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糖尿病性腎症の原因、所見、症状、現代医学の治療、東洋医学の治療(漢方など)をまとめてみました。


糖尿病性腎症とは?

高血糖が長期間続くと、糖尿病患者の組織内のタンパク質と血中のブドウ糖が結びつく結果、全身の微小な血管が損傷され、血管が詰まったり破れたりする糖尿病性細小血管症が発生します。

特に、糸球体と呼ばれる腎臓の濾過装置は細い血管が多いため、これに影響が及びやすくなります。その結果、腎機能が低下する状態が生じ、これを糖尿病性腎症と呼びます。

糖尿病性腎症が起こる原因は?

糖尿病による高血糖です。

糖尿病性腎症の所見、症状は?

糖尿病性腎症の第2期(早期腎症期)では、微量のタンパク質(微量アルブミン)が尿に漏れ出始め、適切な治療によってタンパク質の漏れが防げる可能性があります。腎症が進行すると、より多くのタンパク質が尿中に排出され、これがタンパク尿として知られます。この段階では、血圧も上昇し、高血圧が血管に損傷を与え、さらなる腎機能の悪化を引き起こす悪循環に陥ります。

糖尿病性腎症の第1期および第2期では、特に自覚症状はほとんど現れません。そのため、尿検査が必要です。第3期に進むと、むくみ、息切れ、胸部の圧迫感、食欲不振などの自覚症状が表れます。第4期および第5期では、顔色が悪くなる、疲れやすく感じる、嘔気や嘔吐、筋肉の硬直、筋肉や骨の痛み、手のしびれや痛み、腹痛、発熱などが生じることがあります。第3期以降では、進行を遅らせることは可能ですが、早い段階での発見が重要であり、第2期までに糖尿病性腎症を早期発見することが重要です。

糖尿病性腎症の診断方法は?

糖尿病腎症の診断には、尿検査と血液検査が必要です。尿検査では、尿中にタンパク質や血液が混ざっていないか確認します。同時に、アルブミン(タンパク質)の排泄量を調べて、糸球体の機能低下の進行具合を評価します。

また確定診断には腎生検が不可欠です。具体的な診断には、糖尿病の罹患期間や腎エコー検査、血液および尿の検査結果も総合的に考慮されます。逆に、糖尿病患者で腎炎などが疑われる場合には、積極的に腎生検が行われることがあります。

糖尿病性腎症の一般的な治療法は?

症状を進行させないためには、早めの治療がカギとなります。治療のポイントは、適切な運動や食事、そして血糖値をきっちり管理することです。血糖コントロールには、経口血糖降下剤やインスリンも必要です。微量アルブミン尿の段階では、腎臓に直接の治療が必要ないかもしれませんが、血糖管理がしっかり行われると尿検査の数値が正常に戻ることがあります。

高血圧や高コレステロールの症状があれば、それらも同時に治療が必要です。糖尿病腎症が進行するにつれて、抗血小板剤やACE阻害剤、利尿剤、経口吸着剤など、いくつかの薬が使われることがあります。また、症状が進むと運動制限が生じ、食事もエネルギー量や栄養バランスに気を付けるだけでなく、塩分やタンパク質の制限も考慮する必要があります。

糖尿病性腎症で気をつけるべき事は?

糖尿病性腎症の管理にはいくつかの気をつけるべきポイントがあります。例えば以下になります。

血糖値の管理: 血糖値を一定の範囲内に保つことが重要です。適切な食事療法、運動、および必要に応じて医師が処方した薬の使用を通じて、安定した血糖値を維持することが必要です。

血圧の管理: 高血圧は腎症の進行を加速させる可能性があります。医師の指示に従い、血圧を適切な範囲に維持することが重要です。降圧薬や生活習慣の変更がその手段になります。

脂質管理: 高コレステロールや高脂血症は、腎症の進行を促進する可能性があります。食事や薬を通じて脂質を管理し、良好なコレステロール値を維持することが重要です。

タンパク質の摂取: タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけることがあります。医師や栄養士の指導に従い、適切なタンパク質の摂取量を調整することが大切です。

薬物の使用: 医師によって処方された薬物は、正確に使用し、定期的に検査を受けることが必要です。特に降圧薬や腎機能をサポートする薬は、適切な管理が重要です。

定期的な検査: 定期的な血液検査や尿検査を受け、腎機能の変化をモニタリングすることが必要です。定期的な医師のアドバイスを受けることも重要です。

健康な生活習慣: 喫煙や過度のアルコール摂取は腎機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、これらの習慣を控えるか、止めることが望ましいです。

これらのポイントは、糖尿病性腎症の進行を遅らせ、腎機能を保護するために重要です。個々の状況によっては、医師や医療専門家の助言を受けながら、適切な対応を行うことが大切です。

糖尿病性腎症の予後は?

糖尿病性腎症の予後は、病態の進行により異なります。一般的には、早期に診断されて適切な治療が行われれば、予後を改善することが可能です。しかし、進行が進むと予後が悪化する可能性があります。

糖尿病性腎症が進行すると、腎機能が低下し、最終的には慢性腎臓病や腎不全に至ることがあります。これに伴い、高血圧や心血管疾患などの合併症の発症リスクも増加します。最終的な段階では、腎臓の機能が十分に回復することが難しくなります。

重要なのは、早期に糖尿病性腎症を発見し、適切な治療と管理を行い、生活習慣の改善や薬物療法により血糖値や血圧のコントロールを確保することです。これにより病態の進行を遅らせ、予後を良くすることが期待されます。個々の病態や治療反応には個人差があるため、医師の指導に基づいた定期的なモニタリングが重要です。

しかしアルブミン尿が増加するほど、腎機能の低下が進む可能性が高まります。同時に、腎機能の低下は心筋梗塞などの心臓血管合併症を引き起こしやすくなり(心腎連関)、これが生命予後に悪い影響を及ぼすことが考えられます。

糖尿病性腎症の東洋医学的な考えは?

東洋医学において、「腎」は単なる臓器だけでなく、生命の根源や体の基本的なエネルギー源を指す重要な概念です。腎臓は体の本質を支配し、生殖・成長・発育・エネルギーの蓄積などの重要な機能を担っています。

腎虚は、腎臓の機能が低下し、体のエネルギーが不足している状態を指します。これにより、疲労感や冷え性、尿の変化などが腎虚の典型的な症状となります。

糖尿病性腎症では、高血糖が持続することで腎臓に損傷が生じ、結果として腎機能が低下します。この進行に伴い、腎虚が発生することがあり、腎臓のエネルギー不足によって体の調和が崩れ、さらなる症状が現れる可能性があります。東洋医学では、糖尿病性腎症に対処する際には腎臓の機能を回復させ、体のエネルギーを補うアプローチが重要とされます。

東洋医学を取り入れるメリットは?


糖尿病性腎症において、東洋医学を取り入れることにはいくつかのメリットが考えられます。ただし、東洋医学は西洋医学とは異なる視点やアプローチを持つため、個々の患者によって効果が異なる可能性があります。

個別化されたアプローチ: 東洋医学は全体的なバランスや個々の体質に注目します。患者の症状や体調を総合的に評価し、その人に合った治療法を提供するため、個別化されたアプローチが可能です。

症状の根本原因へのアプローチ: 東洋医学では、症状だけでなく、その背後にある根本原因にも焦点を当てます。体のエネルギーの流れやバランスが乱れていると考え、それを整えることで症状の改善を目指します。

予防と健康維持へのアプローチ: 東洋医学は病気の治療だけでなく、健康維持や病気の予防にも注力します。生活習慣や食事、ストレスの管理など、総合的なアプローチを通じて全体的な健康を促進することが目指されます。

身体と精神の一体性へのアプローチ: 東洋医学では身体と心のつながりが強調されており、精神的な状態と身体の調和を取ることが重要視されます。糖尿病性腎症で出る症状がストレスや精神的な要因に由来する場合、このアプローチが有益とされています。

ただし、個々の状態によって適したアプローチを見つけるためには、医師や東洋医学の専門家との相談が重要です。自己判断せず、専門家のアドバイスを受けながら統合的なケアを検討することが大切です。


以上のような点から、東洋医学を取りれるメリットがあります。

東洋医学で考える糖尿病性腎症にアプローチできるポイント


糖尿病性腎症に対する東洋医学のアプローチは、体のバランスを整え、エネルギーの流れを調和させることが中心です。これにはいくつかのポイントがあります。

まず、東洋医学では腎臓が体の本質や基本的なエネルギー源を司ると捉えられています。この視点から、糖尿病性腎症へのアプローチでは、腎臓の機能を強化し、腎虚を改善することが重要です。これには、食事や生活習慣の調整、鍼灸療法、漢方薬が活用されます。

高血糖による気と血の不調和を整えるため、体を温める食材や治療法も取り入れられます。適切な食事は個々の体質や症状に合わせ、体を温める効果が期待されます。

また、経絡(経絡系統)を刺激する鍼灸療法や指圧療法は、エネルギーの流れを促進し、体のバランスを取り戻す役割を果たします。適切な運動も重要であり、エネルギーの循環を促進し、全身の調和を助けます。同時に、深呼吸や気功などの呼吸法もストレスの軽減や気の流れをサポートします。

最後に、心身の調和を重視します。ストレス管理や心の安定が総合的なアプローチの一環となり、心身は一体であるという考え方が反映されます。

これらのアプローチは個々の状態や体質に応じて調整され、専門の東洋医学の医師と協力しながら個別の療法を選ぶことが肝要です。東洋医学と西洋医学の組み合わせた総合的な治療が有益とされ、患者の健康管理に役立ちます。

その他の糖尿病性腎症の治療法

鍼灸

鍼灸治療は、糖尿病性腎症に対する伝統的な東洋医学の治療法の一つです。この治療法は、体内のエネルギーのバランスを整え、特に腎臓の機能を強化し、糖尿病性腎症の症状や状態を改善することを目指します。

鍼灸治療では、経絡や特定のツボを刺激することで、気と血の流れを調整し、腎臓のエネルギーを活性化させます。これにより、腎虚の状態を改善し、尿の排泄や余分な水分の排除を促進します。

治療は症状の緩和だけでなく、浮腫や高血圧といった合併症にも効果が期待されます。特定のツボの刺激により、水分代謝や血圧の調整が行われます。鍼灸治療は全身の調和を重視し、患者の個別の状態や生活環境にもアプローチします。治療の進捗や体の反応に応じて、セッションが継続的に行われます。

ただし、鍼灸治療は継続的な管理が必要であり、通常は複数回のセッションが必要です。最適な治療プランを見つけるためには、医師との連携が重要であり、西洋医学の治療と併用されることが一般的です。患者と治療者とのコミュニケーションが密に行われ、個別のケースに合わせた総合的なアプローチが求められます。

漢方

糖尿病性腎症に対する漢方治療では、伝統的な東洋医学の視点からアプローチがされます。治療の要点を簡潔にまとめると次の通りです。

漢方治療では、まず腎臓の陰の不足を補充し、腎臓機能の回復をサポートします。同時に、湿熱や血瘀といった体内の異常なエネルギーのバランスを整え、糖毒の排除を促進します。

治療は全身の調和を重視しており、患者の体質や症状に合わせて総合的なアプローチが取られます。これにより、他の臓器や体のエネルギーのバランスも調整されます。漢方薬は通常、定期的に調整され、患者の体調や症状の変化に合わせて適切な処方が行われます。これにより、最適な治療効果が得られるようになります。

漢方治療は西洋医学の治療と併用され、総合的な医療ケアが重要です。よく使われる漢方には田七人参、六味地黄丸、牛車腎気丸などがありますが、漢方は患者の体質に合わせて組み合わせるため、漢方薬店などに相談してみると良いでしょう。

東洋医学的に糖尿病性腎症の治療を始める場合は?

東洋医学的治療は、体質の調査から始まり、陰陽のバランスを整える食事療法や漢方などを用いて体全体の機能を改善します。健康管理と生活指導も重要であり、個々の症状や体質に合わせたアプローチが必要です。そのため専門家への相談が重要になってきます。

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