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ルール/システムの謎

昨日、前職の後輩と居酒屋で酒を飲んだ。
急な誘いで以前までなら高確率で断っていたと思うけど
最近は意図しない偶然を大事にしたいと思っていたので、ありがたく参加することにした。

たわいない些細な話から、なぜか広末涼子の不倫をどう思うか。
みたいな話題になった。

個人的には彼女の気持ちを理解したいという表明をしたところ、後輩は断固として賛成しなかった。
結婚しているんだからお互い別れてからそういうことをするべきだ。
とのこと。ごもっともな意見だ。

でも結婚生活は破綻しているような報道もあって、別れたくてもできなかったという話もあるみたいよ。と伝えたら
それでも結婚しているのだからダメだという。
そこまではまぁそうだよな。すまぬ。となっていた自分だが、その後の続きで後輩が言った何気ない一言にスイッチが入ってしまった。

「俺たちは資本主義の世界にいるんですよ」

最近、この手の話題に敏感なので、酔った勢いで普段しない反論をしてみた。

「でも俺たちは生まれてから自分でこの主義を選んだわけじゃないよ」

意地悪な返しだなと自負するとともに、終着点もない話題なので
それ以上議論することは避けたが、後輩は断固として資本主義が最も良い。という言説を繰り返していた。

このことを帰ってから改めて考えてみた。

結婚も資本主義も長い歴史を通して作られたルール/システムである。
ということを多くの人はもしかしたらあまり認識していないのかもしれない。
あたかも人間が最初から持っている概念として、人々に根付いているのではと思った。
同列に並べるのは気が引けるが「人権」も生まれながらに持っている。
という物語を全員が信じることが求められる。

結婚も資本主義も否定している!とかではなく、なぜルール/システムとして存在するこれらの物語には疑問を持てないのか。

結婚も主義に関しても歴史の移り変わりによって形を変えてきたものの
現在のような構成は、実はここ数百年に確立されたルールである。
というのを学校で勉強した気もするが、日常生活で思い出すことはほぼなく「人間が本来持っているものなのだ」という認識が多くの人の中にあるように感じる。

これの何が問題かというと、目的があってのルールであるべきなのに
ルールがあるからこうするんだ。という倒錯的な考えが生まれてしまうことにある。

システムを確立したら一生そのままで良いというわけがなく、それこそ歴史の移り変わりで徐々に変わってきたことがわかるように、思考停止的にシステムを受け入れ続けるのは危ういことだとも思える。

結婚と資本主義に当てはめると、例えば現代は過去の歴史と比較しても非常に個人の尊重が叫ばれている時代である。
そこに「他者」が個人の生活の内部に深く関わってくる今の「結婚や資本主義」は果たして適合するのかという疑問が出てくる。

結婚のパートナーが嫌なら話し合って離婚すれば良い。
資本主義が嫌なら社会主義の国に行けば良い。

このような意見が噴出することは悲しい。
そうできない理由についての考慮は全くなされない。
実のところ個人の尊重は社会では全然認められない・認めてないというのが自分の考えである。
なぜなら結局、このようなルールが主として存在し続けているから。
尊重する(ルールの下でなら)ということなのだ。

一夫多妻制にしろとか、資本主義を変えろとかを主張しているわけではなく、ルールそのものについて考える機会がないことを嘆いてる。

個人の自由や幸福追求と社会利益のバランスを取るためのバランスが適切であるかどうかは常に議論の余地があるし、個人や社会の変化に合わせて見直す必要があるはずだ。

哲学者の千葉雅也さんの好きな言葉に「仮固定」という概念がある。

ベストではなくベターな考えを暫定的に答えとして仮固定することが必要です。そして、また新しい情報を得て比較した時に仮固定された考えが少し変わるということが起きます。仮固定は変化するのです。ある時に考えがガラリと変わるような決断ではなく、仮固定によって思考を中断し、ずっと続いていくプロセスの中で、いろいろな考えを比較して仮固定を更新し続けていくのです。

[1] 僕とドゥルーズ|千葉雅也
[2] 芸術論の新たな転回 02 千葉雅也「洒落と仮固定の制作論
[3] 千葉雅也 Masaya Chiba on Twitter "僕にとって「仮固定」は

大事なのは現在の社会自体も歴史の一部分であり、絶対的なものではないという考え。
ルールやシステムに対して疑問を持ち、議論し、必要に応じて変えることは、社会の発展や進歩の一環であるはずだ。

そのためにも、絶対に剥がれない粘着テープでルールを世界とくっつけるのではなく、ある意味ライトにマスキングテープのように固定しておくという考えが役に立つのではと思った。







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