*記名仕事中心に随時更新中です。 香月孝史(かつき・たかし)1980年東京都生まれ。 インタビュー(取材・ライティング)、解説文、論考、コラム、ブックライティング、各種原稿構成など、記名原稿・無記名原稿いずれもお引き受けしております。お気軽にお声がけください。 東京大学大学院学際情報学府、博士課程単位取得退学。主な研究領域は文化社会学、メディア論。大学院博士課程在籍中よりライターとして活動。 連絡先は ktsktksh@gmail.com です。 ◆書籍単著 ・『乃木坂
田島悠来編『アイドル・スタディーズ――研究のための視点、問い、方法』(明石書店)に寄稿しました。 香月の担当パートは、第4章「異性愛規範と「恋愛禁止」はいかに問い直されるか」とコラム3「アイドルに投影されるもの」の二つです。 第4章「異性愛規範と「恋愛禁止」はいかに問い直されるか」では、アイドルにかかわる作り手やメディア、そして実践者であるアイドル自身の語りを手がかりに、ジャンル内で慣習化している事象や価値観がいかに維持されてきたのか、そのさまを概観しつつ、それら半
上岡磨奈さん、中村香住さんとの共編著『アイドルについて葛藤しながら考えてみた――ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉』(青弓社)が刊行されました。 各章の執筆は編者3人のほか筒井晴香さん、いなだ易さん、DJ泡沫さん、金巻ともこさん、田島悠来さん、松本友也さんに担当していただきました。執筆者それぞれの問題関心やアプローチを持ち寄っていただき、「アイドル」と呼ばれる芸能カテゴリーの範疇およびその周辺にまつわる悩ましさや問題性を、いろいろな視野から捉える一冊になったと思います
頭にめぐった順に書いていくので、はっきりと結論めいたものが出るわけではないのですが。 エイプリルフールの件、投稿を見た瞬間に「これはあまりに迂闊なのでは」と感じて、ただ、そう考えた瞬間の己の思考を省みたとき、当人たちの性的指向を外側から勝手に推測・断定し、そのうえで意図まで勇み足で読み取ろうとしていないか?ということも考えないわけにはいかず。 仮にマイノリティを公言している立場からなされた発信の場合、現在の社会制度に対するカウンターにだってなりうると思いますが、さり
乃木坂46公式から3月3日に一定の声明が出たのですが、やはり演者当人が幾重にも多大なものを背負わされている、この状況の(「このジャンルの」と書くべきか、「この運営の」なのか、「メディアやファンダムの」なのか、おそらくそのすべてでしょう)罪深さを思わないわけにはいきません。 本来ならば踏み込まれる必然などないはずの過去のプライベート領域について、自らの証を立てるように当人が細かく開示せねばならず、そのうえで遡及的に謝罪の言葉をつづる事態になっている。ただでさえ、流言混じり
遅まきながら、欅坂46のドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』(監督:高橋栄樹)を少し前に観ていました。機を逸した感はありますが、過去の物語として流れていってしまう前に書き留めておいたほうがいいなと思いまして。 このドキュメンタリーは、おおよそ欅坂46のデビュー前後から今年半ばまでの歴史を追尾していますが、多岐にわたるメンバーの活動のうち、どの側面にクローズアップするかを相当に限定した作品になっています。すなわち、使用されるフッ
配信開始から少し時間が経ちましたが、今春に乃木坂46の4期メンバー主演で制作されたdTVのドラマ「猿に会う」について。 企画全体としては、西加奈子初期の短篇小説二篇「サムのこと」「猿に会う」を原作にしたドラマのうちの一篇です。 二つのドラマいずれにも共通するのは、原作の登場人物のどこか達観したようなマイペース感のある風情を読み替え、より切実に主人公たち(そしてアイドルたち)の人生全体を見通す射程を持っていたことでした。 それゆえ、この改変に導かれたドラマ版「サム
新著『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』(青弓社)を刊行しました。 本書は、「演じる」をキーワードにしながら、アイドルというジャンルを生きる人々について、あるいはその職能の“理解されにくさ”について考えるものです。 ここでいう「演じる」とは、しばしば芸能人に対してあてがわれがちな、「偽りの姿/真の姿」というような単純さで捉えられるものではありません。2010年代の女性アイドルシーンにあっては、オンとオフとが互いに侵食し合うようなメデ
ソニーミュージック六本木ミュージアムで開催されている「乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展」の制作に参加しています。 展示内容の選定やキャプション作成などに携わるのが主な役割という感じです。プロジェクト全体からすれば私の受け持ちは微々たるものではありますけれども、たくさんのプロフェッショナルによって素敵な空間ができあがっているので、ぜひ足を運んでいただければと思います。 この展覧会の企画構成やもろもろのディレクションを担っているのは、雑誌「MdN」(最終号
乃木坂46は総体として、“自然に成熟していくさま”を体現しているグループとしてあるのではないかな、みたいなことを観測半分と期待半分でここしばらく考えています。 先日、京セラドームで開催されていた「乃木坂46 7th YEAR BIRTHDAY LIVE」もそんなことを考えながら観ていました。 今年のバースデーライブは全4日間を使ってグループの持ち曲を全曲披露する、かつての形式を復活させています。最終日が西野七瀬さんの卒業コンサート、それに先立つ1~3日目では作品リリ
根本宗子さんという作家の真骨頂は、人間の抱えている甘さ、弱さあるいは大人になれなさに対する繊細な、辛辣な視線にあります。 彼女の描く登場人物たちは、環境に甘え、肯定されるべき根拠を持たない自分を受け入れてくれる(ように見える)他者に甘え、自分が弱いことの「仕方なさ」を理不尽に主張し、外部に押し付けて暴発する。けれども、それらは異端者でもなければ、遠いフィクショナルな存在でもない。芝居を観ている我々が当たり前に抱えている弱さ、理不尽さそのものです。取り繕いながら、バランス
初めて蒼井優さんに打ちのめされたのは、2011年2月でした。 彼女はその頃、野田秀樹作・演出のNODA・MAP『南へ』(東京芸術劇場)という芝居に出演しています。この文章の本題ではありませんが、『南へ』は東京芸術劇場にとって、そしておそらくNODA・MAPにとって、ある特別な意味を持たざるをえない作品でした。 『南へ』の上演は2011年2~3月。すなわち、公演期間中に東北地方太平洋沖地震が発生しています。東北地方のみならず、首都圏でも各種公演が軒並み上演中止になり、上