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ファースト・マン(2018年/アメリカ)ネタバレあり感想 英雄をやらされた英雄の映画。

 『趣味と向き合う日々』に投稿した感想記事の加筆修正版です。


英雄を演じるのも大変なんでしょうね。

 

『ファースト・マン』

(First Man)

ファーストマン映画ポス

 

以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

■ストーリー


 ニール・アームストロング、宇宙開発競争に振り回され疲弊。

 

 

■感想


人類史上初めて月面に降り立った男ニール・アームストロングを題材にした映画。

アポロ計画や米ソ宇宙開発競争といった、彼に強く結びつく要素はあくまで、その時々の出来事のひとつとしてストーリーに付随するような作りでした。あくまでも背景といった感じ。

映画の最後の最後までケネディ大統領が名前以外出て来ないのがそれを端的に表してると思います。


 

人類史上初の偉業を成し遂げた男を題材にしているこの映画。

アメリカの偉大な功績のひとつである宇宙開発と月面着陸をアピールする要素が、ものすごく控えめなのが面白いです。

今更宇宙開発でプロパガンダやったってしょうがないってのもあるかとは思いますが、こういうところに時代の流れみたいなのを感じられます。

 

宇宙開発競争の中でアームストロング船長は次々に仲間を事故で失っていきます。

アームストロング船長本人がパイロットとして有能である事は間違いないですが、劇中では、まるで仲間が死んだから繰り上がって月面探査チームに選定されたかのように錯覚させられるような作りになっていたように思います。

 というかアームストロング船長からは、きっとそういう風に見えていたのかもしれません。

 

映画で描かれたニール・アームストロングの姿が、僕個人が持っていた彼に対する印象とは大きくかけ離れたものに思えました。それまでは典型的なヒーローって感じのイメージがあったんですよね。

この映画はアームストロング船長の偉大な功績という方向よりも、その裏側(ノンフィクション物とは言えもちろん誇張脚色あると思います)にフォーカスした作りになっていた感じです。

 

アームストロング船長が月面に立った際に残した「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」という名言中の名言。

もちろん劇中でもセリフとして登場しますが、これがとても浮いているように感じました。

無理やり、求められている英雄という役割を演じているような違和感です。

 

この映画で描かれたアームストロング船長の一面は、とても人間的で悲壮感に溢れていて、彼が特別な人間でありながら身近に感じられるような、そういう不思議な雰囲気を纏っているように思います。ある種の親近感に近いです。

英雄性を求められ、それに応えつつも本質的にはそんな部分はモチベーションにはなってなかったらしい事が、映画を観ているとなんとなく分かってきます。

だからあの名言が浮いてるように感じるんでしょうね。

亡くなった娘を含む家族で過ごした時間と情景が、静かな月面上でイメージが交差するシーンは凄く胸に来ます。 

 

 

 月面着陸に成功し、無事に地球に帰還したアームストロング船長達アポロ11号のクルー。

世界中がこの出来事に湧く中で、アームストロング船長と彼の妻が面会するシーンがラストカットでした。二人共とても静かに再開するんですよね。

まるで徹夜で仕事を終わらせた後みたいな疲労感が漂っています。

宇宙開発競争に振り回された家族の再会シーン。きっとリアルでも本当はこういう雰囲気だったんじゃないかと思います。
面会室には各国の新聞や子供達からの絵葉書なんかがあり、世界中がその功績、英雄の帰還に湧いている事が分かります。

一方でアームストロング船長にとって、それは重りでしかないのかもしれないと改めて考えさせられます。

面白い映画です。

 

■〆
 

個人評価:★★★☆☆

 

米ソ宇宙開発競争の中で成し遂げられたアメリカの月面着陸成功という偉大さや、アームストロング船長の功績と言った部分、アメリカの作る大作映画ならまず全力でアピールしてきそうなそれらの要素をあえて脇に置き、アームストロング船長という人物の心そのものにフォーカスした映画でした。

意外すぎる。そして予告が絶妙に詐欺してる。

無名のヒーローを描く作品の逆パターンみたいな感じですよねこれ。

国の英雄だって人間なんだぜ的な。ちょっとそれだとズレてるのかもしれませんが。

こういう映画もっと増えていいと思います。

ではまた。


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