を決めておくことです。というのも、当初の思惑や事業計画からずれた時に、立ち戻れるところがないと、途中でプロジェクトが空中分解してしまうからです。

「Chocolate Library」の例を出せば、「売れれば売れるほど会社としての経営がうまくいく」ということではないことが早期でわかりました。このとき、チーム内で話し合って「商品をつくるのではなく、ブランドをつくる」という気持に切り替え、P/Lを引き直して、違う目標(出口)を考えました。もしぼくがチョコレート専門店であれば、チョコレート事業で売上最大化を優先していたかもしれません。が、コクハクという会社はエージェンシー事業もやっていたので、そのショーケース(ブランドプロデュースの成功事例)として位置づけることを目的として、ブランドの在り方を設計しました。

これに限らず、「当初想定していたよりも利益が出ない」という話はブランドをやっていてよく耳にします。だからこそ、出口を決めておくことが欠かせません。

ステップ5:PRやプロモーションを考える。

ここまでのプロセスを経て、コンセプトやブランドの在り方が何度か見直され、現実的な形になってきているはずです。もうブランドとしての方向性がブレることは少ないと思うので、ここまできてようやくコミュニケーションのことを考えます

多くの場合はPRや広告、販促のエージェンシーもしくはフリーランスのプロの方々に仕事を依頼するかと思います。このときに、ブランドコンセプトを理解した上で協力してくれるパートナーかどうかが、見極めのポイントです。たとえば、そのエージェンシーや担当者の得意としていることがとにかくバズらせることなのか、それとも「知る人ぞ知る」状態を丁寧に作り込むことなのかなど、ブランドの方向性によってエージェンシーや担当者の相性が分かれてくるはずです。

まとめ:バリューチェーン全体を俯瞰することが大事

全体を通して理解してもらうために、あえてそれぞれの説明を必要最低限にしてみましたが、それでもある程度のボリュームになってしまいました。

これは、一口にマーケティングといっても、実はバリューチェーンが長いということの現れかもしれません。大まかなステップは上のとおりですが、プロセスをによっては商品を買ってもらった後のサポート対応などもあったりします。長く続くブランドであれば、コンセプトを時代に合わせて見直す必要が出てくることもあるかもしれません。

今回はブランドの作り方を概念的に紹介しましたが、より理解を深めてもらえるよう、具体的な例を紹介していきたいと思います。ということで次回は「立ち上げ3か月のチョコレートブランドが渋谷PARCOに選ばれた理由」です。ぜひお楽しみに。

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著:木本考紀 構成:小野祐紀 

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