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ポップコーンは買わない。vol.97

アジアの天使

久々に新作映画を映画館で観た。

私の住む地域柄、シネコンしか存在しないためスマホで本作のタイトルと予告編を観た時にこれはきっとこれから単館上映されるんだろうと直感で感じて急いで観に行った。

平日の一回上映に行ったので全然人が入ってなく、観客は自分と老夫婦がひと組だけだった。

アジアの天使は石井裕也監督の作品。

「舟を編む」とか、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」とか、「生きちゃった」とか、「町田くんの世界」とかとか代表とされる作品はいくつも聞いたことあるし面白そうだなと思ってたがなかなか劇場で巡り会う機会もなくどれも観れずにいた。

そんで今回の「アジアの天使」という作品で石井監督の作品を初めてみることができた。

作家性というか世界観みたいなものは、何本か観てみないと分からない部分があると思うが故に

「うわ!ここ石井監督っぽい!」とか

「石井監督この俳優さんよく使うなあ」とか

そういうところは配信等で復習していきたいと思っている。


曖昧にさせる演出があまりよくなくてですね。。

さて本編についてだが、私としては正直、ん??と思ってしまう部分が多くて、全体がブレてしまい中途半端な印象を受けた。

何を偉そうなこと言ってんだ。

その通りです。ごめんなさい。。でもここは素直に述べさせてください。

良くも悪くも、石井監督の考えが反映されている作品だと感じた。なぜそう感じたのか。

言語の違いによるコミュニケーションの壁

本作はオール韓国ロケ。現地の韓国人との交流が描かれる場面が多い。

主人公は韓国語が全く喋れずコミュニケーションが上手くいかないという描写があるのだが、

「いや、英語で喋らんのかい。」

というつまらないツッコミを心でしてしまった。もしかしたらなにか狙いがあってのことかと思ったが、中盤以降カタコトながらも英語でコミュニケーションを取り合い始めた。

これがなにを示しているのかがイマイチ分からなかったが、心の交流のグラデーションとして視覚的に示していたのかなと思うと腑に落ちなくはないけどもね。笑

あとは

そして寒いギャグ感覚

物語の緩急をつける意味でクスッと笑えるギャグはとても好き。

好きが故にちょっとの違和感が気になってしまう。

本作のギャグシーンがなんとも不自然というか、役者が言わされてる感というか。それを感じた途端引いちゃうというかね。

極め付けは天使の登場シーン。

なぜ芹沢さんがやったのか、登場させる必要あったのかなど、晴れない疑問が多くて引いちゃった。


ただ、すごく良かったのは

オダギリジョーが言ってた

「よく分からない感情は全部愛だ!」

「くだらない意識を乗り越えるためにビールと愛がある!」

というセリフ。これには感心を覚えた。

オダギリジョーの演じる兄貴はめちゃテキトー男であり、ホラを吹きまくるインチキ野郎。本作では個人貿易ビジネスというなんとも怪しいグレーなビジネスに弟を誘い込むところから物語がはじまる。

とにかく言動が全てが怪しく、常に下心のある感じなのだが

そんな感じだからこそ彼にしかいえない言葉がある気がしてて、それがさっきの名言に繋がっている。

一方で、弟役の池松さんの方は売れない小説家という設定でなんとも堅苦しい雰囲気がある。全く兄とは対照的で世の中を達観し、馬鹿なことには手を出さない、理論的に納得できなければ行動しないという長所でもあり、短所でもある部分が印象的なキャラクターである。

例えば、言葉にできない感情。これって好きなのかななんのかな。というよく分からなさ。誰しもが経験したことのある感情であろう。

その感情をなんなのか自分では理解できずに一歩踏み出せずにいる池松さんのシーンがあるのだが、その時にオダギリ演じる兄が、先程の言葉を口にする。

途端に、池松演じる弟も観ている私も胸のつかえが取れたかのように感情が整理された感覚を覚えた。それと同時に責任感のなさに不安を覚えてしまう感覚もあった。なぜならあのテキトー兄貴のいってることだから。でもなぜだか快活に飲み込めたのはそのテキトーさがあってのことだとは思った。


資本主義における日本と韓国の関係について

本作のテーマのひとつとして資本主義が存在していたことは間違いないだろう。

資本主義の本質は「搾取と抑圧」にあるという言葉を聞く。

本作でも特に韓国国内における男尊女卑だったり、資本主義による格差、貧困についてうかがえる場面は特に前半部分にうかがえる。

貧しくても生きていかなくちゃいけない、そのためには体を売ってもお金を得るしかないと苦しむ姿は胸が痛くなった。

そういった姿を日本人監督が映し出したのは、どの国でも同じなんだということ。日本でも同じように問題視されていることだし、自分の国ばかり見ていたけれど自分らばっかりじゃない、苦しいのは自分だけじゃないんだということに気づかせてくれるそんな描写だったと思う。

だからこそ、お互いの違いを敵対してみるのではなくて同じ人間同士助けあっていこうよ。ってことで、日韓関係の云々は上の方で勝手にとやかくやってるわけだから民間は民間でいい関係性気づくことができればいいムーブメントおこせるじゃんかってことなのかなって思った。

最後に

舞台挨拶で石井監督は映画をとるということに関して障壁となるものを全て取っ払って映画を撮りたいという思いあったことを述べていた。

故に韓国でのロケ、キャストがあったのだと思われる。

監督の撮りたいもの、込めたいものを込め続けた結果の作品は要素がありすぎて軸がいまいち分からなかったのは監督の世界観を理解しきれてないからかもしれない。

でも「ん??このシーンはどゆこと!??!」ってなってしまうのは、やはり気持ち悪かったのでこの分からないさはさすがにオダギリジョーのセリフでも晴れないな。笑

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