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スマホ漬けで本が読めなくなりました。お坊さんのおすすめ本は?【仏教で答える悩み相談5】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。

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Q お坊さんへの質問

最近、スマホに慣れて、長い本が読めなくなって困っています。昔は本が大好きだったので、読書の楽しみを取り戻したいです。スマホ依存の私に、お坊さんがおすすめする軽めの読み物がありましたら、教えてください。
(30代・女性)


A1   毎晩少しずつ読み進めたい1冊

 スマホは文章を読む用途にも使えて便利ですが、紙の本も魅力はありますよね。本のお勧めだと色々ありすぎて困るのですが、今回は、こちらの本を紹介したいと思います。

  タイトルは、『ダライ・ラマの猫』。いくつかの話題に分かれているので、区切りながら読むのには適しているように思います。ジャンルとしては、「とても小説寄りのやや啓発本」といったところでしょうか。啓発とはいっても、押しつけがましい雰囲気ではなく、物語として進んでいきます。

  私は、図書館の本を乱読している時にこの本と出会い、手元に置いておきたいなと思いました。今より少し、日々を機嫌よく過ごしていけるかなという気分にしてくれる内容です。猫が苦手な方と、持ち歩きサイズの本をお探しの方にはちょっと向いていないかもしれません。

 家で、毎晩少しずつ読む、なんて時にはいいのではと思います。もし気になりましたら、ぜひ読んでみてください。
                                                                          (築地本願寺職員・相馬顕子)

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A2   スマホ慣れの背景にあるものは?

 大谷光真前門主の『人生は価値ある一瞬』という本はいかがでしょうか。原稿用紙2〜3枚程度の短篇ひとくち法話が50本以上収録されています。第6章の「困難に負けずに生きるために」にある「何もしないぜいたくな時間を持つ」という法話には、スマホに関する言及がありました。

  ちなみに先日読んだ本に書いてありましたが、ついスマホに触れてしまうのは、「脳の機能障害による心身のコントロール障害」「ライフスタイルの病」など多様な側面を持った「依存症」の症状らしいです。

    無意識にスマホを触ってしまう人が多い中で「自分はスマホに慣れきってしまった」と気づけたのは凄いことです。そこから「どうしてスマホに依存してしまうのか」に目を向けると、思いがけない生活環境の改善点が見つかるかもしれません。
                                                                    (本願寺派布教使・横内教順)

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A3  人間の矛盾を仏教で語る『仏は叫んでいる』


     スマホに集中力を持っていかれる気持ち、わかります。加えて私は読むのが遅く、なおさら読書に問題ありです。

  さて、小説・エッセイではないのですが、田中教照・武蔵野大学名誉教授による『仏は叫んでいる』という講演録はいかがでしょうか。スマホが普及する少し前、2008年の本で、教育に長年携わってきた著者が、現代社会のさまざまな矛盾の奥底にある人間の姿について、仏教という一本の筋を通して語っています。

 現代人が常識だと思っていることが覆されるようなテーマ、もっと正直に言うと「痛いところを突かれたな……」と思うような話題も随所にあり、猫背の私の背筋も伸びます。スマホに依存したくなる時に効く良い薬かも知れません。
                    (本願寺出版記者・星 顕雄)

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過去のバックナンバー「「好きな人ができた」と言われて、恋人にフラれました。【仏教で答える悩み相談4】」の回答はこちらから。

※本記事は『築地本願寺新報』10月号に掲載された記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。