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ジャスミンライスさらさら「マンゴツリーキッチン」 東京駅

東京駅のグルメマップ、未だ未完の地図を片手に旨いものを求めて放浪している人々は少なくないはずだ。現在、東京駅の地下部分には様々なテイクアウトのお店がひしめき合っていて、丸の内側出口とのちょうど中間部分の通路に有名なパン屋や土産物屋がある。

この通路の工事が始まる前には、酒屋があって、小さなカウンターでお酒と気の利いたおつまみを頂くことができた。なかなかの通なラインナップで、主に日本酒が豊富にあったが、生ビールもお手頃価格で飲むことができた。工事のために店がなくなって残念でならないが、いつかまた復活してくれるのではないか。期待している(私だけか)

その、酒屋の小さなバーがあった場所と向かい合うように、マンゴツリーキッチンがある。言わば、エキナカのイートイン&テイクアウト店だ。名物のガパオやグリーンカレー、アジアのお惣菜などを楽しむことができる。何ならシンハービールも。

これだけ手軽に、言ってみれば立ち食いそば店と同じノリでガパオライスを食べられるというのも珍しい。開店当時から通っているのだが、なかなかのお味。あえてナンプラーやパクチーの強烈な香りを和らげているようで、アジアご飯初心者にもとっつきやすいのではないかと思う。

おすすめはなんといってもイートインの豚のガパオライス(目玉焼き付き)。ピリッと唐辛子の辛みの利いた、アジアのぶっかけご飯だ。豚のひき肉の大きさはおそらくあえて不揃いにしてあるようで、食感や味が噛むたびに変化して楽しい。備え付けの御酢をかけて味変も可能。目玉焼きをぐずぐずつっぶしながらガパオを崩して頬張れば、東京駅の中でもほっと一息つくことができる。付け合わせの人参とパパイヤのナマスもアクセントとなっておいしい。

日本人好みに味付けをわずかにアレンジしてくれているのだろうが、こちらのガパオのご飯、本場のジャスミンライス(風?)、つまりタイ米を使っている。このタイ米、例の、細長いコメだが、パラパラとした硬めの仕上がりで、汁かけご飯には最適だ。私は当初はアジア飯に行くとなるとなぜか気負いがあったのだが、夏の暑い日でも、思いのほかさらっと食べることができるなど、うれしい発見が色々あった。南国のグルメは日本の厳しい暑さにもピッタリなのだ。

他に、鳥のガパオ、シーフードのガパオなどもあるが、豆のガパオ(野菜の?)というものもある。興味がわいて「豆」も何回かいただいた。大きな豆がごろごろと入っていて、かなり食べ応えがある。ご飯ものはちょっと…というときにはフォーがおすすめ。本場の、あの不思議にねっとりした「つみれ」が入っていて、一皿が楽しい。もちろんパクチーも気が効いた量を入れていてくれる。

なるほど、こちらのお店では、都内でみんながどんな「アジアめし」を食べたいと思っているのか、知り尽くしている感がある。腕利きの経営陣の存在を予感させる完成度。

しかし、さすがにガパオ片手にビールを頂くにはお店が狭い。可愛いグラスで麦酒を飲み干そうとしたとき、店のガラス越しに、東京駅を行きかう気ぜわし気な人たちと目が合うのも考え物。ガパオをサッとかき込んだらさっさと新幹線に乗った方がよさげである。

ビールの時間はそれからだ。

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