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高校生こそ選挙に親しもう! 10の質問から知る高校生の政治参加が大事なわけーー模擬選挙推進ネットワーク・林大介先生

「模擬選挙推進ネットワーク」で模擬選挙を呼びかける活動に取り組む同代表の林大介先生に10の質問をしました。お話を通して、「模擬選挙」という聞き慣れないものが、高校生にとって非常に有意義なものであることが見えてきました。

1. 模擬選挙ってなんだろう

Q1:「模擬選挙」ってなんですか?A:政治や選挙の重要性を感じてもらうために、選挙を擬似的に体験してもらうことです。
どういう社会になってほしいのかを考えて1人の立候補者を選ぶ、という練習になります。18歳で有権者になっても、選ぶ基準が分からないまま選挙に行くのでは選びようがなく、難しくなってしまいます。
そこで、子どもの時からそういう体験に親しんでもらうため、政治教育の一環として、取り組まれています。模擬選挙推進ネットワーク では、実際に行われる選挙に合わせて、学校を中心に行っています。模擬選挙は世界各地で行われており、例えば、アメリカ大統領選挙では毎回700万人以上の未来の有権者が投票しています。

Q2:「模擬選挙推進ネットワーク」ではどんなことをしているんですか?
A : 全国の学生に模擬選挙をしてもらうために、様々なサポートや呼びかけをしています。
学校の先生に連絡して模擬選挙を行ってもらい、実施する学校には実際の選挙ポスターやマニフェストを届けています。政策比較を一覧にまとめてわかりやすくし、印刷して学生に配りやすいようPDFで送ったりも。選挙後は結果を集計して発表し、先生たちと意見交換や勉強会も行っています。

Q3:「模擬選挙」は学生にとって何がいいの?
A : 社会や政治について話し合い、自分で選ぶ体験を提供します。

普段だと友だちと北方領土や環境問題について話すと「変なやつ」と思われがちですが、授業のなかでだと、自分の考えを言ったり同世代の意見を聞いたりすることがしやすいです。
そして最終的に自分で選ぶという経験が重要です。消去法なのか性別なのか年齢なのか、それぞれのやり方で選んで、1票がどこかで影響するかもしれないと考えることは、普通の政治教育では得られないことだと思います。模擬選挙をきっかけに家族と話すことで、皆さんの将来を考えて親が投票に行く、という効果もあります。
自分の入れた人が当選したかどうかも、気になりますよね。実際の結果と模擬選挙の結果を見比べれば、学生と大人たちの考えのちがいを知ることもできます。模擬選挙を通して、少し政治が身近になるのではないでしょうか。


Q4:政治の授業や模擬選挙ってつまらなそう…?
A:普通の授業だと暗記科目になってしまいがちですが、模擬選挙は自分で考えます

「衆議院の任期は4年」とか「参議院の任期は6年で、3年ごとに半数改選」だとか、政治経済や公民の授業だと暗記で終わってしまいがちです。実際の各政党がどういう政策を主張しているのかを学ぶ機会も、ほとんどないですよね。実際の選挙ではその時々の課題がメディアで報じられるので、それに合わせて模擬選挙を行うことで、何が問題でそれぞれの政党がどう考えているのかを知りやすいです。実際に調べてみたり、自分だったらどう思うかを考えてみたりすると、暗記だけにならずいいと思います。



2.高校生にも身近な政治

Q5:政治や選挙は学生の生活には関係ない?
A:いえいえ! 実は普段の生活に密接につながっています。

例えば消費税が8%から10%に上がって、若者のお小遣いの使い方もだいぶ変わりました。高校の学費無償化やレジ袋の有料化も、若者の生活につながるいい事例ですね。政策による生活の変化は、大人だけでなく子どもにもあります。これらを身近に感じられるように、政治を解きほぐして理解していくことが大事です。

Q6:政治や選挙の授業で、学生はどんなことに気をつけたほうがいい?
A:先生の意見に流されず、自分の考えをしっかりと持つことです。

授業で先生が話す内容の影響力は大きいので、それによって生徒が左右されることがあります。「先生が言っているんだったら、そうに違いない」と思い込んでしまったり、「先生が思っているように(テストの回答を)書けば点数が良くなるよね」と考えたりする学生もいます。生の政治を学校の授業で扱うというのに、先生も慣れていないためか、政治に対する自分の考えばかりを言ってしまいがちな方もいます。友だちや保護者などと話し合ったりすることで、自分とは異なる意見に触れることで、自分の考えを深めてください。



3.18歳未満でも政治参加できる!

Q7:結局子どもたちで政策を変えることなんてできないのではないですか?
A:そんなことありません!学生が中心になってルールを変えた事例はあります。

2019年に、区の行政の変更によって公園でサッカーができなくなってしまったのを、東京都板橋区の小学6年生が改善を求める手紙を区長に送った結果、陳情が採択されました。自転車専用道路なのに通学の邪魔になる路上駐車を取り締まるように請願した松本市の高校生もいます。校則や制服の改善を求める取り組みをしている中高生もいます。ネットの活用によって署名活動も行いやすくなったので、声をあげていくことの大切さを若者に知ってもらいたいですね。
また、大人が後押ししてあげることも大事です。安心して意見表明できる環境を大人が用意し、どういうふうに表現したら相手に伝わるのかトレーニングを積み重ねることですよね。

Q8:何から変えたらいいのかわからないです・・・。
A:身近な小さな例から、声をあげて変えていきましょう。

例えば高校の自動販売機にどのジュースを入れるか、ということを業者の言いなりでなくて、自分たちで選んで決める。小学校の昼休みに何をして遊ぶかも、子どもたちが決めますよね。自分たちがやりたいことを話し合って決めれば、きちんと変えることができる、という経験が必要です。失敗することも当然ありますが、積み重ねていきましょう。まずは自分が疑問に思ったことを調べてみたり、そのことについて友だちや家族と話してみたりしましょう。


Q9:どうやって政治の情報収集をするのがいいですか?
A:ひとつに偏らず、様々な手段を使うのが望ましいです。
インターネットは調べやすいですが、逆に情報がありすぎて、どれが正しくてどれが違うのかが分かりにくいですよね。書籍や新聞を読んだり、親や学校の先生、塾の人、友だちと話してみたり。テレビのニュースやワイドショーも、わかりやすいかもしれません。玉石混交なので、色々なかたちで情報収集をしましょう。また、政治は使われている言葉が難しいので、表現で学ぶのもいいですね。選挙や環境問題のポスターはよく見かけますし、社会問題を扱っている演劇や映画、ドラマもあります。

Q10:勉強に遊びに部活……忙しくて選挙に行く暇がないです。
A:期日前投票は様々な場所で投票ができるので、ぜひ活用してください。

期日前の投票所は、駅前やイトーヨーカドー、イオンといった商業施設で投票できるように、各地の選挙管理委員会が工夫しています。選挙区内であればどこの投票所でも投票ができるので、通勤や通学の合間に行くことができ、投票日当日に比べて便利です。
特に総選挙の小選挙区制になると、1票の差はシビアになってきます。50歳以上は大体選挙に行くので、若い人が誰に投票するかが、票の上積みにつながるのです。若者には「どうせ変えられない」と思わずにぜひ投票してもらいたいです。そしてそのためにも、日頃から世の中の動きについてニュースを見たり、友だちや家族と話し合ったりしてください。