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初体験 VS 20年ぶり ボウリング対決のゆくえ

酸素カニューレを外し構える。
本気を見せたいと思った。
最終フレーム二投目、残り5本。
「頑張って」
五歳息子の声援を背に球を投じた。

約二十年ぶりのボウリング。
心肺機能はもちろん筋肉の衰えも痛感。
「連投は無理」と観念し途中から息子に手伝ってもらう体たらく。

息子も初体験。
片手ではまだ投げられず両手で転がすスタイル。
ガターに柵のあるキッズレーンで行ったが、それでも隣レーンに放り込んだ。(ごめんなさいっ)
妻も苦手らしく、全員スペア一つ取れないグダグダ。
途中からは、協力して頑張ろう大会に変更。

迎えた最終フレーム。
一投目に息子が倒した5ピンを受けて――パパ!
せめてここだけでも、と瞬間、命を懸けた。

ガタン!
真ん中に入った球が残りのピンを蹴散らす。やった! 
振り返るや、私以上に破顔の息子が飛びついてきた。

「初めてパパのすごいとこ見た」
帰り道、何度も言う息子。
初めてって……でもそうかもな。
悲喜こもごもが去来し、グッと空を見上げた。


子と父で倒すスペアや鱗雲

(ことちちでたおすすぺあやうろこぐも)

季語(三秋): 鰯雲、鱗雲、鯖雲



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