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TENET テネット(2020年/アメリカ) ネタバレあり感想・考察 バカ難解だけどその分気づいた時の面白さが限界突破する映画。


クリストファー・ノーランの脳みそ有形文化財として保管したい部。


『TENET テネット』

(TENET)

テネットポス


以下、ネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー

凄腕の諜報員だった男がその腕を買われ謎の組織にリクルートされ、時間が逆行するオブジェクトを巡る謎に挑むうちに、未来と現在を巻き込む巨大な陰謀と争いに直面する。


■感想


因果関係の逆転要素に、各登場人物の目的が絡む事でとてつもない難解さを醸し出しているこの映画。

その上初見時ではストレートに進む時間の中で、逆行した動きをする人間やオブジェクト類が同居する映像の異質さ新鮮さに意識を持っていかれて、結末まで観ても何が起きていたのか分からないポイントがめちゃめちゃ多かったです。なので周回してきました。無理せず周回すると途端に面白さ爆増する映画。



世界の滅亡まで秒読み状態でブルッた未来人が、イチかバチか世界そのものの時間の進行を逆転させて、終わる世界という結果から逃れようとした、というバックグラウンドで物語が描かれていた訳ですが、この背景が終盤まで明かされないので、その間に登場する数々の伏線や描写を脳内で整理していくのマジで大変でした。

世界そのものが逆転したら、その時点で未来人たちの過去が未来になるわけで、その先にあるのも結局ビックバン以前の状態というか、無そのものなんじゃないのって思うんですがどうなんでしょうね未来人さん。多分どっちにしろ滅ぶぞ。

作中では親殺しのパラドックスにも言及されていましたし。

世界の時間そのものが逆転したら、その時点で過去の生命体が一瞬で消滅してしまうとの事で、そうなると過去人の行動の結果生まれるはずの未来人は存在できるのかっていう、そういうやつです。


とにかく世界そのものの時間を逆転させなきゃ未来人の未来は無いようなので、それを実行する為に必要な"アルゴリズム"を構成するべく、過去の時代に干渉して、なんとか世界を逆行させようとする未来人。

そんなわけで、劇中時間軸の現在視点では、未来人の目的達成の為に暗躍するセイタ―という男と、それを阻止するため奮闘する主人公の戦いが繰り広げられました。



で、実はそもそもこの映画が始まった瞬間に、世界中の人々が普通に生活している事で、この映画の結末がどうなるか既に示されていたんじゃないかと思うんですよね。

ノーマルに時間が進む世界に、回転扉と呼ばれる装置を使い時間を逆転させた存在が干渉するシーンが何度も登場します。

主人公が時間を逆走した未来の自分自身と戦闘するシーンやカーチェイスでのシーン、終盤のTENETの兵士とセイタ―の兵士の戦闘シーンなどです。


それらのシーンで何度も何度も描かれる様に、主人公が順行していようが逆行していようが、主人公は自分の意志と目的に基づいた行動をしているはずなのに、結果は同じところに収束しているわけです。

順行と逆行、それぞれの時間軸での主人公の行動による原因と結果が重なって同じ場面が成立するという事は、因果関係に関わらずただそこに事象・出来事だけが存在する、みたいな話なのかと僕は思いました。宿命論的なニュアンスなんじゃないかって話。


ただ、そこで未来人の目的やセイタ―の目的などが終盤まで明かされないので、物語が展開する間に結末がわかってしまうという最大の萎え要素がむしろ最大の感動要素にすら繋がるみたいな、ミスリードの極地的な、そんな素敵構成の映画なんじゃないかと思います。


だから周回すると面白いんだと思います。

一度結末を知った後、劇中人物の目的意図が分かった上でもう一度観ても面白いのは、周回する事で伏線に気づいたりストーリーの理解度が高まるからだけではなく、極端な話、この映画自体が結末が分かっている状態で如何に面白い物語を作れるか、みたいなコンセプト作られているからなのかもしれません。

完全な憶測ですが、そんな匂いをギャンギャンに感じる映画でした。


■〆

個人評価:★★★★☆

ノーランの映画では手法は違えど『メメント』が凄くニュアンスが近い構成の映画だと思います。

そして時間が逆転する存在が普通の時間軸の中に重なり合う映像の異質さ異端さでは『インセプション』以来の衝撃がありますし、同じ場面を擦って別の展開に繋げたり映画的な物語を進行させる手法は『ダンケルク』に近いものを感じます。

現時点のノーランの集大成みたいな映画だと思いました。

ではまた。

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