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【最終回】オープンデータを集計してみる part5 東京の地価の考察 ~商業地編~ 東京の中枢は? 

はじめに

 「オープンデータの集計」の最終回です。テーマは商業地の公示地価の考察です。東京の都心部は居住地というよりは商業地の色の方が強く、その地価は住宅地と比べて非常に高いです。文字通り桁が違います。とりあえず、今回もその推移を動画にしてみました。

地図の色彩について、最大を2500万円に設定し、それ以上は2500万円に丸めています。

集計と考察

東京都内の公示地価の基本統計量

 まず、東京都の商業地に限定した公示地価の基本統計量を以下に示します。

  • カウント:857地点

  • 最小値:8600 円 / ㎡(新島村本村1丁目)

  • 最小値:55,700,000 円 / ㎡ (中央区銀座4丁目)

  • 平均値:2,764,627 円 / ㎡

  • 中央値:1,100,000 円 / ㎡(新宿区西新宿4丁目・世田谷区経堂1丁目・豊島区高田3丁目)

  • 標準偏差:5,456,248 円 / ㎡

 価格のバラつきが大きいですね。商業地の地価は個別性が強いことが伺えます。商業地というのは都心から離れてアクセスも悪く、急行の止まらない駅の錆びれつつあるエリアから、銀座や丸の内など地名の響きが既にブランドであるエリアまで様々なので納得が行きます。

丸の内と銀座

 次に住宅地と同様に23区に限定してみていきます。ただし今回は上位のみ見ていきます。下位は地価の価格帯や推移がほぼ同じで語ることが特にないことと、東京の経済的中心、つまり中枢はどこの街であるのかこそ語りたいことだからです。

東京23区上位20エリア

 街の単位で集計すると、最も地価が高いのが丸の内で、地点単位で最も高い地価だった銀座は2位です。両者を比較すると大きな違いがあるのが2002年と2021年です。それぞれ前年を見ると、2001年は戦後最大のマイナス成長かつ失業率5%超えの状況であり、2020年は記憶に新しいコロナショックがありました。どちらも消費行動に大打撃のあるイベントであり、銀座は大幅に地価に影響が出ています。ところが丸の内はあまり影響が出ていないどころか、2002年以降どんどん上昇しています。

 理由として考えられるのが両者の機能の違いです。丸の内はオフィス需要が高く、銀座は店舗需要が高いということです。これは皆様イメージ通りだと思います。消費にダイレクトに影響が出てしまうようなイベントが起きると、店舗型の需要が大きい街は直接影響を受けてしまうということです。

 ですがこれだけでは、2002年以降の丸の内の地価上昇の説明ができません。恐らくですがここでキーワードになるのが再開発です。2002年にあったイベントとして、あの有名な丸ビルの竣工があります。当時は子どもで丸の内などは縁もゆかりもない街ですが、丸ビル竣工以降、同様のビルがどんどん増え、店舗型の施設も次々と出来て、特に土日の街の風景は様変わりしたと聞きます。オフィス機能も持ったまま、店舗機能も備えた結果、2002年以降の上昇が起きたと考えれます。

 不況でも再開発で地価が上がり、コロナが来て消費が落ち込んでも地価に影響があまりでない。ということは、まさに「東京の中枢は丸の内」と言えそうです。

地価と再開発

上位20エリア(街)の変化率

 先ほど、地価上昇に対して、再開発というキーワードを出しましたので、地価上位エリアの地価の変化率を確認してみます。変化率は、直近の底値である2013年を基準に最新の2024年の地価を用いて算出しています。

 基準に底値を採用しているので、当然全ての街でプラスの値ですが、1を超える街が6つあります。「宇田川町」、「道玄坂」、「神宮前」、「南青山」、「虎ノ門」、「渋谷」です。この全てで再開発が行われている、もしくは計画されています。決して景気が良いとは言えず、コロナのようなマイナスに働くイベントがあったこの12年の間に倍以上になるのは、中々想像できません。

 派手に反対運動が起きている神宮前の再開発の是非は置いておくとして、やはり地価と再開発の関係性はありそうです。再開発(もしくは計画)によって地価が上がるとは言い切れませんが、少なくとも「そもそも地価が高いエリアの中で、特に地価が上がっているエリアは、最低でも再開発計画がある」ということは言えそうです。

まとめ

 今回は商業地の公示地価の考察を実施しました。留意点としてはあくまでもオープンデータで手に入る範囲の情報で述べており、実際はもっと複雑に様々な因果が絡み合ってることは想像できます。それでもエリアの役割による地価の変動や、再開発による地下への影響は、個人的には実際にあり得ることと感じています。

 「オープンデータを集計してみる」というタイトルで投稿してきましたが、このシリーズはこれで最終回です。2種類のオープンデータ×GISで、ここまでは語れるというラインを示せたかと思っています。次回がシリーズなのか単発なのかは未定ですが、これからもよろしくお願いします。

ありがとうございました!

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