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手打ちにせざるを得ない大門「集来」

世の中には、かなりの確率でひねくれた人がいる。たとえば、焼酎専門店でビールばかり頼んだりする人。クラフトビールの店で、スーパードライを飲み続ける人。冷酒を飲み切れず、「熱燗にして」と言ってしまう人。

大門駅からすぐ、ビルの奥まった一角に「集来」はある。食べログか何かでよくよく地図を調べておかないとわかりにくい場所だ。「こんな場所に名店があるはずない」と、ひねくれた視点で街を探すのがコツだ。そして、この大門の老舗中の老舗には、ひねくれたお客が来るようなのです。

手打ちか、手打ち以外か。

集来では、手打ちの中太のちぢれ麺に醤油系の透明なスープなどを合わせた「五目麺」「ラーメン」「チャーシュー麺」などがメニューをにぎわせている。しかし、これらのメニューには、手打ち麺以外のバージョンもある。手打ち「じゃないほう」も、結構な人気のようだ。

なるほど、手打ち麺のほうがちょっと高い。しかし、なぜ、わざわざこのビルの内側にめり込んだような風体のラーメン店に足を運ぶのか。旨いラーメンを食べるためじゃないのか。…何を早まって、手打ち麺「じゃないほう」を注文するのか。手打ち麺が嫌いなのか?パクチー嫌いなら訳は分かる。パクチーには好き嫌いがあって当然だ。でも、手打ち麺と、手打ち麺「じゃないほう」と、…どちらを選ぶべきか、もう少し真剣に考えてほしいものだ。

集来謹製の手打ち五目麺は、かなりボリューミー。中太麺に箸がたどり着くまでに、山盛りの野菜などの具をかき分けていく必要がある。しかし、野菜を含め、種々の具はバラエティーに富み、歯ごたえ・風味も様々に仕上げられているので、飽きが来ることはない。調和のとれた逸品だ。一日分の野菜を摂取できそうなので、ぺろりと平らげても罪悪感はない。

ほんの10年前なら集来の手打ち五目麺を超えるラーメンなど、この辺りには一軒もなかったはずだ。しかし、折からのラーメンブーム。近隣に全国区で一世を風靡することになる鶏ポタ ラーメンが開店し、また、刀剣麺や次郎系など、新進気鋭のラーメン店の出店が相次いだ。そのうえ、なぜだか理由はわからないが一風堂、麺屋武蔵、リンガーハット(!)といったラーメンチェーンの雄たちまでが進出してきている。ランチに街に繰り出す人口にくらべて、ラーメン店の数が多すぎるように感じる。

しかし、生き馬の目を抜く浜松町のランチ戦争を、サバイブしてきた老舗である。一食の価値あり、間違いない。…でも、もしもカウンター席に座った瞬間、手打ち麺「じゃないほう」を頼んでしまったら?

その場合はもう一度お店を訪れるといいのです。12時前に入店すれば、ゆっくりと、もちもちしこしこのちぢれ麺を味わえますよ。


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